足場作業の年齢制限

足場の組立て等の作業に年齢による制限はありますか

(2018年3月20日 掲載)

(図1) 全産業の雇用者と労働災害被災者の年齢構成比較
労働災害の年齢別構成をみると、死傷災害の48%、死亡災害の56%を
50歳以上の高齢者が占めている
就業者数と労働災害の年齢構成比較
(2016年)
(図2) 労働災害(休業4日以上)の年齢別年千人率
年千人率とは労働者1000人当たりの1年間の死傷者数をいい、次の計算式で表す。
年千人率=(1年間の死傷者÷1年間の平均労働者数)×1000
下表の労働者数は、総務省の労働人口統計の雇用者数で、役員を含む。
労働災害年千人率
(2016年)
● 足場作業と年少者保護
 労働基準法は、労働者の最低年齢を定め、一部の例外(映画製作等)を除いて、児童が満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまで、つまり中学校を卒業するまでは使用してはならないと定めています(56条1項)。
 中学校卒業以降も、満18歳未満の年少者には、労働時間の制限、深夜業の禁止など様々な制限があり、さらに危険有害業務の就業制限など特別の保護が加えられています。危険有害業務とは、運転中の機械の掃除などの危険業務や有毒ガスを飛散する有害な場所での業務などをいうほか、年少者労働基準規則(年少則)に業務範囲の例示があります。
 年少則で、足場作業に直接、関係しそうなものは次の通りです。
◇ 重量物を取り扱う業務で、以下の区分によるもの(7条)
年齢及び性 重量(単位キログラム)
断続作業
の場合
継続作業
の場合
満16歳未満 12 8
15 10
満16歳以上
満18歳未満
25 15
30 20
◇ 高さ5m以上の場所で、墜落により労働者が危害を受けるおそれのあるところにおける業務(8条24号)
◇ 足場の組立、解体又は変更の業務(地上又は床上における補助作業の業務を除く)(8条25号)
 このように18歳未満の年少の労働者を使用して足場の作業に従事させることは禁止されており、これに違反すると6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。
 なお、「地上又は床上における補助作業の業務を除く」という除外規定はありますが、実際の現場管理では困難であると考えておくべきでしょう。
 18歳以上では、年齢を理由とする就業制限はありません。ただし、未成年者は、その労働契約の締結は法定代理人の同意が必要とされ(民法5条)、親権者または後見人の法定代理権が制限される(労基法58条)などの規定があります。
 このように、労働基準法は18歳未満の者を「年少者」として、その生理的機能的な特性に基づく特別の保護の対象としています。

● 高年齢労働者の保護 
 日本は、労働者の高齢化が急速に進んでいるといわれています。2017年の国の労働力調査では労働人口(全就業者)に占める55歳以上の人の割合は29.7%、65歳以上では約12.4%に達しています。なかでも、建設業に従事する高齢者の割合は高く、55歳以上で34.1%、65歳以上で14.5%となっています。
 労働人口の高齢化に伴い、高齢労働者の労働災害がにわかに耳目を集めるようになりました。
 高年齢労働者の災害発生比率は若年層に比べると顕著に高く、国の統計では50歳代は30歳代の約1.5倍、60歳代で約2倍になっています。また、高齢者の労働災害は重篤化する傾向があり、死亡災害の割合が高くなっています。
 2016年の労働死亡災害統計では1年間の全死亡者928人のなかで、50歳以上の死亡者は517人で全体の55.7%を占め、60歳以上の割合は31.6%、293人となっています(図1)。
 労働災害の発生度合いを表す指標である年千人率では、建設業や製造業などの現業部門で、未熟練労働者である若年層の発生比率が高くなっているのと同様、高齢者の災害が多発する傾向にあります(図2)。
 少子高齢化の中で、中高年齢労働者の役割は増大する一方です。労働安全衛生法では、中高年齢者を「労働災害の防止上その就業に当たつて特に配慮を必要とする者」として「心身の条件に応じて適正な配置を行なう」(62条)ことを求めています。
(図3) 建設業と製造業の就業者の雇用形態別比較
総務省の労働人口統計から
建設業と製造業の雇用形態別比較
(2016年)
● 労働者保護の対象
 ところで、労働基準法を基本とする労働法制は、労働契約の関係にある「労働者」と「使用者」に適用されます(労基法2条)。経営者や個人事業主は保護の対象外とされます。また、同居の親族のみを使用する事業や家事使用人には適用されません(労基法116条)。
 建設業に特徴的なのは、一人親方や中小事業主などの「使用従属」の関係にない、つまり「労働者」とみなされない就業人口の比率が高いことです(図3)。
 厳密にいえば、年少労働者であっても「労働者」でなければ労基法の保護規定は適用されません。しかし、労働者とみなされるか否かは、契約の名目に関わらず、労務の提供の実態で判断されます。年少者を請負契約などの名目で雇入れたからといって労働基準法の適用を免れるのは困難であることが多いでしょう。(文・松田)

【参考】
労働基準法 第56条(最低年齢)
 使用者は、児童が満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまで、これを使用してはならない。
2 前項の規定にかかわらず、別表第1第1号から第5号までに掲げる事業以外の事業に係る職業で、児童の健康及び福祉に有害でなく、かつ、その労働が軽易なものについては、行政官庁の許可を受けて、満13歳以上の児童をその者の修学時間外に使用することができる。映画の製作又は演劇の事業については、満13歳に満たない児童についても、同様とする。 
労働基準法 第62条(危険有害業務の就業制限)
 使用者は、満18才に満たない者に、運転中の機械若しくは動力伝導装置の危険な部分の掃除、注油、検査若しくは修繕をさせ、運転中の機械若しくは動力伝導装置にベルト若しくはロープの取付け若しくは取りはずしをさせ、動力によるクレーンの運転をさせ、その他厚生労働省令で定める危険な業務に就かせ、又は厚生労働省令で定める重量物を取り扱う業務に就かせてはならない。
2 使用者は、満18才に満たない者を、毒劇薬、毒劇物その他有害な原料若しくは材料又は爆発性、発火性若しくは引火性の原料若しくは材料を取り扱う業務、著しくじんあい若しくは粉末を発散し、若しくは有害ガス若しくは有害放射線を発散する場所又は高温若しくは高圧の場所における業務その他安全、衛生又は福祉に有害な場所における業務に就かせてはならない。
3 前項に規定する業務の範囲は、厚生労働省令で定める。