昇降設備

階段の標準的な設置方法を教えてください

(2015年2月13日掲載 / 2015年9月18日加筆訂正)

階段の立面図
● ビケ足場の階段
階段のカタログ
 労働安全衛生規則では、高さ(または深さ)が1.5mをこえるところで作業を行うときは、安全に昇降する設備を設けなければなりません(526条)。
 とはいえ、ビケ足場の黎明期には、専用の階段が標準的に付帯されておらず、昇降設備といえば垂直のハシゴしかありませんでした(おそらく、くさび式足場全般に共通)。 ハシゴでは物を持ったままのぼることができません。このため、「安全な」昇降設備とはいいがたく、専用の階段が待ち望まれていました。
 そこで、1987年に組立式の階段「ダンダン」がビケ足場のラインナップに加わります。 また、1990年に一体式の鋼製階段が商品化され、次第に普及していきました。一体式の鋼製階段は、数年前にアルミ製階段としても発売されています(カタログ参照)。 ちなみに、「ダンダン」は、当時の東日本総販売元の会社が開発した商品という経緯もあり、西日本の地域ではほとんど普及していません。
 階段は、踏み外しや転倒を防止するために、勾配、踏面、けあげ高さなどに一定の制約があり、また踏面には滑り止めの効果をもたせることが必要です。
 厚生労働省の「足場先行工法のガイドライン」では、階段の踏面は等間隔で、その幅が20㎝以上、けあげ高さ30㎝以下と規定しています。
 階段は、踊場と一体となって仮設通路を構成しています。 労働安全衛生規則では、建設工事に用いる登り桟橋に関する規定で、高さ8m以上の場合に7m以内ごとに踊場を設けることとなっています(552条)。 また、建築基準法施行令は一般の建物で、高さが4mを超えるものは4m以内ごとに踊場を設けることにしています(24条)。
 踊場は、万一、階段を踏み外したときに転落の距離を短くする役割があると同時に、仮設足場のように作業床の幅に限りがある場合に、建築材料を仮置きするスペースとしても期待されています。 このため、ビケ足場は、標準的な施工方法として、2層ごとに踊り場を設け、軒の高さにも踊り場を設けることにしています。 低層の住宅工事用足場では階段を直線的に設けることが困難なため、図のように、通常3スパン以下のスペースに階段を設けます。 2階建ての住宅工事用足場を3スパンで設置した場合は、3か所の踊り場が必要になります。
 なお、仮設工業会の「くさび緊結式足場の組立て及び使用に関する技術基準」は、2層以下毎に踊り場を設けることとしています。
 階段部分と踊場に、墜転落防止のために高さ85㎝以上の手すりと中さん (高さ35㎝以上50㎝以下) 等を設ける必要があるのは、通常の作業床の場合と同じです(労働安全衛生規則552条)。
 ところで、住宅の建築現場では、敷地や取引条件などにより、階段を設置していない現場が数多く、見られます。この場合は、垂直のハシゴを足場に取り付けることになります。 ハシゴは、その上端を屋根面から60㎝以上、突き出すことが必要です(労働安全衛生規則556条) (文と絵・松田)

【参考】
労働安全衛生規則
第526条(昇降するための設備の設置等)
 事業者は、高さ又は深さが一・五メートルをこえる箇所で作業を行なうときは当該作業に従事する労働者が安全に昇降するための設備等を設けなければならない。 ただし、安全に昇降するための設備等を設けることが作業の性質上著しく困難なときは、この限りでない。
2 前項の作業に従事する労働者は、同項本文の規定により安全に昇降するための設備等が設けられたときは、当該設備等を使用しなければならない。
第552条(架設通路)
 事業者は、架設通路については、次に定めるところに適合したものでなければ使用してはならない。
一  丈夫な構造とすること。
二  こう配は、三十度以下とすること。ただし、階段を設けたもの又は高さが二メートル未満で丈夫な手掛を設けたものはこの限りでない。
三  こう配が十五度をこえるものには、踏さんその他の滑止めを設けること。
四  墜落の危険のある箇所には、次に掲げる設備(丈夫な構造の設備であつて、たわみが生ずるおそれがなく、かつ、著しい損傷、変形又は腐食がないものに限る。)を設けること。 ただし、作業上やむを得ない場合は、必要な部分を限つて臨時にこれを取りはずすことができる。
イ 高さ八十五センチメートル以上の手すり
ロ 高さ三十五センチメートル以上五十センチメートル以下のさん又はこれと同等以上の機能を有する設備(以下「中さん等」という。)
五  たて坑内の架設通路でその長さが十五メートル以上であるものは、十メートル以内ごとに踊場を設けること。
六  建設工事に使用する高さ八メートル以上の登りさん橋には、七メートル以内ごとに踊場を設けること。
第556条(はしご道)
 事業者は、はしご道については、次に定めるところに適合したものでなければ使用してはならない。
一  丈夫な構造とすること。
二  踏さんを等間隔に設けること。
三  踏さんと壁との間に適当な間隔を保たせること。
四  はしごの転位防止のための措置を講ずること。
五  はしごの上端を床から六十センチメートル以上突出させること。
(六以下 略)
足場先行工法のガイドライン
(11)昇降設備
 足場には階段を設けること。
 階段の踏面は等間隔で設け、その幅は20センチメートル以上、けあげの高さは30センチメートル以下とすること。