筋交い(ビケ足場よもやま話)
くさび式足場用筋かいの特徴を教えてください
(2015年2月4日 掲載)
ビケ足場に用いられる筋かいは、1990年ごろまで外径48.6㎜、厚み2.5㎜の単管足場用の鋼管を使用していました。
しかし、ハンマーひとつで組み立てカンタン、というビケ足場のコンセプトを満足させるために、クランプで締め付ける筋かいに代わって、ハンマーでたたき込むくさび式足場用筋かいが開発され、市場に投入されます。
この筋かいは使い勝手は良かったものの、抜け止め機能を有しないため、仮設工業会の認定品にはなっていません。
一説では、1995年の阪神大震災のとき、足場の倒壊は免れたものの、くさび式足場用筋かいのくさび部分の大部分が外れかけていたということです。
2002年、現在のくさび式足場用の斜材が開発されます。
この斜材は、筋かいと吊り材(トラス)を兼用した構造で、トラス構造にした場合、先端で一定の荷重を支えることができます。
このため、900スパン以上の長さに足場を持ち出す場合の補強材としても使われます。
この斜材は、仮設工業会にくさび式足場用筋かいとして認定されています。
くさび式足場用筋かいは、ハンマーだけで組立てカンタンという利便性の良さだけが特徴ではありません。
足場用鋼管は、概ね4.5mの長尺物を使用しますが、くさび式足場用筋かいは、全長2.7m~1.3mの筋交いを1スパンごとに取り付けるため、層高やスパン長が限られたスペースにも設置することができます。
盛替えも簡単で、荷物搬入の障害になったときはその部分だけ臨時的に外すことができます(図参照)。
また、特定の足場部材と兼用することで、足場用鋼管では設置できない布板芯掛けの一側足場にも筋かいを取り付けることができます(写真)。
ビケ足場には固有の記号番号があります。1800のスパンに用いるくさび式足場用筋かいはTST18Cです。TSTは「吊り」(T)「筋かい」(S)「手すり」(T)のローマ字表記の頭文字に由来します。
18はスパンの長さ(1800㎜)を、Cは層の高さに対応した支柱(C支柱)を示しています。
筋かいは、水平に対し概ね45°の角度で設けることになっています。
スパン長と層高の対応関係は、筋かいがもっとも45°に近くなるように設計されています。
ただし、1200スパンの筋交いはTST12Dですが、これをTST12DEの場合と比較すると、前者は38.4°、後者は49.9°になり、TST12DEが筋かいとして相応しいように思われます。
これは、実際の筋かいの角度がくさびの緊結部を結んだ角度よりやや急峻になるように設計されていることや、45°との差が顕著な値でないため経済性を優先して筋かいの全長が短いTST12D を商品化したものと想像しています。
(文と絵・松田)
筋かい | スパン長(m) | 層高(m) ( ) 内は対応支柱 |
水平との角度(°) | 筋かいの長さ(m) |
---|---|---|---|---|
TST18C | 1.8 | 1.9 (C) | 46.5 | 2.617 |
TST15DE | 1.5 | 1.425 (DE) | 43.5 | 2.069 |
TST12D* | 1.2 | 0.95 (D) | 38.4 | 1.531 |
TST09D | 0.9 | 0.95 (D) | 46.5 | 1.309 |