根がらみ(続)

根がらみの設置方法で留意することはありますか

(2015年1月16日 掲載)

開口部の根がらみ補強
 根がらみは、足場の脚部で支柱相互を連結することにより、支柱の横滑りや不等沈下を防ぐ効果があります(前回を参照)。
 では、どのように設置すればよいのでしょうか。
 厚生労働省の「足場先行工法のガイドライン」では、「イ 根がらみは、できる限り低い位置に設置する。ロ 根がらみをはずした開口部等がある場合には、筋かい等で補強する」となっています。
 イの「できる限り低い位置」は前回、解説しました。ここでは、ロについて検討します。
 ロは、根がらみは連続して設けること、通路などを開口にするときは両側のスパンを筋交いで補強することを規定しています。
 仮設工業会の「くさび緊結式足場の組立及び使用に関する技術基準」は、その解説で、この連続の方法を次のように記しています。
 まず、住宅工事用足場は「足場の高さも低く、自重、積載荷重ともに小さいため」「支柱最下端の緊結部に設けられた緊結部付布材を根がらみとみなすこと」ができ、かつ「梁間方向に根がらみを設ければ、桁行方向の根がらみは、前踏みあるいは後踏みの一方を省略してよい。 逆に、桁行方向の根がらみが前踏み後踏みの双方に設けられている場合は、梁間方向の根がらみは省略しても」よい。 ここで、桁行方向とは建物と平行する方向をいい、梁間方向は垂直方向のことです。また、作業床の建物側を前踏み、反対側を後踏みといいます。
 これは、くさび緊結式足場を本足場(二側足場)や部分二側足場で施工した場合に適用されます。 一側足場で施工する場合は、桁行方向一方向にしか根がらみを設置できないことは言うまでもありません。
 では、くさび緊結式足場をビル工事用に用いる場合は、どうでしょうか。
 「技術基準」は、緊結部付布材のような「各スパンごとに縁の切れた構造となる部材では滑動防止及び沈下防止の効果は少ない」ため「足場用鋼管を少なくとも3本以上の複数の緊結部付支柱にまたがって、緊結金具、単管ジョイントを用いて取り付けること」と解説で述べています。 この根がらみは、前踏み、後踏みの双方に設けなければなりません。 一方、梁間方向は2本の支柱を連結するだけなので、「緊結部付布材又は緊結部付腕木を使用することで効果がある」としています。
 なお、「合板及び木製足場板のような長尺の敷板に」ジャッキベースを「釘止めした場合には滑動防止及び沈下防止として効果が得られるため、敷板方向の根がらみを省略することができる」とも述べています。
根がらみの組立て
 ところで、根がらみは足場の強度を確保するだけでなく、足場の基礎となる部分を組み上げるときに支柱をつなぐ布材(手すり)でもあります。 とくに、短尺の支柱を足場の下部に用いるくさび緊結式足場は、根がらみとしての布材がないと足場を組み始めることができません。 根がらみの組立は、後踏み側の支柱(外柱)の最下端の緊結部(コマ)に根がらみ用布材を打ち込んで相互に連結するとともに、前踏みの支柱(内柱)を順次、外柱につなぐことによって行います。(図参照)
 「技術基準」は、この方法によって住宅用足場を組み立てる場合、根がらみの強度を十分、確保できるとしています。
 一方、ビル工事用足場を組み立てる場合は、通常の方法によって組立てた根がらみは、必ずしも十分な強度を有しているとは言えず、この技術基準を参考に別途、検討する必要があります。 (文と絵・松田)