足場の歴史2 (ビケ足場の出現)
ビケ足場が建築現場で普及したいきさつを教えてください
(2014年7月4日 掲載)
1972年、労働安全衛生法が施行されます。
その関係省令である労働安全衛生規則では、作業床の幅は40㎝以上、床材間のすき間は3㎝以下、転落のおそれのある開口部等への手すりの設置など、足場の新しい基準が設けられます。
ところが、丸太足場でこうした基準を満足させることは簡単ではありません。
しかも、丸太足場は使っている間にひび割れが生じ、次第に大きくなること、最悪な場合は、ひび割れや腐食が外見から分からず、丸太が折れて足場から転落するという事故が後を絶ちませんでした。
そこで、丸太足場に代わる安全で、使い勝手のある鋼製足場が強く希求されるようになります。
こうしたニーズに応えようと、あるいは事業の成功を願って、さまざまなタイプの足場が試作されます。
1980年ごろ、くさび緊結式足場の基本スペックが、堺市の大三機構商会(現㈱ダイサン)の工場で完成します。世にいうビケ足場です。
ビケ足場は、シンプルな構成でありながらフレキシビリティ(柔軟性)が豊かで、当時の足場では類を見ないものでした。
しかも、ハンマーひとつで組立解体できるという手軽さに優れていました。
ビケ足場の開発以降、くさび緊結式足場がいくつかのメーカーから発売されるようになります。
ビケ足場は登録商標です。くさび緊結式足場ことを一般に「ビケ」ということがあります。これは、ビケ足場の斬新さと先発性の証です。
ところで、ビケ足場のビケは、現場を美しく形作るの「美形」に由来しています。
ビケ足場には、安全性や機能性の面で、現場の革新に寄与したいという願いが込められています。
また、ビケ足場は、設計施工(技術サービス)付でレンタルするという、これまでの足場になかったビジネススタイルを構築しました。
部材の管理とレンタル、運搬、設計と施工を一体的に事業展開するこのスタイルは、小規模な建築業者が多い住宅産業で普及するのに不可欠のシステムでした。
しかも、ビケ事業を担う事業者が、完成品である足場の仕様にまで責任を持つことで、ビケ足場の安全性や機能性が確保されました。
労働安全衛生法は、丸太足場、わく組足場、単管足場など既存の足場を想定して施行された法律です。
42条は「危険または有害な一定の機械等について」規格を定め、それに合致しないと譲渡、貸与または設置することを禁止しています。
危険・有害な機械等には「鋼管足場用の部材及び付属金具」を含みますが、新たに開発されたビケ足場その他のくさび緊結式足場をその範囲に含んでいません。
このため、くさび緊結式足場は当初、認定外品という扱いでした。
そこで、1984年、仮設工業会は、市場のニーズの高まりを受け、独自の基準を設け、ビケ足場を含むくさび緊結式足場を認定します。
こうして、くさび緊結式足場が、低層工事用足場の標準になっていきます。 (文・松田)