筋交い

筋かいの効果的な設置方法を教えてください

筋かい
 筋(すじ)かいは、支柱と支柱の間に斜めに入れて足場の構造を補強する部材で、筋交いまたは筋違いと表記されます。ブレース(brace)ともいいます。
 構造体の耐震性を強める効果があるため建築物に必要不可欠で、建築基準法は一定の割合で筋交いを使用することを義務づけています。
 長方形の構造体は、接合部の強度に余裕がないと、水平力を受けたときに平行四辺形にひしゃげるように変形してしまいます。 ここに対角線状に筋かいを加えて三角形の構造を作り、変形を防止する効果を持たせます。 とくに足場は、筋かいがないと横揺れが大きく、ブランコが揺れるような状態になることもあります。
 単管足場の筋かいは、けた行筋かい(大筋かい)、はり間筋かい、水平筋かいの3種類が規定されていますが(日本工業規格JISA8951)、くさび緊結式足場では、筋かいは大筋かいを指します。
 一般に、大筋かいは、足場の外面に垂直方向15m以下、水平方向16.5m以下の設置間隔ごとに交さ2方向に設けることになっています。 また、筋かいと交差しない建地がないこと、建地と布材(作業床)の交点付近で交差させることで水平力が効果的に伝達されるといいます。
 このため、仮設工業会の「くさび緊結式足場の組立ておよび使用に関する技術基準」では、ビル工事用足場の筋かいは、「足場の後踏み側の構面に」「全層全スパンにわたって設置すること」とし、足場用鋼管を用いる場合は、「8層8スパン以下毎に交さ2方向に設置する。 その傾きは水平に対し概ね45°とし、足場用鋼管は緊結金具を使用して各緊結部付支柱に取付ける」としています。
 8層8スパンとは、くさび緊結式足場が、概ね1スパンの長さ1.8m、1層の高さ1.8mまたは1.9mで構成されているためで、8スパン×1.8m=14.4mから導き出されています。 また、層数とスパン数を揃えたのは、斜材が布材と支柱の交点近くを通るようにしたためです。
 ここで「足場用鋼管及び緊結金具」とは、外径48.6㎜、厚さ2.5㎜の単管足場用鋼管と自在クランプのことをいいます。 一方、ビケ足場を含むくさび式足場の製造メーカーの多くは、その緊結部に適合した独自の斜材を開発しています。 この場合、外径が27.2㎜で足場用鋼管に比べて脆弱であるため、基準を強め、くさび式足場用斜材は「6層6スパン以下毎に交さ2方向に設ける」こととしています。
 2015年改訂の技術基準では、これに「X種のくさび緊結式足場用先行手すり」が、「くさび式足場用斜材と同等の性能を有」し、「斜材として使用できる」としました。 X種のくさび緊結式足場用先行手すりとは、筋かいの性能をあわせもつくさび緊結式足場用の先行手すりのことで、ビケ足場の先行手すり(BX手すり)も含まれます。 なお、くさび緊結式足場用先行手すりは最下層には設置しにくいので、「3スパン以下ごとにくさび式足場用斜材、緊結部付布材又は筋かいとして足場用鋼管を設ける」補完の措置が必要です。
 上記は、ビル工事用足場の筋かいの設置基準を解説したものです。
 軒の高さ10m未満の住宅工事用としてくさび式足場を使用する場合はどうでしょうか。 技術基準は「住宅工事用足場は高さが低く積載荷重も小さい」ためビル工事用ほどの「足場の補強は必要がない」として、次のように規定しています。
 「足場の後踏み側の構面には筋かい等として、次に示す設備のうちいずれかを全層全スパンにわたって設置すること。 ①大筋かいを足場用鋼管により設置し、その傾きは水平に対し概ね45°とし、足場用鋼管は緊結金具を使用して各緊結部支柱に取付ける。 ②くさび式足場用斜材を原則として連続して設置する。③一側足場を除き、X種のくさび緊結式足場用先行手すりを設置する。」
 なお、ビル工事用足場と同様、くさび緊結式足場用先行手すりを用いる場合は、最下層に「斜材を少なくとも1スパン」設置することとしています。
 全層全スパンとは、1構面を正面から眺めて、全ての層、全てのスパンに1本以上の筋かいが設置された状態をいいます。
 ところで、くさび式足場用斜材を「全層全スパンにわたって」「原則として連続して設ける」とは、どういうことをいうのでしょうか。 技術基準は、これを「最下部から最上部に、かつ右端の緊結部付支柱から左端の緊結部付支柱まで、切れ目無く筋かいを」設けることと説明しています。
 ここで問題になるのは次のことです。
(1) くさび式足場用斜材は1.8mのスパンに設置する斜材は1層の高さがありますが、1.5m以下のスパンに設置する場合は1層の高さがありません(斜材はできる限り45°の傾きになるように設計されている)。 そうすると、斜材を連続して設ける場合、1.5m以下のスパンがあると、層とスパンが揃わず、支柱と布材の交点で筋かいが交差しないケースが生じます。
(2) 2階建て住宅は、一般的に、1構面の高さは3層だが、幅はそれ以上のスパンで構成されることが多い。 この場合、3スパンで筋かいの連続が途切れることになるが、残されたスパンには筋かいをどのように設置したらよいか。
 (1) には特段の答えはありません。斜材の連続と斜材・支柱・布材の交差のどちらを優先するかは臨機応変に判断するしかありません。 技術基準も、くさび足場式斜材の連続は「原則」とし、その端部を緊結部に取り付けるため「緊結部が塞がってしまって必要な位置に設けられない場合は、斜材が連続しない状態もやむを得ない」と述べています。筋かいの連続は絶対ではなく、この場合は、1つ上または下にある緊結部から連続して設けることになります。
 (2) には、ビケ足場の施工標準があります。 くさび足場式斜材を取り付けるときは両端の最下部にある緊結部を起点に全層全スパンになるように連続して取付け、1構面を横から眺めて「ハの字」になるように設置します。(写真参照)
 筋かいは、単管足場用鋼管とくさび式足場の専用部材のどちらを用いてもかまいません。 しかし、くさび式足場の専用部材は、布板芯掛けの一側足場のような単管足場用鋼管では対応できなかった現場にも設置可能です。 また、1スパンごとに取付けできる、ハンマーひとつで脱着できるなどの利点のため、作業の進捗に合わせて簡単に盛替えできます。 フレキシビリティ(自由度)を兼ね備えた専用部材ですが、その効果が最大に発揮されるように、一定の基準に基づいた設置が必要です。(文・松田)

【参考】
労働安全衛生規則 第570条
 事業者は、鋼管足場については、次に定めるところに適合したものでなければ使用してはならない。
(一~三 略)
四  筋かいで補強すること。(以下略)

足場先行工法のガイドライン
(8) 筋かい
足場には、各面におおむね45度の傾きの筋かいを全層及び全スパンにわたって設けること。

住宅工事用くさび緊結式足場の組立て及び使用に関する技術基準(仮設工業会)
(14) 筋かい
 足場の後踏み側の構面には筋かい等として、次に示す設備のうちいずれかを全層全スパンにわたって設置すること。
① 大筋かいを足場用鋼管により設置し、その傾きは水平に対し概ね45°とし、足場用鋼管は緊結金具を使用して各緊結部支柱に取付ける。
② くさび式足場用斜材を原則として連続して設置する。
③ 一側足場を除き、X種のくさび緊結式足場用先行手すりを設置する。

ビル工事用くさび緊結式足場の組立て及び使用に関する技術基準(仮設工業会)
(12) 筋かい
 足場の後踏み側の構面には筋かい等として、次に示す設備のうちいずれかを全層全スパンにわたって設置すること。
① 大筋かいを足場用鋼管に使用して8層8スパン以下毎に交差2方向に設置する。その傾きは水平に対し概ね45°とし、足場用鋼管は緊結金具を使用して各緊結部支柱に取付ける。
② くさび式足場用斜材を6層6スパン以下毎に交差2方向に設置する。
③ X種のくさび緊結式足場用先行手すりを設置する。

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