労働安全衛生規則の改正(2015.7.1) 第3回

注文者の点検義務の強化などの改正について教えてください

 労働安全衛生規則改正の最終回として、作業床からの墜落防止設備を取り外すときの措置、単管足場の高さに関する規制緩和、注文者の点検義務の強化について解説していきます。
作業床からの墜落防止設備の取り外しなどが許される場合
 足場の作業床からの墜落防止措置の充実として、床材と建地のすき間を12㎝未満とする要件の追加については、このシリーズの第1回で解説しました。
 足場の作業床からの墜落防止措置については、もう一つの改正があります。
 2009年の足場関係の改正で、くさび緊結式足場や単管足場は従来の手すりに加えて「中さん等」の設置が義務付けられ、わく組足場は交差筋かいに加えて「下さん」「幅木」または「手すりわく」の設置が盛り込まれましたが、そのときに但し書きとして設けられた例外の規定がより制限されます。
 現行の労働安全衛生規則(以下、安衛則という)は、「作業の性質上これらの設備を設けることが著しく困難な場合又は作業の必要上臨時にこれらの設備を取りはずす場合」は、「防網を張り、労働者に安全帯を使用させる等墜落による労働者の危険を防止するための措置」を代替の措置として要求しています。
 改正安衛則では、この後段の措置部分について「安全帯を安全に取り付けるための設備等を設け、かつ、労働者に安全帯を使用させる措置又はこれと同等以上の効果を有する措置」に変更し、かつ「関係労働者以外の労働者を立ち入らせないこと」にしました(安衛則563条1項6号3)。また、一時的に「墜落防止措置を取り外したときは、その必要がなくなった後、直ちに」「現状に復さなければな」りません(安衛則563条1項6号5)
 これは、作業床の墜落防止措置を取り外す場合に、安全帯取付け設備の義務化等により安全帯使用の実効性を高め、関係労働者の立ち入りを禁止することで、管理の面や設備の面で事業者の責務を明確にした規定です。
 なお、仮設通路、作業構台についても同様の改正が行われます。
単管足場の高さに関する規制の緩和
 現行の安衛則は、鋼管足場のうちの単管足場の組立て高さについて「建地の最高部から測って31mを超える部分の建地は、鋼管を二本組とすること」という規定を設けていますが、改正安衛則は、これに但し書きを加え、「建地の下端に作用する設計荷重(足場の重量に相当する荷重に、作業床の最大積載荷重を加えた荷重をいう)が当該建地の最大使用荷重(当該建地の破壊に至る荷重の2分の1以下の荷重をいう)を超えないときは、この限りでない」とし、強度が十分なものを除外しました(安衛則571条)。
 単管足場には、くさび緊結式足場も含まれます(パブリックコメントへの回答)。
 なお、仮設工業会の「くさび緊結式足場の組立て及び使用に関する技術基準」は、ビル工事用足場として組立てたくさび式足場の高さの上限を31mにしていましたが、昨年12月に最高高さを45m以下まで拡充しています。
注文者の点検義務

注文者と事業者
 今回の改正で、注文者による足場の点検義務が強化されます。
 2009年の改正でも足場の点検義務の一部が強化されています。
 2009年改正では、事業者が行う足場の点検の強化として、①「その日の作業を開始する前」に足場の墜落防止設備を点検し、異常を認めたときは直ちに補修すること、②従来からあった、悪天候や足場の組立て・一部解体・変更の後の点検義務(この点検義務は足場全般の網羅的な点検義務)に加えて、点検の結果と補修措置等の内容を記録し、保存することが盛り込まれました。 また、注文者が行う措置の強化として、従来からあった悪天候後の点検・補修義務に、それを記録し、保存することが盛り込まれました。
 今回の改正では、2009年改正時の②の義務が事業者と同様、注文者にも課せられることになります。つまり、「足場の組立て、一部解体若しくは変更の後」、「足場における作業を開始する前」に足場の状況を点検し、危険か所があれば速やかに補修する義務が課せられます。また、点検の結果と補修の内容は足場の設置期間中は保存しなければなりません。
 これを事業者の点検義務と比較すると、注文者にないのは、その日の作業開始前の「足場用墜落防止設備」(手すり・中さん等)の点検義務だけで、それ以外では注文者も事業者と同等の義務が課せられることになります。(下表を参照)
 ところで、注文者や事業者とは、何を意味するのでしょうか。
 一般に、注文者は、仕事を他人に請け負わせる者をいい、事業者は労働者を使用して事業を行う主体(法人または個人経営者)のことをいいます。 たとえば、住宅の建築が数次の請負工事で行われる場合は、注文者とは、最末端の下請負人 (自らの下に請負業者を持たない施工業者) を除く施工業者の全部と施主のような発注者が注文者です。 また、事業者とは、発注者(施主)以外の施工業者で、当該現場で労働者を使用している法人または個人経営者をいいます。(右図を参照)
 こうした言葉遣いは、責任の主体についての理解を難解にさせる一因になっていますが、ここでは注文者と事業者との対比で、厚生労働省の見解が示されています。
 点検義務の注文者は、「建設業」「の仕事を自ら行い、かつ、先次の請負契約の当事者である注文者」です。 「一般的には、元方事業者が足場の組立てを請負人に発注し、他の請負人の労働者に使用させることが多く、この場合、当該特定元方事業者は点検義務が課せられる注文者」となります(パブリックコメントへの回答)。 また、事業者とは、足場を使用する施工業者で労働者を使用する主体のことです。
 平たく言うと、足場の業者に足場の組立てを発注するのが注文者で、その足場を使用する施工業者の法人または個人経営者が事業者です。注文者は、通常、特定元方事業者です。
 商取引では、売買契約で物の引き渡しを受けたとき、買主はただちに物の瑕疵や数量不足を検査する必要があります。また、組立工事付の足場のレンタルは対価が伴う有償契約です。 足場の組み方は、一義的には、足場の注文者が決定します。
 こうした点を考慮すると、注文者の点検義務の引き上げは、点検と管理に実効性を持たせるためには当然の結論のように思えます。(文と絵・松田)

注文者と事業者の足場の点検義務 「○」は義務あり、「×」は義務なし、「○ 記録と保存」は記録し保存する義務もあり
点検内容 点検時期 2009年以前の安衛則 2009年改正安衛則 2015年改正安衛則
事業者の点検と補修義務 作業開始前
(ただし墜落防止設備のみ)
×
悪天候後
記録と保存

記録と保存
足場の組立・一部解体・変更後
記録と保存

記録と保存
注文者の点検と補修義務 悪天候後
記録と保存

記録と保存
足場の組立・一部解体・変更後 × ×
記録と保存

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