火打ち

火打ちを効果的に設置する方法を教えてください

火打ち
 木造住宅などで水平に直交する部材の交差点に斜材を入れてその直角が変わらないようにする補強材を火打ちといいます。 梁や桁の交点に入れるものを「火打ち梁」、土台に対して入れるものを「火打ち土台」などと呼びます。
 同じように、足場の最上端にある水平材(手すりなど)の4隅に架け渡す補強材を火打ちといいます。
 足場から垂直に壁に当てて、突っ張り効果を生じさせる部材を圧縮材(ジャッキ)といいますが、火打ちはこの圧縮材と相反する引張力を生み出すことで足場が前後に揺れることを防ぐ効果もあります。
 火打ちといえば、時代劇の一幕で旦那の出立に女房が火打石を打って、厄除けの切り火を起こす場面を思い起こしますが、この火打石が鋭角をしていたので三角形を火打ちということになったそうです(飯塚五郎蔵著『建築語源考(技術はコトバなり)』鹿島出版会刊)。
 長方形の構造体は、4隅の交点に強度がないと、水平力を受けたときに平行四辺形にひしゃげてしまいます。とくに足場は、接合部の強度が不足していることが多く、水平的なねじれを防ぐための火打ちや垂直方向の対角線に入れる筋かいのような、有効な補強材がないと揺れや倒壊の原因になります。
 ところで、労働安全衛生規則の鋼管足場に関する条項(570~573条)は、鋼管足場が具有すべき規格や構造を定めたものですが、補強材として、筋かい、壁つなぎ、控えに関する記述はあっても、火打ちに関する規定はありません。
 一方、厚生労働省の『足場先行工法のガイドライン』(平成8年策定、平成18年改正)には次の記述があります。
 「建方作業後は、各面に控えを設けた足場以外の足場にあっては、足場の全周を完全に組み上げ、各面を相互に緊結するとともに、速やかに各面に壁つなぎを設けること。 建築物の構造等により壁つなぎを設けることが困難な場合には、火打ち及び圧縮材等を設け、かつ、足場の一面の長さが長い場合には頭つなぎを設けて足場を補強すること」
 つまり、一義的には、壁つなぎを設けることが必要で、それが「困難な場合」に代替措置として火打ちと圧縮材等を設けることを求める内容になっています。
 これは、労働安全衛生規則が、大規模な構造の鋼管足場を想定していることに由来していると思われます。 住宅建築現場では、壁つなぎ材を補強材として使用することは、建物の構造や補修の問題から敬遠されることが多く、火打ちと圧縮材で代用させることが一般的になっています。
 では、火打ちを最も効果的に施工する方法を考えてみます。
 火打ちの効果が最も高まるのは、直交する水平材に対して火打ちが2等辺三角形になった場合です。 火打ち材には一般に4.5m単管を使用するため、コーナー部から概ね3m(3.182×2≒4.52)のところに火打ち材を緊結するクランプを設けます。
 ところで、切妻屋根のような場合は、火打ちを水平に設置することができません。この場合、傾斜角度が大きすぎると火打ちの効果が減殺されてしまいます。 このため、ビケ足場の設置基準では、垂直方向95㎝までを上下段差の許容範囲としています。
 火打ちは、水平的なひずみを防ぐ効果がありますが、長方形の1面が長すぎると火打ちの効果が中心部に及びません。強風にあおられた場合、構面の中央部から足場が倒壊することも考えられます。
 この場合、補強方法としては、壁つなぎや控えも考えられますが、これらが困難な場合には「頭つなぎ」で対処します。頭つなぎは、一面とその対辺を単管その他の部材(例えばロープなど)で確実につなぐことを意味します。
 では、「1面の長さが長い」とは、どういうことを意味するのでしょうか。ビケ足場の設置基準では、1面が14m以上の場合に頭つなぎを設けるとしています。 なお、仮設工業会の「くさび緊結式足場の組立て及び使用に関する技術基準」でも2014年12月の改定版で「14m」を長さの転換点としています。
 火打ちは、自在型クランプを用いて単管足場用鋼管と手すりを確実に緊結する方法が一般的です。この場合、単管(φ48.6)と手すり(φ42.7)の外径が違うため、兼用クランプを使用します。
 クランプは一定の耐荷重を有するものしか流通させてはならないことになっています(労働安全衛生法42条、労働安全衛生法施行令13条)。 また、クランプは、十分な力で締め付ける必要があります。 建築業者によっては、クランプの取付場所を単管の端部から何センチ以上とか、単管足場のジョイントピンの内側にクランプを取付ける、など独自の基準を設定しているケースも散見されますが、むしろ、機能が十分に保たれているクランプを正しく使用することが大切です。
 なお、ビケ足場の設置基準では、クランプは単管の端部から5㎝~10㎝の範囲に緊結することになっています。(文と絵・松田)

【参考】
足場先行工法のガイドライン
(7) 壁つなぎ又は控え
イ 建方作業前の足場には各面に控えを設けること。
 敷地が狭あいで控えを設けることが困難な場合には全周を緊結した構造とすること。
ロ 建方作業後は、各面に控えを設けた足場以外の足場にあっては、足場の全周を完全に組み上げ、各面を相互に緊結するとともに、速やかに各面に壁つなぎを設けること。
 建築物の構造等により壁つなぎを設けることが困難な場合には、火打ち及び圧縮材を設け、かつ、足場の一面が長さが長い場合には頭つなぎを設けて足場を補強すること。

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