壁つなぎの間隔

壁つなぎ等の補強材をビケ足場に取り付けるときの間隔について教えてください

(2018年2月21日 掲載)

● 側端が解放されているビル工事用足場の壁つなぎ設置例
壁つなぎの間隔
【壁つなぎの間隔】
 壁つなぎの間隔を含む鋼管足場の構造については、労働安全衛生規則570条に規定があります。そこでは、「一側足場、本足場又は張出し足場であるものにあっては、次に定めるところにより、壁つなぎ又は控えを設けること」とし、「壁つなぎ又は控え」の間隔は、単管足場は垂直方向5m以下、水平方向5.5m以下としています。くさび緊結式足場は、単管足場と座屈強度が同等とされ、壁つなぎの設置間隔も単管足場と同様の扱いになります。
 壁つなぎは、建地(支柱)と布(作業床)の交点つまり1層1スパンの四角形の四隅にあたる位置に設置することが最も効果的とされます。また、ビケ足場の層の高さが1.9m、スパンの最大長さが1.8mであることから、いわゆる2層3スパン以内ごとの腕木材の位置に設けることで、労働安全衛生規則の規定を充足させることになります。
 壁つなぎは、躯体側の設置可能か所にも制約があります。躯体と足場の位置関係によっては、腕木材の位置に壁つなぎを設けることができない場合があります。その場合は、取付位置をずらして設置し、所定の間隔以内になるようにします。
 ところで、一般社団法人仮設工業会は、くさび緊結式足場の構造を定めた「くさび緊結式足場の組立て及び使用に関する技術基準」のなかで、「壁つなぎの取付間隔は」「風荷重」の影響を検討する必要があり、その結果、基準間隔以下の壁つなぎが必要とされるときは、それに従うこととしています。そして、メッシュシートを張ったビル工事用のくさび緊結式足場で「一般的な条件で風荷重の計算を行うと、壁つなぎを2層2スパン以下ごとに設けなければならないことが多い」と述べています。
 垂直方向5m、水平方向5.5mの例外は、風荷重の影響を考慮するだけではありません。住宅工事用足場をブラケット一側で施工する場合は、足場の構造が脆弱であるため、垂直方向を3.6m以下とするという仮設工業会の基準もあります。
【壁つなぎを設置する起点】
 2層3スパンまたは2層2スパンと言っても、構面端部のどの部分から必要本数を計算すればよいのでしょうか。
 これは、1面組足場のように側端が解放されている場合と、4周を組上げ、端部が直交する面と緊結されている足場とで結論が違います。端部が開口になっている場合は、端部にある建地(支柱)に壁つなぎを設置し、そこから構面内側に向かって5.5m以下ごとに壁つなぎを設置することが基本です(上図)。一方、側端が直交する構面の足場と連続している場合は、その端部に控えが設置されているのと同様の効果があることから、その端部から5.5m以下の建地に起点の壁つなぎを設置し、そこから5.5m以下ごとに壁つなぎを設置することになります。
 上記は、水平方向の起点ですが、垂直方向の起点はどうでしょうか。足場の最上層は側端が解放されている場合がほとんどなので、最上層の布(作業床)の位置に壁つなぎを設置し、それを基点に5m以下ごとに下方向に壁つなぎを設置していくことになります。
● 先行足場での控え設置例
 奥に仮設トイレがあるので水平材を高く取り付け、通行しやすくしているている
控え設置例
【住宅工事用足場の壁つなぎ等】
 軒の高さ10m未満の低層住宅にくさび緊結式足場を用いる住宅工事用足場の場合は、ビル工事用足場と比較するとかなり勝手が違います。
 住宅工事用足場は、ビル工事用足場ほどの強度の確保を要しない半面、新築工事は建方作業前の足場先行工法として組み上げられることがほとんどで、足場自体の自立安定性が求められます。また、建物の構造から壁つなぎの設置が敬遠されることが多く、かつ敷地が狭あいで足場の外側に控えを設けることが困難な場合も見受けられます。
 こうしたことから、厚生労働省は、1996(平成8)年に「足場先行工法に関するガイドライン」を公表し(2006(平成18)年改訂)、壁つなぎ等による足場の補強の基準を定めています。
 ガイドラインでは、建方作業前の足場については、足場の自立安定性を確保する観点から、「各面に控えを設けること」とし、「控えを設けることが困難な場合」は「全周を緊結した構造とする」としています。
 一方、建方作業が終了した後は、本則に従い、「全周を完全に組み上げ」て「各面に壁つなぎを設ける」必要があります。壁つなぎの設置は、労働安全衛生規則が「壁つなぎまたは控え」としていることから、建方作業前に各面に控えを設置している場合は要求されず、また、壁つなぎ、控えのいずれも設置が困難な場合は、「火打ち及び圧縮材等」での代用が可能です。これは、住宅工事用足場が比較的に低いことから、控えや火打ち・圧縮材が壁つなぎを2層ごとに設置した場合と比べて類似の効果を有するという判断によるものだと思われます。それに対して、足場の構面が長い場合は、火打ちと圧縮材の効果が構面中央に及ばないため、壁つなぎを3スパンごとに設置する場合と同様の補強効果を生じさせるため、中央部に控えを設置するか、控えが困難な場合は「頭つなぎ」で補強することになります。
● 敷地が狭いため、圧縮材でバルコニーの壁を挟み込んで
圧縮と引張の効果を持たせた補強例
圧縮材による補強例
 なお、建方作業前の足場の自立安定性を確保するため、建方作業後に補強が完了するまで「原則としてシート等を設置しては」いけません。
 住宅工事用足場の壁つなぎ等の間隔は、労働安全衛生規則の規定に準じて適用されます。仮設工業会の「くさび緊結式足場の組立て及び使用基準」では、住宅用足場の壁つなぎ等の設置基準を次のように定めています。
 「建築物の構造等により壁つなぎを設置することが困難な場合には、火打ち及び壁当て(圧縮材)を設け、かつ、足場の一構面の長さが14m以上の場合には頭つなぎ等を設けて足場を補強する。」
 「壁つなぎ又は壁当て(圧縮材)は、垂直方向5.0m(ブラケット一側足場にあっては3.6m)以下、水平方向5.5m以下の間隔で設置し、かつ、足場の最上層及び側端が解放されている足場の場合は、当該側端にも設ける。」
【壁つなぎの強度】
 壁つなぎの設置で重要なのは、壁つなぎの強度が十分に確保されていることです。規定通りの壁つなぎの設置密度であっても肝心の壁つなぎに不安があるようでは元も子もありません。
 ALCなどの強度が不足しているコンクリートに後付アンカーを打ち込む場合やクランプなどの緊結金具を用いて摩擦抵抗力だけで壁つなぎを保持する場合は、その有効性の検証が必要です。
 補強材として圧縮材を用いる場合、圧縮材は文字通り、圧縮効果しかないため、火打ちや控えを用いて引張効果と併用させることが必要です。また、圧縮材は、足場にかかる水平荷重の負荷を一点で支えることになるので、壁つなぎと同様、その設置位置にも注意を要します。(文・松田)

【参考】
労働安全衛生規則 第570条(鋼管足場)
 事業者は、鋼管足場については、次に定めるところに適合したものでなければ使用してはならない。
(一~四 略)
五 一側足場、本足場又は張出し足場であるものにあつては、次に定めるところにより、壁つなぎ又は控えを設けること。
 イ 間隔は、次の表の上欄に掲げる鋼管足場の種類に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる値以下とすること。
鋼管足場の種類 間隔(単位メートル)
垂直方向 水平方向
単管足場 5 5.5
わく組足場(高さが五メートル未満のものを除く。) 9 8
 ロ 鋼管、丸太等の材料を用いて、堅固なものとすること。
 ハ 引張材と圧縮材とで構成されているものであるときは、引張材と圧縮材との間隔は、一メートル以内とすること。
(六 略)

足場先行工法のガイドライン
(7) 壁つなぎ又は控え
イ 建方作業前の足場には各面に控えを設けること。
 敷地が狭あいで控えを設けることが困難な場合には全周を緊結した構造とすること。
ロ 建方作業後は、各面に控えを設けた足場以外の足場にあっては、足場の全周を完全に組み上げ、各面を相互に緊結するとともに、速やかに各面に壁つなぎを設けること。
 建築物の構造等により壁つなぎを設けることが困難な場合には、火打ち及び圧縮材を設け、かつ、足場の一面が長さが長い場合には頭つなぎを設けて足場を補強すること。

住宅工事用くさび緊結式足場の組立て及び使用に関する技術基準(仮設工業会)
(15) 壁つなぎ等
 壁つなぎ又は控え等の設置は次によること。
① 建方前の足場
a. 原則として足場全周を緊結した構造とする。
b. 全周を緊結できない場合は、控え・斜材等で補強することにより足場の倒れ防止を施す。
② 建方後の足場
a. 速やかに各構面に壁つなぎを設置する。
b. 建築物の構造等により壁つなぎを設置することが困難な場合は、火打ち及び壁当て(圧縮材)を設け、かつ、足場の一構面の長さが14m以上の場合には頭つなぎ等を設けて足場を補強する。
c. 壁つなぎ又は壁当て(圧縮材)は、垂直方向5.0m(ブラケット一側足場にあっては3.6m)以下、水平方向5.5m以下の間隔で設置し、かつ、足場の最上層及び側端が解放されている足場の場合は、当該側端にも設ける。