作業床と外壁の間隔

作業床と外壁の間隔は30㎝以内といわれますが、30㎝以上は遠すぎるのでしょうか

● 壁との間隔を30㎝以内に設定した足場
壁の間隔を300以内に設定した足場

● 建物側に内手すりを設置した作業床
内手すりを設置した足場

(図) 作業床と建地の位置関係
   (外壁と作業床の間隔を30㎝に設定した場合)
作業床と外壁の位置関係
 足場を組立てる目的は、簡単に言うと、高所で作業するための作業床を設けることです。
 労働安全衛生規則(以下、安衛則という)は、「事業者は、高さが2メートル以上の箇所(…)で作業を行う場合において墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、足場を組み立てる等の方法により作業床を設けなければならない」(518条)としています。
 作業床は、作業に容易で、安全なものでなければなりません。安衛則には、作業床の幅、床材間の隙間などの規定があります。 また、「墜落により労働者に危険を及ぼすおそれがある箇所」には手すり、中さんなどの「足場用墜落防止設備」を設けることになっています。
 ここで「墜落により労働者に危険を及ぼすおそれがある箇所」とは、どのような状態をいうのでしょうか。
 一般に、作業床の外側(建物の反対側)や、作業床が途切れた開口部には手すり等を設けます。 問題になるのは、作業床と建物が遠い場合に「墜落により労働者に危険を及ぼす箇所」に該当するかどうかです。
 従来、作業床と外壁との間隔が30㎝以内の場合は建物側に手すりなどの墜落防止設備を要しないとされてきました。また、平成8年に「足場先行工法のガイドライン」が厚生労働省労働基準局長の通達として公表され、「建築物と足場の作業床との間隔は30㎝以下とする」という指標が公表されました。
 30㎝という数値には異論がないわけではありません。たとえば、仮設工業会の『くさび緊結式足場の組立て及び使用に関する技術基準』には「墜落防止の観点からいえば、その隙間はできるだけ狭くなるようにすべきであり、30㎝以下であっても隙間から墜落した場合は墜落防止措置を怠ったと判断される可能性もある。海外では20㎝以下を指標とするデータもある」と記載しています。
 一方、標準的な体型の人が壁を触るのに50㎝以内であれば身体の重心が足の裏を離れない、つまり前屈姿勢にならないことから、50㎝を建物との距離の上限とすべきだという見解もあります。
 ところで、足場と建物は近ければ近いほど良いのでしょうか。
 一般に、くさび緊結式足場を一側(ひとかわ)ブラケット足場ということがあります。 しかし、一側ブラケット足場とは、一側(片側)にしかない建地(支柱)からブラケットで張出し、そのブラケットで作業床を支持する足場のことで、足場の組み方のひとつにほかなりません。 くさび緊結式足場を一側ブラケット足場で組み上げた場合は、足場が自立せず不安定になるため、ビケ足場は建地が両側にある二側(ふたかわ)足場または部分二側足場を原則としています。
 この場合、建物側に建地(内柱)を設けます。ビケ足場は60㎝長のブラケットに40㎝の作業床を設置したとき、作業床が建物側に近くなるように設計されています。このとき、建地の先端は、図のように、作業床から約10㎝のところに位置します。
 建築の現場では、足場が建物に近すぎると作業に支障が生じることがあります。たとえば、くぎ打ち機やインパクトドライバーのような電動工具は、足場と外壁の間に一定の間隔がないと使いにくい状態になります。 一方、刷毛塗りの塗装作業や、工場で完成したパネルを現場で組み立てる軽量鉄骨造のような工法の場合は、足場が近すぎてもほとんど影響がないかもしれません。
 建物の外壁にはひさしや窓などの様々なアクセントが設けられます。足場計画図は、こうした出物をかわしながら設計しますが、あまりに足場が近すぎると、足場と接触したり、取付け困難になることもあります。
 足場の組立てでは、足場を使ってする作業の内容を考慮して、理想的とする間隔に近くなるように設計します。この場合、ビケ足場の規格寸法上の制約(注)もあります。
 一般に、作業床と外壁が約20㎝(内柱と外壁が10㎝)の場合が最も狭い値の限界です。作業の内容によっては、作業床と外壁の間隔を25㎝または30㎝以上、確保する必要がある場合もあります。いずれにしろ、間隔が近ければ近いほど良いという結論は短絡的です。
 足場の設計では、外壁が遠い場合に内側に手すりを設けることができます。また、安衛則563条3の規定により、内側に手すりを設けることが「作業の性質上」「著しく困難」なときは、外側の手すりを「安全帯取付け設備」とみなすことができます。
 このほかにも、足場の組み方として、内柱の建物側に作業床を設ける対応も考えられます。足場を使ってする作業の内容、足場の組み方などの総合的な観点から、建物との間隔を設定することが大切です。 (文と図・松田)

【参考】
労働安全衛生規則 第563条(作業床)
 事業者は、足場(一側足場を除く。第三号において同じ。)における高さ2メートル以上の作業場所には、次に定めるところにより、作業床を設けなければならない。
(一、二、四~六 略)
三  墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのある箇所には、次に掲げる足場の種類に応じて、それぞれ次に掲げる設備(‥‥一部略。以下「足場用墜落防止設備」という。)を設けること。
イ わく組足場(妻面に係る部分を除く。ロにおいて同じ。) 次のいずれかの設備
 (1) 交さ筋かい及び高さ15センチメートル以上40センチメートル以下の桟若しくは高さ15センチメートル以上の幅木又はこれらと同等以上の機能を有する設備
 (2) 手すりわく
ロ わく組足場以外の足場 手すり等及び中桟等
3 第一項第三号の規定は、作業の性質上足場用墜落防止設備を設けることが著しく困難な場合又は作業の必要上臨時に足場用墜落防止設備を取り外す場合において、次の措置を講じたときは、適用しない。
一  安全帯を安全に取り付けるための設備等を設け、かつ、労働者に安全帯を使用させる措置又はこれと同等以上の効果を有する措置を講ずること。
二  前号の措置を講ずる箇所には、関係労働者以外の労働者を立ち入らせないこと。
5 事業者は、第三項の規定により作業の必要上臨時に足場用墜落防止設備を取り外したときは、その必要がなくなつた後、直ちに当該設備を原状に復さなければならない。
6 労働者は、第三項の場合において、安全帯の使用を命じられたときは、これを使用しなければならない。

足場先行工法のガイドライン
(2) 外壁と作業床の間隔及び墜落防止措置
イ 建方作業及び外壁施工前
 足場からの墜落を防止するため、足場は建築物の外壁位置と足場の作業床の端とができるだけ接近した位置となるように設け、足場には手すりを設けること。前手すりを設けることが困難な場合には労働者に安全帯を使用させること。
ロ 外壁施工後
 建築物と足場の作業床との間隔は、30センチメートル以下とすること。30センチメートル以下とすることが困難な場合には、足場に手すりを設けること。手すりを設けることが困難な場合には、ネットを設け又は労働者に安全帯を使用させる等墜落防止のための措置を講ずること

住宅工事用くさび緊結式足場の組立て及び使用に関する技術基準(仮設工業会)
(4) 建築物との間隔
 住宅工事用くさび緊結式足場の作業床と外壁との間隔は、墜落のおそれがないように、できるだけ小さくすること。

  (注) ビケ足場の布材(手すりと作業床)は長さ600~1800㎜の部材で構成されるため、水平方向の全長は原則として300の倍数。
     オプションとして150の布材もある。

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