敷盤と敷板
足場の接地面に使用する敷盤と敷板の違いとその使用法を教えてください
(2021年2月26日 掲載)
敷板と敷盤、敷角の違い
足場の規格を定めた労働安全衛生規則の鋼管足場の章には「足場の脚部には、足場の滑動又は沈下を防止するため、ベース金具を用い、かつ、敷板、敷角等を用い、根がらみを設ける等の措置を講ずること」(570条)という記述があります。また、厚生労働省労働基準局長の通達「足場先行工法に関するガイドライン」は「敷板及び敷盤等」の項目で「足場には敷板を用いること。地盤の不等沈下のおそれがない場合には敷盤等を使用することができる。敷盤は24cm × 24cm以上の大きさとし、材料は十分な強度を有するものとすること」と定めています。
ここで言う「敷板」とは、杉や合板でできた木製の足場板のことで、2mから4mほどの長さがあり、複数の支柱を載せることができるものです。また、敷盤は24cm角以上としていることからも理解できるように、単独の支柱の接地面に用いるものです。
敷盤の中でも、木製の敷盤を敷角といいます。一般に、くさび式足場の製造メーカーは、オリジナルの敷盤を商品のラインナップに用意していることがありますが、鋼鉄でできた敷盤を鋼製敷盤といいます。また、近年は、タイルや石材のような舗装面を傷つけないようにプラスチックなどの材質でできた敷盤も多数、見かけるようになりました。
敷板・敷盤の設置目的
敷板・敷盤は、足場の沈下や滑動を防ぐために設置します。
沈下とは、足場がその自重で地面に沈み込むことを言います。とくに、軟弱な地盤では支柱が別々に変形する不等沈下が起こることで、足場の強度が著しく低下するといいます。この場合、接地面積が大きく、複数の支柱を支える長尺の敷板(一般的には4m長)を用いることで不等沈下を効果的に防ぐことができます。
一方、地盤が強固で、沈下の心配がない場合は、横ずれ(滑動)を防止する効果を得るだけで十分なので、接地面積の少ない敷盤でも、その用途を発揮します。
このため、仮設工業会の「ビル工事用くさび緊結式足場の組立て及び使用基準」(以下、「技術基準」という)では、その解説部分で「敷盤は沈下の恐れの少ない硬い地盤の場所に使用する。敷板、敷盤の選定は地盤の状態を考慮して決めることが必要」と述べています。
ところで、敷板や敷盤は、支柱の最下部に設置するベース金具(ジャッキベース)に固定します。ベース金具から外れてしまうと用をなしません。このため、鋼製敷盤などの規格品はその使用方法に従い、木製の敷板・敷盤は2本以上の釘等で確実に固定することになっています。
沈下・滑動防止の目的で足場の脚部に用いるものとして、敷板・敷盤のほかに根がらみがあります。この根がらみと長尺の敷板は補完関係にあるため、「技術基準」では「ねじ管式ジャッキ型ベース金具を2本以上の釘等により敷板に固定した場合は、桁行方向の根がらみを省略できる」としています。桁行方向とは、敷板の設置方向のことです。一方、根がらみを設置したからといって敷板・敷盤を省略することはできません。
住宅などの低層建築物用の足場と敷板・敷盤
上記の記述は、くさび式足場一般に適用されますが、軒の高さ10m未満の低層住宅の建築等に使用される足場の場合は、少し勝手が違います。
「技術基準」は、解説の中で「住宅工事用では足場の高さも低く、自重、積載荷重ともに小さいため、ビル工事用足場並みの措置は必要ないと考えられる。軟弱地盤でなく、不等沈下のおそれがなければ、沈下防止については、敷盤で十分その効果が得られると考えられる」としています。
一般に、住宅のまわりの敷地が平坦で、長尺の敷板を敷くのに十分なスペースが確保されていることはほとんど、ありません。新築工事でも、配管やマス蓋などが障害となり、敷板を敷き詰めることが困難な場合が多いでしょう。
こうした点を加味すると、敷板、敷盤の選択にあたっては、低層建築工事に用いる場合は、原則として敷盤を足場の脚部に使用することとし、地盤が軟弱で不等沈下の恐れがある場合に敷板の設置を検討することとすべきでしょう。一方、中高層の建築物の場合は、敷板の設置がより望ましいが、地盤がコンクリートであるなど沈下の恐れがない場合は敷盤の使用でもかまわないと解釈すべきではないでしょうか。
(文・松田)
【参考】
労働安全衛生規則 第570条(鋼管足場)
事業者は、鋼管足場については、次に定めるところに適合したものでなければ使用してはならない。
一 足場(脚輪を取り付けた移動式足場を除く。)の脚部には、足場の滑動又は沈下を防止するため、ベース金具を用い、かつ、敷板、敷角等を用い、根がらみを設ける等の措置を講ずること。
(二~六 略)
足場先行工法のガイドライン
(3) 敷板及び敷盤等
イ 足場には敷板を用いること。ただし、地盤の不等沈下のおそれがない場合には敷盤等を使用することができる。
敷盤は24cm×24cm以上の大きさとし、材料は十分な強度を有するものとすること。
ロ 足場の設置期間中に不等沈下がみられる場合には、ジャッキ型ベース金具等による調整を行うこと。ビル工事用くさび緊結式足場の組立て及び使用に関する技術基準(仮設工業会)
(13) 足場の脚部
足場の脚部は、沈下及び滑動防止のため次の措置を施すこと。
① 足場を組立てる地盤は、堅固な場所とする。
② ねじ管式ジャッキ型ベース金具の下には、地盤の状況に応じて敷板(しきいた)又は敷盤(しきばん)を使用する。
③ 敷板を使用する場合は、ねじ管式ジャッキ型ベース金具を2本以上の釘等により敷板に固定し、敷盤を使用する場合は、ねじ管式ジャッキ型ベース金具を敷盤の使用方法に従い固定する。
④ 桁行方向、梁間方向それぞれに根がらみを設置する。ただし、ねじ管式ジャッキ型べ干す金具を2本以上の釘等により敷板に固定した場合は、桁行方向の根がらみを省略できる。
⑤ 根がらみは、できる限り地面から近い位置に設置し、各緊結部付支柱に緊結する。住宅工事用くさび緊結式足場の組立て及び使用に関する技術基準(仮設工業会)
(ビル工事用くさび緊結式足場の組立て及び使用に関する技術基準と同じ)