足場の層とスパン

足場の層とスパンに関する法令上の規制はありますか

(2018年7月27日 掲載)

● 1構面はスパンと層で構成される
層とスパン
● 1層目とは、1番目に設けた作業床の上の空間をいう
層
 建物は、床や屋根などの水平構面と壁の鉛直構面からなっていますが、足場で構面といえば東西南北の鉛直の構面のことをいいます。各構面は、建地(支柱)と布(基本的に作業床、手すりが布の役割を担う場合もある)の構造部材で形作られ、筋かいや火打ち材、壁つなぎ材がそれを補強しています。
 スパンは建地と建地の距離や間そのものをいい、層は作業床と作業床の間の空間を意味しています。  
 スパンについては、労働安全衛生規則で丸太足場、鋼管足場のそれぞれで最大長が定められています。鋼管足場は「建地の間隔は、けた行方向を1.85m以下、はり間方向は1.5m以下とすること」(571条1項1号)という規定があります。ここで「けた行方向」とは、作業床を取付ける作業面に平行の方向をいい、「はり間方向」は腕木を取付けける作業面に垂直な方向をいいます。このようにスパンの全長は1.85mを上限としています。このため、市販の作業床は、1.8m(インチサイズで1.829m)を最大長としています。
 一方、層の高さについては、厚生労働省労働基準局長の通達である「足場先行工法に関するガイドライン」に「布の間隔は2m以下とすること」とあります。また、労働安全衛生規則の鋼管足場にかかる規定として「地上第一の布は、2m以下の位置に設けること」としています。
 ここで「布」とは作業床の設置位置と考え、手すりが布材としての機能を有する場合であっても作業床を補完している関係と理解すべきであることは別稿「地上第一の布」で説明しています。
 なお、労働安全衛生規則では、建地の間隔、地上第一の布の高さのそれぞれについて、「作業の必要上」「より難い場合」で、一定の措置を講じたときは適用しない、という但し書きがあります。これは、建地の間隔や地上第一の布の高さは、部材の強度(応力)や積載荷重と相関関係にあることから、それらについて一定の措置があるものは適用しないという趣旨と理解できます。たとえば、梁枠材を用いて2スパン以上の間隔に建地を設置した場合や、人や物の積載を伴わない場合には1.85mを超えて建地を設置することができます。地上第一の布が2mを超えることができる場合については、別稿「地上第一の布」を参照してください。
 ところで、本題と関係しませんが、層には、業界の慣例的な数え方があります。英国英語では the first floor は2階部分を意味し、1階を the ground floor と表記します。同様に、足場の層の数え方も地上層(GL=グランドライン)からはじまり、1層目は地上から一番目に設けた作業床の上の空間を意味します。足場は、作業者を高所に接近させて作業させるための仮設物で、作業床とその支持物をいうことから、地上層だけの足場というものは存在しません。それが、こうした表現になった理由でしょう。現場サイドでは、足場の高さについて誤解の原因になることがあるので注意が必要です。(文・松田)

【参考】
労働安全衛生規則 第571条(令別表第八第一号に掲げる部材等を用いる鋼管足場)
事業者は、(略) 単管足場にあつては第一号から第四号まで、わく組足場にあつては第五号から第七号までに定めるところに適合したものでなければ使用してはならない。
一 建地の間隔は、けた行方向を1.85m以下、はり間方向は1.5m以下とすること。
二 地上第一の布は、2m以下の位置に設けること。
三~六 (略)
七 高さ20mを超えるとき及び重量物の積載を伴う作業を行うときは、使用する主わくは、高さ2m以下のものとし、かつ、主わく間の間隔は1.85m以下とすること。
2 前項第1号又は第4号の規定は、作業の必要上これらの規定により難い場合において、各支点間を単純ばりとして計算した最大曲げモーメントの値に関し、事業者が次条に定める措置を講じたときは、適用しない。
3 第1項第2号の規定は、作業の必要上同号の規定により難い部分がある場合において、二本組等により当該部分を補強したときは、適用しない。
足場先行工法に関するガイドライン
(5) 地上第一の布
 地上第一の布は、2m以下の位置に設けること。ただし、建地を二本組にした足場及び隣接する面が緊結されている構造の足場については、2.3m以下の位置に設けることができる。
(6) 布の間隔
 布の間隔は、2m以下とすること。