足場と狭小地

足場を建てるのに最低限必要な敷地の寸法を教えてください

狭小地の足場
 作業性や安全の基準にこだわらなければ、基本的に人が通れるだけの余裕があれば足場を建てることができます。 ただし、足場は、そこで作業する人のためのものですから、足場上での作業や移動ができなければ元も子もありません。 作業床が単管だけの簡易な足場であったとしてもせめて40㎝くらいの敷地寸法はほしいものです。
 ところで、厚生労働省の定めるガイドライン(足場先行工法のガイドライン)には、「ブラケット一側足場であって40㎝以上の幅の作業床を設けることが困難な場合には、24㎝以上の幅の作業床とすることができる」という規定があります。 この24㎝を作業床の最低基準とすると、約50センチくらいの敷地寸法が必要です。
 以上は、いずれも隣地側に建物などの障害物がある場合です。お隣さんが空き地や道路の場合はどうでしょうか。 また、同じ敷地内であっても塀などの障害物がある場合はどうでしょうか。この場合、隣地側をどこまで使えるかによって結論が違ってきます。
 地上での越境はできないが空中は可能という場合を想定してみましょう。 この場合、約30㎝の敷地があれば、理論的に足場を設置することができます(建物の壁面と足場芯の距離が24㎝、踏板と壁の離間距離が12㎝)。
 いずれにしても、実際に現地を確認してみないと最終的な判断はできません。また、安全で作業性の良い足場を確保するためにも、一定の敷地余裕を確保することは必要です。(文と絵・松田)


足場の耐用年数

足場には耐用年数がありますか。何年で使えなくなるという目安はありますか

足場の耐用年数
 労働安全衛生規則は「事業者は、足場の材料については、著しい損傷、変形又は腐食のあるものを使用してはならない」と定めています。また、足場の組立て等作業主任者は「材料の欠点の有無を点検し、不良品を取り除くこと」が職務のひとつにあげられます。しかし、足場部材そのものの耐用年数を定めた規定は存在しません。これは、メッキ製品の使用によって長期に足場部材の使用が可能となったことや使用期間の長短にかかわらず使用状況によっては不良品となることがあることなどから、一律に使用可能年数を定めることは現実的でないという判断によるものだと思われます。
 しかし、長期間繰り返し使用する足場部材が経年劣化し、災害を誘発する懸念も払拭できないことから、厚生労働省は労働安全衛生法42条の構造規格適合の足場部材については「経年仮設機材の管理に関する技術指針」を公表するとともに、構造規格適合品以外の足場も仮設工業会が独自の仮設機材認定基準を定めて、不良品の流通を妨げるようになっています。
 そこでは、選別による整備、修理、廃棄の目視による判定基準が示されるとともに、一定の場合は性能試験を実施することが明記されています。とくに、使用された期間が長期である場合(くさび緊結式足場の部材については8年以上)は、原則としてサンプリングによる性能試験を1年ごとに実施することになっています。
 当社は、認定基準に基づく足場部材の適切な選別管理につとめるとともに、仮設工業会認定の適用機材センターで整備、修理、性能試験等を随時実施しています。適切な経年管理を実施している足場については、耐用年数を懸念する必要はありません。 (文と絵・松田)


仮設工業会の認定基準

ビケ足場には仮設工業会の認定マークが刻印されていますが、これは労働安全衛生法と関係ありますか

仮設工業会の認定証
 労働安全衛生法42条は、危険または有害な一定の機械等について厚生労働大臣が定める規格に合致し、または安全装置を備えなければ、譲渡し、貸与し、または設置してはならない、と定めています。 この一定の機械等の範囲は政令である労働安全衛生法施行令13条の中に定めがあり、「別表第8に掲げる鋼管足場用の部材及び附属金具」が含まれます(労働安全衛生法の規格に合致する機械等を構造規格適合品という)。 ところで、「別表8」に列挙されている足場部材は、わく組足場用部材、布板一側足場用の布板、移動式足場用建わくと脚輪、壁つなぎ用金具、継手金具(ジョイント金具)、クランプなどの緊結金具、ベース金具の7種類です。
 このように、労働安全衛生法42条が規制する鋼管足場は、主として高層建築物で使用される「わく組足場用の部材」などであって、低中層の現場で圧倒的なシェアをもつビケ足場などのくさび緊結式の足場を対象としていません。 今日、くさび緊結式足場として用いられる仮設材の中では「直交型」または「自在型クランプ」が構造規格品の対象となっているだけです。
 これは、労働安全衛生法が施行された1972年にはビケ足場に代表されるくさび緊結式足場が未だ開発されていなかったという事情に由来しています。 当時は、主として丸太足場が低層建築現場の主流でした。 従来品の鋼管足場は使い勝手が悪く、低層建築現場で普及することはありませんでした。 1980年ごろにビケ足場が開発されるとともに、くさび緊結式足場が市場を席巻するようになります。
 開発当初のビケ足場は、仮設工業会の認定品外ということで普及の足かせになっていました。 そこで、仮設工業会は、業界団体からの働きかけと労働省の委託という官民双方の意向を受けて、劣悪な仮設材の流通を妨げるために構造規格対象外の仮設材にも安全性の認証を与えることにしました。 1984年に「小規模建設足場の部材及び付属金具の認定基準」が示され、このとき、ビケ足場も仮設工業会の認定品となります。 また、2002年には「くさび緊結式足場の部材及び付属金具の認定基準」が制定され、高さ31m以下にくさび式足場が用いられる場合にも認定の枠を広げました。
 このように、くさび式足場に関する仮設工業会の認定基準は、いわゆる業界基準とでもいうべき自主基準であって、労働安全衛生法の構造規格とは違います。
 ところで、ここで注意すべきは、仮設工業会の認定基準は、その「組立て及び使用に関する技術基準」と一体のものであって、足場が正しく使用された場合に安全性を認証するものということです。 単品としての足場部材の強度が確保されていても、正しく使用されない場合に危険であることは言うまでもありません。(文・松田)


地上第一の布

労働安全衛生規則にある「地上第一の布」の布とは何のことですか

地上第一の布とは
 一般に、麻、木綿、絹などの織物を総称して「布」といいます。 転じて、名詞に冠して平ら、水平、横、平行などを意味することがあり、建築用語でも「布」という言葉が使われます。 たとえば、逆T字型が連続した基礎の布基礎、そのために地面を掘削する布掘りなどが代表例です。
 一方、足場の水平材も布といいます。足場の作業床のことを布板や床付布枠といい、手すりを布材ということがあります。
 足場を構成する部材を「布」で表現するのは、耳慣れません。 また、一言で足場と言っても、くさび緊結式足場、枠組み足場、単管足場の代表的な区分だけでなく、仕様や用途別にさまざまな足場の種類があります。 ブラケット一側足場、本足場、棚足場、吊り足場、張出し足場、移動式足場、手すり先行式足場などがそれです。 そのなかで、「地上第一の布」の布が何を意味しているのかについて、判断が分かれることがあります。
 「地上第一の布」に言及した労働安全衛生規則571条は、単管足場の強度を構造面で充足させるための規定です。 つまり、足場は、垂直方向の荷重を負担する建地(支柱)、建地と建地を建築物と平行に水平方向に結ぶ布(水平材)、建地と建地を建築物と直角方向につなぐ腕木(横材)で構成され、一定の強度を保つために、建地、布、腕木がそれぞれ有すべき規格を定めています。
 ここでいう「布」は構造上、重要な役割を担う水平材のことです。「地上第一の布」とは、強度面で足場を構成する水平材として、腕木と一体となって建地を緊結している足場材で、地上から1番目の水平材のことをいいます。 具体的には、腕木と布が一体化した構造の作業床やそれと同等の強度を有する水平材のことを意味しています。
 仮設工業会が制定した「くさび緊結式足場の組立及び使用に関する技術基準」は、その解説に次のように記述しています。「(地上第一の)布は、緊結部付支柱同士を連携し、緊結部付支柱の水平変位を防止することにより座屈防止の機能を有するものを示すものである。 地上第一の布は根がらみと区別する必要があり、一般的には地上部からある程度の距離をとることが求められる」とし、「くさび緊結式足場においては床付き布わく、緊結部付床付き布枠及び緊結部付布材のいずれもが布といえる」。 また、「緊結部付布材を」(作業床のレベルに設けず)「手すり兼用として設置する場合は、この手すりは構造部材であるため、墜落の危険がない場合であってもこれを取り外してはならない」。
 水平材には、その用途から、根がらみや転落防止のための手すりなどがありますが、これらは、ここでいう厳密な意味の「布」ではありません。 ただし、構造材として足場を構成している場合は「布」ということができます。具体的には、二側足場で腕木や作業床と同一の層に用いた手すりで一定の強度を有するものは、構造材兼用の「布」です。
 ちなみに、労働安全衛生規則では、単管足場の地上第一の布は2メートル以内に設けることが必要です。 また、厚生労働省の通達である「足場先行工法のガイドライン」は、建地を二本組にし、隣接する面が緊結されている構造の足場は2.3メートル以下とすることができるとしています。(文と絵・松田)

【参考】
労働安全衛生規則 第571条
 事業者は、鋼管規格に適合する鋼管を用いて構成される鋼管足場については、前条第一項に定めるところによるほか、単管足場にあつては第一号から第四号まで、わく組足場にあつては第五号から第七号までに定めるところに適合したものでなければ使用してはならない。
1 建地の間隔は、けた行方向を一・八五メートル以下、はり間方向は一・五メートル以下とすること。
2 地上第一の布は、二メートル以下の位置に設けること。
3 建地の最高部から測つて三十一メートルを超える部分の建地は、鋼管を二本組とすること。
4  建地間の積載荷重は、四百キログラムを限度とすること。(以下略)

足場先行工法のガイドライン
(5)地上第一の布 地上第一の布は、2メートル以下の位置に設けること。ただし、建地を二本組にした足場及び隣接する面が緊結されている構造の足場については、2.3メートル以下の位置に設けることができる。
(6)布の間隔 布の間隔は、2メートル以下とすること。


最大積載荷重

ビケ足場の最大積載荷重とその根拠について教えてください

最大積載荷重は?
 足場の最大積載荷重は原則として、作業床の許容積載荷重によって決まります。 ビケ足場は、400㎜幅の作業床の許容積載荷重が200㎏、240㎜幅が150㎏です。
 仮設工業会はその認定基準で、各部材に必要とされる強度を設定していますが、許容積載荷重は、その必要強度を2~2.5程度の安全率で除した数字です。 このため、実際には許容積載荷重以上の強度がありますが、材料のバラつきや使用状況により発生する軽微な欠陥を考慮して、安全面で余裕を持たせています。 ちなみに、仮設工業会が定めた240㎜幅の作業床の認定許容積載荷重は120㎏ですが、実際の強度は認定基準値よりかなり余裕があるため、製造メーカーが独自に設定しています。
 仮設工業会は、この許容積載荷重に基づいて、くさび緊結式足場の最大積載荷重を定めています。 ビケ足場を軒の高さ10m未満の低層住宅建築工事に用いる場合は、1スパンあたり200㎏以下、かつ足場一構面につき400㎏以下です。
 この最大積載荷重は、右図で説明すると、お相撲さん2人の合計体重が200㎏以下になることを要し、全員の総積載荷重が400㎏以下であることを意味します。
 ビケ足場を、高さ45m以下のビル工事用足場として用いる場合は、住宅工事用足場に比べて壁つなぎが効果的に用いられることが多いため、最大積載荷重を作業床の許容積載荷重まで拡大し、その上で、同一スパンでの同時積載を2層に限定しています。 つまり、400㎜の作業床であれば1層1スパンに200㎏まで、1スパンでは2層400㎏までの積載が可能です。
 ところで、積載荷重は、作業床から腕木材を通じて支柱に伝わっていきます。 腕木材の最長寸法は1500㎜なので、例えば240㎜幅の作業床を6枚敷き詰めた場合の許容積載荷重の合計は900㎏になります。 この場合は、腕木材の許容支持力が限度になります。つまり、腕木材を挟んで隣り合う同一層のスパンに積載した場合は250㎏、隣り合わない場合は400㎏が上限です。
 このように、足場の最大積載荷重は作業床の許容積載荷重と同一ではありません。ビル工事用足場と住宅工事用足場が違うように、足場の使用状況によって最大積載荷重が違います。 この場合、注意を要するのは、足場の最大積載荷重と作業床の許容積載荷重のいずれか低い値が上限になります。 たとえば、240㎜幅の作業床1枚を用いた層の最大積載荷重は150㎏が上限となり、240㎜幅の作業床を2枚、敷き並べても住宅工事用足場であれば1スパン200㎏が最大積載荷重です。
 なお、仮設工業会は、その認定基準で仮設機材ごとに許容積載荷重を定め、それに安全率を乗じて必要強度を設定していると書きましたが、つり足場のように厳格な安全性が求められる場合は安全率をより高くしています。  (文と絵・松田)

【参考】
労働安全衛生規則 第562条
事業者は、足場の構造及び材料に応じて、作業床の最大積載荷重を定め、かつ、これをこえて積載してはならない。
2 略
3 事業者は、第一項の最大積載荷重を労働者に周知させなければならない。

住宅工事用くさび緊結式足場の組立て及び使用に関する技術基準(仮設工業会)
(2) 積載荷重
 足場への積載は次によること。
① 作業床の最大積載荷重は、次表に示された値以下、かつ、同時積載は2層までとすること。

1スパン(全層合計) 1構面当り
200㎏ 400㎏
② 作業床には、上表の値にかかわらず、床付き布わく及び緊結部付床付き布枠の許容積載荷重を超えて積載しない。
③ 足場の一部を6mを超えて高くした一側足場の場合、6mを超える部分の全積載荷重は200㎏以下とする。
④ くさび式足場用梁枠で構成された開口部上方の足場の全積載荷重は、200kg 以下とする。
(4) 表示
 足場には、見やすいところに最大積載荷重を表示すること。

ビル工事用くさび緊結式足場の組立て及び使用に関する技術基準(仮設工業会)
(2) 積載荷重
 足場への積載は次によること。
① 足場の最大積載荷重は、次表に示された値以下、かつ、同時積載は2層までとする。

1層1スパンあたり
同一層連続スパン載荷 250㎏
同一層連続スパン以外の載荷 400㎏
② 作業床には上表の値にかかわらず、床付き布わく及び緊結部付床付き布枠の許容積載荷重を超えて積載しない。
③ くさび式足場用梁枠で構成された開口部上方の足場の全積載荷重は800㎏以下とする。
(4) 表示
 足場には、見やすいところに最大積載荷重を表示すること。


足場の最高 高さ

ビケ足場は、最高何メートルまで組み立てることができますか

足場の最高高さ
 ビケ足場は当初、住宅工事用足場として普及した経緯から、低層工事に用いる足場という認識がありました。 しかし、その安全性が広く認められるとともに、作業性や利便性の高さから中層建築工事でも広く使用されるようになりました。 そこで、仮設工業会は、「くさび緊結式足場の組立て及び使用に関する技術基準」(以下、技術基準という)を2003年に制定し、それまで、住宅のような小規模な建築物の建築工事に限定していたくさび緊結式足場の用途枠を中高層建物の建築工事にも広げ、高さ31mまでの足場を組立可能としました。 さらに2015年、技術基準を改定し、従来、わく組足場の最高高さとされた45mまでの足場にも使用範囲を広げました。 一般的には、そこに定められた数字を最高高さと考えることができます。
 技術基準は、くさび緊結式足場をその用途に従ってビル工事用足場と住宅工事用足場に分け、それぞれにについて組立基準を定めています。 ビル工事用足場は、高さ45m以下のビル工事等の建設工事に使用される足場をいい、住宅工事用足場は、軒の高さ10m未満の木造家屋等低層住宅の建築工事に使用される足場をいいます。 つまり、ビル工事用足場の組立基準に従って組立てたビケ足場については、高さ45mまでの建築物に使用することができます。
 ところで、1972年制定の労働安全衛生規則は、単管足場を31mを超えて組み立てる場合、「建地の最高部から測って31mを超える部分の建地は、鋼管を2本組とすること」としていました。 2015年の規則改正で、これに但し書きが付与され、「建地の下端に作用する設計荷重(足場の重量に相当する荷重に、作業床の最大積載荷重を加えた荷重をいう。)が当該建地の最大使用荷重(当該建地の破壊に至る荷重の2分の1以下の荷重をいう。)を超えないとき」は2本組とすることを要しないとしました。
 同様に、技術基準も31mを超えて足場を組立てる場合は、原則として建地を2本組にすることとしています。 また、その解説で、2本組を要しない場合について安全衛生規則の規定を準用しています。
 2本組にすることを要しない場合の設計荷重には幅木やメッシュシート、朝顔などの重量も含まれます。 また、建地の最大使用荷重は、「現場での使用条件と近い条件における実大実験を行い、その結果から得られた破壊荷重の1/2以下(安全率2.0以上)の荷重を用いることができる。」(同解説)としています。
 2本組は、「技術基準」に従って、建地にかかる座屈荷重(圧縮による支柱のたわみ)への抵抗力が効果的に増加するように行うことが必要ですが、この場合、支柱の支持力は約1.3倍まで増加するとしています(技術基準・解説)。
 なお、日本工業規格の旧規格では、枠組足場は原則として45mを超えてはならないという規定がありました(旧JISA8951)。 このため、一般的に、45mを足場の高さの上限とすることが多いようですが、独自に荷重計算を実施する等の方法によって足場の強度を検証した場合は、45mを超えて足場を組立てることも不可能ではありません。
 ところで、足場の高さは、ビル工事用足場と住宅工事用足場が違うように、足場の組立方法と一体のものとして考える必要があります。 ビケ足場が45mの高さの建築物まで使用可能といっても、簡易な構成の足場を組立てた場合に、その高さに耐えうる保証はありません。 (文・松田)

【参考】
くさび緊結式足場の組立て及び使用に関する技術基準(仮設工業会)
第1章 総則

1.適用
「くさび緊結式足場の組立て及び使用に関する技術基準」は、一般社団法人仮設工業会(以下、「仮設工業会」という。)が定める「くさび緊結式足場の部材及び附属金具」の認定基準に適合し、認定を受けた専用の部材等を用いて高さ45m(建地補強含む)以下の足場を組み立て、解体及び使用する場合について適用する。
2.定義
くさび緊結式足場とは、「くさび緊結式足場の部材及び付属金具」の認定基準に適合し、認定を受けた部材を使用し、組立てられる足場をいう。
(1) ビル工事用くさび緊結式足場
くさび緊結式足場のうち、ビル工事等の建築、補修及び解体工事等に使用されるもので、高さ45m以下で使用する本足場をいう。
(2) 住宅工事用くさび緊結式足場
くさび緊結式足場のうち、軒の高さ10m未満の木造家屋等低層住宅の建築、補修及び解体工事等に使用される足場をいう。

第2章 ビル工事用くさび緊結式足場の組立て及び使用基準
1.組立基準
(14) 高さ31mを超える場合
足場の高さが31mを超える場合には、次の措置を施すこと。
① 建地となる緊結部付支柱の最高部から測って、31mを超える地上までの緊結部付支柱は原則として2本組とする。
② 2本組は緊結部付支柱と足場用鋼管を緊結金具により堅固に固定する。
③ 固定する緊結金具は、足場用鋼管の上端部、下端部及び各層の腕木付近に取付ける。


足場の歴史1 (丸太足場から鋼製足場の時代へ)

丸太に代わって鋼製足場はいつごろから使われ始めたのですか

足場の歴史①
 足場の歴史は古く、エジプトのピラミッドや中国の万里の長城にも足場が使用されたといわれています。 足場の原型は、泥のレンガや砂礫を積み上げただけの簡単なものから木材や竹を加工した現代の足場につながるものまで様々でした。
 日本では、木材が身近なところで容易に入手できたことから、建築材料として重宝されただけでなく、古来、丸太足場や木製脚立として広く使用されてきました。
 江戸時代の浮世絵師、葛飾北斎の作品「富嶽百景(三編)足代の不二」には、こてを手にした左官職人が丸太足場の上で地上の作業者から漆喰を受け取る様子が躍動感あふれる構図で描かれています。 また、羽柴秀吉の姫路城築城の様子を再現した歌川貞秀の「真柴久吉公播州城郭築之図」は、城という当時の「高層」建築物にも丸太足場が不可欠だったことを物語っています。
 軽くて加工しやすく比較的丈夫で、構造材としても強靭な木材は、自然界に存在するもののなかで申し分のない建築・仮設資材でした。
 ところで、1900年代の初め、欧米では鋼製の足場が登場し、次第に木材に取って代わるようになります。 丸太は、鋼材のように材質が一定ではなく、しかも使用による強度の低下が大きいため、強度の計算に不向きで安心して使えなかったのです。
 遅れること半世紀、日本でも鋼製足場の時代が幕開けします。
 仮設工業会のホームページによると、1950年代に入ると、森林資源保護の観点から林野庁が木材資源利用合理化推進運動を唱えるようになります。 とくに木材の消耗が甚だしい仮設設備がやり玉に上がります。 そこで1953年春に大手建設会社の技術者の集まりで鋼管足場の研究会が発足し、その後、単管足場の緊結部に用いるクランプが開発されます。 そして1954年、東京大手町の東京産業会館の建築工事に日本で初めて、単管足場が用いられます。 当初の単管足場は、丸太を鋼管に、丸太を結束する番線をクランプに変えた形式のものでした。
 そのころ、アメリカでは、デイビット・イー・ビティ氏が考案した鋼製足場、いわゆるビティ足場が広く普及していました。 鳥居型の建枠を縦方向に積み重ねるとともに横方向を交差筋かい(ブレース)、鋼製布板につなぐ足場で、高い強度が評価され、アメリカ国内だけでなくヨーロッパにも技術輸出されます。
 この足場が1952年に輸入されます。 その技術を基に翌年5月、日本人の体格に合った国産の足場が開発されます(1955年にはアメリカのビティスキャホード社と技術提携した日本ビティ(株)が設立)。 それが、今日、中高層の建築工事に広く用いられているわく組足場の原型になります。 わく組足場のことをビティ足場とよぶのは、こうした経緯によるものです。
 こうして、1950年代、鋼製足場は黎明期を迎えます。 以降、わく組足場は、建設現場で標準的な足場となり、次第に丸太足場を駆逐するようになります。
 しかし、こうした足場は低層住宅建築工事の現場では、奔流なることはありませんでした。 狭あいな敷地、深い庇などに特徴づけられる日本の住宅建築現場では、こうした足場は使いづらく、丸太足場のフレキシビリティ(柔軟性)や手軽さに取って代わることができなかったのです。  (文・松田)


足場の歴史2 (ビケ足場の出現)

ビケ足場が建築現場で普及したいきさつを教えてください

足場の歴史②
 1972年、労働安全衛生法が施行されます。 その関係省令である労働安全衛生規則では、作業床の幅は40㎝以上、床材間のすき間は3㎝以下、転落のおそれのある開口部等への手すりの設置など、足場の新しい基準が設けられます。 ところが、丸太足場でこうした基準を満足させることは簡単ではありません。 しかも、丸太足場は使っている間にひび割れが生じ、次第に大きくなること、最悪な場合は、ひび割れや腐食が外見から分からず、丸太が折れて足場から転落するという事故が後を絶ちませんでした。
 そこで、丸太足場に代わる安全で、使い勝手のある鋼製足場が強く希求されるようになります。
 こうしたニーズに応えようと、あるいは事業の成功を願って、さまざまなタイプの足場が試作されます。
 1980年ごろ、くさび緊結式足場の基本スペックが、堺市の大三機構商会(現㈱ダイサン)の工場で完成します。世にいうビケ足場です。
 ビケ足場は、シンプルな構成でありながらフレキシビリティ(柔軟性)が豊かで、当時の足場では類を見ないものでした。 しかも、ハンマーひとつで組立解体できるという手軽さに優れていました。
 ビケ足場の開発以降、くさび緊結式足場がいくつかのメーカーから発売されるようになります。 ビケ足場は登録商標です。くさび緊結式足場ことを一般に「ビケ」ということがあります。これは、ビケ足場の斬新さと先発性の証です。
 ところで、ビケ足場のビケは、現場を美しく形作るの「美形」に由来しています。 ビケ足場には、安全性や機能性の面で、現場の革新に寄与したいという願いが込められています。
 また、ビケ足場は、設計施工(技術サービス)付でレンタルするという、これまでの足場になかったビジネススタイルを構築しました。 部材の管理とレンタル、運搬、設計と施工を一体的に事業展開するこのスタイルは、小規模な建築業者が多い住宅産業で普及するのに不可欠のシステムでした。 しかも、ビケ事業を担う事業者が、完成品である足場の仕様にまで責任を持つことで、ビケ足場の安全性や機能性が確保されました。
 労働安全衛生法は、丸太足場、わく組足場、単管足場など既存の足場を想定して施行された法律です。 42条は「危険または有害な一定の機械等について」規格を定め、それに合致しないと譲渡、貸与または設置することを禁止しています。 危険・有害な機械等には「鋼管足場用の部材及び付属金具」を含みますが、新たに開発されたビケ足場その他のくさび緊結式足場をその範囲に含んでいません。 このため、くさび緊結式足場は当初、認定外品という扱いでした。 そこで、1984年、仮設工業会は、市場のニーズの高まりを受け、独自の基準を設け、ビケ足場を含むくさび緊結式足場を認定します。
 こうして、くさび緊結式足場が、低層工事用足場の標準になっていきます。 (文・松田)


足場の歴史3 (番外編・丸太足場のいま)

丸太足場はもう使われなくなったのでしょうか

足場の歴史③
 戦後の復興需要によって、天然林の伐採がすすみ、造林ブームが到来、木材需要はかつてなく高まりました。 そこで、1950年代に、森林資源保護の観点から木材資源利用合理化推進運動が林野庁主導で進められるようになったことは、シリーズ1で紹介しました。 ところが、皮肉なことに、その後の木材輸入の自由化による外国産木材の利用拡大、化石燃料の広がりによる燃料としての木材需要の急減によって、国内の森林資源はその有用性を失い、林業は衰退の一途をたどっていったのです。 放置された人工林は、必要な間伐などの手入れが行われないため、森としての健全性が失われ、荒廃していきました。
 昨今、荒廃した森林を再生させるための間伐材の有効な活用推進が、官民で叫ばれるようになっています。 丸太足場は、杉、ヒノキなどの細い間伐材を番線で締め上げて固定するため、間伐材の有効な活用法としては、この上なく有効です。
 とはいえ、安全面で鋼製足場に代わることができないため、使用範囲は限られています。 たとえば、作業床を要しない低層住宅の解体用足場などでは、いまなお、多くの丸太足場を見かけます。
 ところで、丸太足場は、鋼製足場を凌駕する、余りある特性があります。 そのために今なお、丸太足場が根強く使用されている現場があります。
 その特性とは、フレキシビリティ、自由度の高さです。丸太は、建築物の形状に合わせて自由に組み合わせることが可能で、必要に応じてその場で加工することもできます。 しかも、鉄材に比べて弾力性があるので、建築物にやさしく傷をつける可能性が減少します。
 こうしたことから、京都の国宝や重要文化財の改修工事の多くの現場で丸太足場を見かけます。 こうした改修工事では、技術の伝承という歴史的使命をもって丸太足場を使い続けているといいます。 また、自然材としての丸太足場の癒し効果は、世界中から拝観に訪れる観光客に工事中の違和感を和らげる効果もあるようです。
 極めつけは、333mの東京タワーの改修工事に丸太足場が利用されていることです。 電波塔である東京タワーの塗装工事は、5年に1度の周期で行われており、電波への影響を避けるためと近隣への防音対策の必要から、1万本以上の丸太を使って足場を組んでいます。
 丸太足場に息づく技術の伝承、職人の真骨頂が発揮される世界です。 (文・松田)


足場の組立て等作業主任者

ビケ足場に吊り下げてある「足場の組立て等作業主任者」は足場の設置期間中、有効ですか

足場の組立て等作業主任者の看板
 労働安全衛生法14条は、労働現場の安全衛生管理組織のひとつとして作業主任者制度を設けています。 作業主任者は、危険または有害な設備、作業について、その危害防止のために必要な事項を担当することになっています。
 作業主任者を選任すべき作業は、労働安全衛生法施行令6条に記載がありますが、その中に「つり足場、張出し足場または高さが5メートル以上の構造の足場の組立て、解体または変更の作業」が含まれています。そして、事業者が作業主任者を選任したときは、作業主任者の名前と作業主任者に行わせる事項を作業所の見やすい場所に掲示するなどの方法で関係する労働者に周知させることになっています。(労働安全衛生規則18条)
 ところで、作業主任者の職務については、大きく2つの類型があるといわれています。ひとつは、作業の危険性や有害性防止の観点から作業の指揮を主とするもの、もうひとつは、設備の危険性や有害性防止の観点から設備管理を主とするものです。作業の指揮を主とする類型の作業主任者は、その者が立ち会わなければ作業を行うことができず、個別の作業ごとに作業主任者を選任する必要があります。一方、設備管理を主とする場合は、作業ごとに選任する必要はありません。
 足場の組立て等の作業主任者は、作業の指揮を主とする類型に分けられます。つまり、足場の組立て、解体または変更の作業では、その都度、作業主任者を選任する必要があります。また、関係労働者に周知する方法としては、現場の見やすい場所への掲出だけでなく、腕章や特別なヘルメットの着用などが想定されています。
 当社は、足場の組立解体作業に従事する者のなかで作業主任者としての役割を担う者には青色のヘルメットを着用させています。また、完成した足場の見やすい位置に、当該足場を組立てた作業主任者の顔写真入りの名前を、その職務内容と足場の最大積載荷重と一緒に掲示することにしています。
 前述の通り、この場合の作業主任者は、あくまで足場を組立てたときの作業主任者として有効であって、足場の完成引き渡し後に行われる各種の足場作業までカバーしているものではありません。完成した足場への作業主任者名の掲示は、むしろ足場施工業者としての責任の所在を明確にすることで、当該足場を使用する作業者に安心感を与えるためのものです。
 住宅の新築工事では、作業の進捗に合わせて、足場の変更等の必要が生じることがあります。その場合、その作業を管理する事業者において作業主任者を個別に選任する必要があります。
 なお、足場の作業主任者は、都道府県労働基準局の局長または指定教習機関の技能講習を修了した者のなかから選任することとなっています。 (文・松田)

【参考】
労働安全衛生法
第14条(作業主任者)
 事業者は、高圧室内作業その他の労働災害を防止するために管理を必要とする作業で、政令で定めるものについては都道府県労働局長の免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けたものが行う技能講習を修了した者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該作業の区分に応じて、作業主任者を選任し、その者に当該作業に従事する労働者の指揮その他の厚生労働省令で定める事項を行わせなければならない。

労働安全衛生法施行令
第6条(作業主任者を選任すべき作業)
 法第14条の政令で定める作業は、次のとおりとする。
 一五 高さ5メートル以上の構造の足場の組立て、解体又は変更の作業

労働安全衛生規則
第17条(作業主任者の職務の分担)
 事業者は、別表第一の上欄に掲げる一の作業を同一の場所で行なう場合において、当該作業に係る作業主任者を二人以上選任したときは、それぞれの作業主任者の職務の分担を定めなければならない。
第18条(作業主任者の氏名等の周知)
 事業者は、作業主任者を選任したときは、当該作業主任者の氏名及びその者に行なわせる事項を作業場の見やすい箇所に掲示する等により関係労働者に周知させなければならない。
第565条(足場の組立て等作業主任者の選任)
 事業者は、令第六条第十五号 の作業については、足場の組立て等作業主任者技能講習を修了した者のうちから、足場の組立て等作業主任者を選任しなければならない。
第566条(足場の組立て等作業主任者の職務)
 事業者は、足場の組立て等作業主任者に、次の事項を行なわせなければならない。ただし、解体の作業のときは、第一号の規定は、適用しない。
一  材料の欠点の有無を点検し、不良品を取り除くこと。
二  器具、工具、安全帯及び保護帽の機能を点検し、不良品を取り除くこと。
三  作業の方法及び労働者の配置を決定し、作業の進行状況を監視すること。
四  安全帯及び保護帽の使用状況を監視すること。


根がらみ

住宅工事用足場の根がらみには高さの制限がありますか

根がらみの高さ
 現代の住宅建築は、逆T字型のコンクリートが連続した布基礎や建築物の直下全面を鉄筋コンクリートで覆ったベタ基礎が主流になっていますが、かつての和風建築は玉石に柱をのせただけの独立基礎が主流でした。 この場合、床下が高いこともあり、脚部を木製の板で連結させることで強度を維持していました。これを根がらみまたは根がらみ貫といいます。
 仮設の足場も同様で、脚部に支柱を相互に連結する根がらみを設けることで、設置中に何らかの力が足元に作用しても、支柱が横ずれすることを防いでくれます。 とくに、斜材(筋かい)から伝達される風荷重等の水平力は1本の支柱の基部に集中することから、根がらみはそれを分散する効果があるとされています。 また、根がらみは、支柱の不等沈下を防止する役割も果たしています。
 ところで、労働安全衛生規則570条は、「足場の脚部には、足場の滑動または沈下を防止するため、ベース金具を用い、かつ、敷板、敷角等を用い、根がらみを設ける等の措置を講ずること」としていますが、高さへの言及はありません。 一方、厚生労働省が平成8年に策定した「足場先行工法のガイドライン」は、「イ 根がらみは、できる限り低い位置に設置すること。ロ 根がらみをはずした開口部等がある場合には、筋かい等で補強すること」としています。
 ここで、「できる限り低い位置」とは、どのくらいの高さをいうのでしょうか。
 仮設工業会は「くさび緊結式足場の組立ておよび使用に関する技術基準」を2003年に制定しています(2015年に改訂)。 この技術基準は、ビケ足場を含むくさび緊結式足場を45m以下の高さに組立、使用する場合について規定しています。 ここでは、その中の「軒の高さ10m未満の木造家屋等低層住宅の建築工事に使用される」住宅工事用足場について検討してみます。
 技術基準は、その解説で、住宅工事用足場は「ビル工事用足場と比較して自重が小さいため、支柱最下端の緊結部に設けられた緊結部付布材を根がらみとみなす」としています。 では、緊結部付布材をできる限り低い位置に設置したときの高さはどうなるのでしょうか。
 右の図を見てください。
 くさび緊結式足場は、システム足場といわれ、規格寸法が決まっています。 ビケ足場の場合、くさびを叩き込むコマの垂直方向の間隔は475㎜の倍数になっています。 作業空間である1層の高さは475㎜の4倍である1900㎜です。2階建て住宅の工事用足場の場合、軒天がフラットだとすると、2層目の踏板を軒天から1800㎜下がりで設定するのが標準です。 さらに、層高1900㎜下がりのところに1層目の踏板がきます(新築工事は工事の進捗により軒の形状が変化するので、一概に1800㎜とはいえない)。
 軒天から地盤(GL=グランドレベル)まで5900㎜という建物を想定してみます(図1)。 この場合、1層目とGLの距離は2200㎜です。そうすると475㎜×4倍の1900㎜の支柱が1層目とGLの間にちょうど、はいることになります。 支柱の下端とGLの間隔は300㎜です。コマは支柱の下端から約420㎜の位置に溶接されているので、根がらみは300+420=720㎜くらいの高さになります。
 ビケ足場の開発当初は、このように根がらみ高さは420㎜から900㎜の範囲で設定することが一般的でした。 しかし、根がらみが高すぎると地上の通行の支障になるため外されたり(とくに建物と垂直方向の根がらみが外されることが多い)、強度面でも減殺された効果しか期待できません。 そこで、1990年ころ、根がらみ専用の支柱が開発されます。この支柱は、通常の支柱の下端にコマ部分を溶接したものです。コマ部分だけ単独の支柱になったものもあります。
 この支柱を用いると、図1の例では、高さ250㎜前後の位置に根がらみを設けることができます。 このコマ部分の長さは130㎜~145㎜です。
 では、高さが5700㎜の建物の場合はどうでしょうか。この場合は、根がらみ専用の支柱を用いない支柱の下端がGLレベルから100㎜の高さのとき、2層目~軒天が標準的な高さの1800㎜になります。 この場合は根がらみ用支柱を、最下端に用いることができません(挿入できません)。そうすると、根がらみの高さは100㎜+420㎜で520㎜になります(図2)。
 このように、根がらみの高さは、建物の高さによって150㎜~600㎜の範囲で上下します。 とくに日本の建物は、軒のある家がほとんどなので、足場の高さを設定するときに軒天の作業性を優先的に考え、1層目の高さで調整する(つまり、根がらみの高さを変える)ことが必要です。 枠組足場のような鋼管足場は、下から層ごとに積み上げるため、こうした調整機能がありません。枠組足場が住宅現場で支持されなかった一因です。
 「ガイドライン」で「できるだけ低く」と規定しているのは、こうした設定範囲の幅を考慮したものと考えることができます。
 ところで、根がらみの高さを一定に設定した場合を考えてみます。 一般に、手が届かない高さの設定は考えられないので、軒天から2層目の最高間隔は2000㎜が限度です。 2000㎜を超える場合、たとえば2050㎜になるときは、踏板を1段、高く設定することになり、2050㎜-475㎜で1575㎜の空間で作業することになります。 これでは、中腰の作業を強いられ、また通行も困難です。作業性の劣る現場は、安全面でも支障があります。
 実際の現場は、不陸や勾配があります。根がらみの高さを硬直的に考えると、本末転倒の結果になります。 また、根がらみがやや高くなった場合に、足場の強度が著しく低下するという証明はありません。 技術基準が、住宅工事用足場は「自重が小さい」ため、緊結部付布材を根がらみとしてみなすことができるとしているのも、そのためです。(文と絵・松田)
※ 根がらみの設置方法やビル工事用足場の根がらみの設置基準は、次のシリーズで解説します。

【参考】
労働安全衛生規則 第570条
 事業者は、鋼管足場については、次に定めるところに適合したものでなければ使用してはならない。
一 足場(脚輪を取り付けた移動式足場を除く。)の脚部には、足場の滑動又は沈下を防止するため、ベース金具を用い、かつ、敷板、敷角等を用い、根がらみを設ける等の措置を講ずること。(以下略)

足場先行工法のガイドライン
(5)根がらみ
イ 根がらみは、できる限り低い位置に設置すること。 ロ 根がらみをはずした開口部等がある場合には、筋かい等で補強すること。

くさび緊結式足場の組立て及び使用に関する技術基準(仮設工業会)
(3) 足場の脚部

 足場の脚部は、沈下及び滑動防止のため次の措置を施すこと。 ① 足場を組立てる地盤は、堅固な場所とする。
② ねじ管式ジャッキ型ベース金具の下には、地盤の状況に応じて敷板(しきいた)又は敷盤(しきばん)を使用する
③ 敷板を使用する場合は、ねじ管式ジャッキ型ベース金具を2本以上の釘等により敷板に固定し、敷盤を使用する場合は、ねじ管式ジャッキ型ベース金具を敷盤の使用方法に従い固定する。
④ 桁行方向、梁間方向それぞれに根がらみを設置する。ただし、ねじ管式ジャッキベース型金具を2本以上の釘等により敷板に固定した場合は、桁行方向の根がらみを省略できる。
⑤ 根がらみは、できる限り地面から近い位置に設置し、各緊結部付支柱に緊結する。
(足場の脚部に関する記述は、ビル工事用足場と住宅工事用足場で同じ)


根がらみ(続)

根がらみの設置方法で留意することはありますか

開口部の根がらみ補強
 根がらみは、足場の脚部で支柱相互を連結することにより、支柱の横滑りや不等沈下を防ぐ効果があります(前回を参照)。
 では、どのように設置すればよいのでしょうか。
 厚生労働省の「足場先行工法のガイドライン」では、「イ 根がらみは、できる限り低い位置に設置する。ロ 根がらみをはずした開口部等がある場合には、筋かい等で補強する」となっています。
 イの「できる限り低い位置」は前回、解説しました。ここでは、ロについて検討します。
 ロは、根がらみは連続して設けること、通路などを開口にするときは両側のスパンを筋交いで補強することを規定しています。
 仮設工業会の「くさび緊結式足場の組立及び使用に関する技術基準」は、その解説で、この連続の方法を次のように記しています。
 まず、住宅工事用足場は「足場の高さも低く、自重、積載荷重ともに小さいため」「支柱最下端の緊結部に設けられた緊結部付布材を根がらみとみなすこと」ができ、かつ「梁間方向に根がらみを設ければ、桁行方向の根がらみは、前踏みあるいは後踏みの一方を省略してよい。 逆に、桁行方向の根がらみが前踏み後踏みの双方に設けられている場合は、梁間方向の根がらみは省略しても」よい。 ここで、桁行方向とは建物と平行する方向をいい、梁間方向は垂直方向のことです。また、作業床の建物側を前踏み、反対側を後踏みといいます。
 これは、くさび緊結式足場を本足場(二側足場)や部分二側足場で施工した場合に適用されます。 一側足場で施工する場合は、桁行方向一方向にしか根がらみを設置できないことは言うまでもありません。
 では、くさび緊結式足場をビル工事用に用いる場合は、どうでしょうか。
 「技術基準」は、緊結部付布材のような「各スパンごとに縁の切れた構造となる部材では滑動防止及び沈下防止の効果は少ない」ため「足場用鋼管を少なくとも3本以上の複数の緊結部付支柱にまたがって、緊結金具、単管ジョイントを用いて取り付けること」と解説で述べています。 この根がらみは、前踏み、後踏みの双方に設けなければなりません。 一方、梁間方向は2本の支柱を連結するだけなので、「緊結部付布材又は緊結部付腕木を使用することで効果がある」としています。
 なお、「合板及び木製足場板のような長尺の敷板に」ジャッキベースを「釘止めした場合には滑動防止及び沈下防止として効果が得られるため、敷板方向の根がらみを省略することができる」とも述べています。
根がらみの組立て
 ところで、根がらみは足場の強度を確保するだけでなく、足場の基礎となる部分を組み上げるときに支柱をつなぐ布材(手すり)でもあります。 とくに、短尺の支柱を足場の下部に用いるくさび緊結式足場は、根がらみとしての布材がないと足場を組み始めることができません。 根がらみの組立は、後踏み側の支柱(外柱)の最下端の緊結部(コマ)に根がらみ用布材を打ち込んで相互に連結するとともに、前踏みの支柱(内柱)を順次、外柱につなぐことによって行います。(図参照)
 「技術基準」は、この方法によって住宅用足場を組み立てる場合、根がらみの強度を十分、確保できるとしています。
 一方、ビル工事用足場を組み立てる場合は、通常の方法によって組立てた根がらみは、必ずしも十分な強度を有しているとは言えず、この技術基準を参考に別途、検討する必要があります。 (文と絵・松田)


筋交い

筋かいの効果的な設置方法を教えてください

筋かい
 筋(すじ)かいは、支柱と支柱の間に斜めに入れて足場の構造を補強する部材で、筋交いまたは筋違いと表記されます。ブレース(brace)ともいいます。
 構造体の耐震性を強める効果があるため建築物に必要不可欠で、建築基準法は一定の割合で筋交いを使用することを義務づけています。
 長方形の構造体は、接合部の強度に余裕がないと、水平力を受けたときに平行四辺形にひしゃげるように変形してしまいます。 ここに対角線状に筋かいを加えて三角形の構造を作り、変形を防止する効果を持たせます。 とくに足場は、筋かいがないと横揺れが大きく、ブランコが揺れるような状態になることもあります。
 単管足場の筋かいは、けた行筋かい(大筋かい)、はり間筋かい、水平筋かいの3種類が規定されていますが(日本工業規格JISA8951)、くさび緊結式足場では、筋かいは大筋かいを指します。
 一般に、大筋かいは、足場の外面に垂直方向15m以下、水平方向16.5m以下の設置間隔ごとに交さ2方向に設けることになっています。 また、筋かいと交差しない建地がないこと、建地と布材(作業床)の交点付近で交差させることで水平力が効果的に伝達されるといいます。
 このため、仮設工業会の「くさび緊結式足場の組立ておよび使用に関する技術基準」では、ビル工事用足場の筋かいは、「足場の後踏み側の構面に」「全層全スパンにわたって設置すること」とし、足場用鋼管を用いる場合は、「8層8スパン以下毎に交さ2方向に設置する。 その傾きは水平に対し概ね45°とし、足場用鋼管は緊結金具を使用して各緊結部付支柱に取付ける」としています。
 8層8スパンとは、くさび緊結式足場が、概ね1スパンの長さ1.8m、1層の高さ1.8mまたは1.9mで構成されているためで、8スパン×1.8m=14.4mから導き出されています。 また、層数とスパン数を揃えたのは、斜材が布材と支柱の交点近くを通るようにしたためです。
 ここで「足場用鋼管及び緊結金具」とは、外径48.6㎜、厚さ2.5㎜の単管足場用鋼管と自在クランプのことをいいます。 一方、ビケ足場を含むくさび式足場の製造メーカーの多くは、その緊結部に適合した独自の斜材を開発しています。 この場合、外径が27.2㎜で足場用鋼管に比べて脆弱であるため、基準を強め、くさび式足場用斜材は「6層6スパン以下毎に交さ2方向に設ける」こととしています。
 2015年改訂の技術基準では、これに「X種のくさび緊結式足場用先行手すり」が、「くさび式足場用斜材と同等の性能を有」し、「斜材として使用できる」としました。 X種のくさび緊結式足場用先行手すりとは、筋かいの性能をあわせもつくさび緊結式足場用の先行手すりのことで、ビケ足場の先行手すり(BX手すり)も含まれます。 なお、くさび緊結式足場用先行手すりは最下層には設置しにくいので、「3スパン以下ごとにくさび式足場用斜材、緊結部付布材又は筋かいとして足場用鋼管を設ける」補完の措置が必要です。
 上記は、ビル工事用足場の筋かいの設置基準を解説したものです。
 軒の高さ10m未満の住宅工事用としてくさび式足場を使用する場合はどうでしょうか。 技術基準は「住宅工事用足場は高さが低く積載荷重も小さい」ためビル工事用ほどの「足場の補強は必要がない」として、次のように規定しています。
 「足場の後踏み側の構面には筋かい等として、次に示す設備のうちいずれかを全層全スパンにわたって設置すること。 ①大筋かいを足場用鋼管により設置し、その傾きは水平に対し概ね45°とし、足場用鋼管は緊結金具を使用して各緊結部支柱に取付ける。 ②くさび式足場用斜材を原則として連続して設置する。③一側足場を除き、X種のくさび緊結式足場用先行手すりを設置する。」
 なお、ビル工事用足場と同様、くさび緊結式足場用先行手すりを用いる場合は、最下層に「斜材を少なくとも1スパン」設置することとしています。
 全層全スパンとは、1構面を正面から眺めて、全ての層、全てのスパンに1本以上の筋かいが設置された状態をいいます。
 ところで、くさび式足場用斜材を「全層全スパンにわたって」「原則として連続して設ける」とは、どういうことをいうのでしょうか。 技術基準は、これを「最下部から最上部に、かつ右端の緊結部付支柱から左端の緊結部付支柱まで、切れ目無く筋かいを」設けることと説明しています。
 ここで問題になるのは次のことです。
(1) くさび式足場用斜材は1.8mのスパンに設置する斜材は1層の高さがありますが、1.5m以下のスパンに設置する場合は1層の高さがありません(斜材はできる限り45°の傾きになるように設計されている)。 そうすると、斜材を連続して設ける場合、1.5m以下のスパンがあると、層とスパンが揃わず、支柱と布材の交点で筋かいが交差しないケースが生じます。
(2) 2階建て住宅は、一般的に、1構面の高さは3層だが、幅はそれ以上のスパンで構成されることが多い。 この場合、3スパンで筋かいの連続が途切れることになるが、残されたスパンには筋かいをどのように設置したらよいか。
 (1) には特段の答えはありません。斜材の連続と斜材・支柱・布材の交差のどちらを優先するかは臨機応変に判断するしかありません。 技術基準も、くさび足場式斜材の連続は「原則」とし、その端部を緊結部に取り付けるため「緊結部が塞がってしまって必要な位置に設けられない場合は、斜材が連続しない状態もやむを得ない」と述べています。筋かいの連続は絶対ではなく、この場合は、1つ上または下にある緊結部から連続して設けることになります。
 (2) には、ビケ足場の施工標準があります。 くさび足場式斜材を取り付けるときは両端の最下部にある緊結部を起点に全層全スパンになるように連続して取付け、1構面を横から眺めて「ハの字」になるように設置します。(写真参照)
 筋かいは、単管足場用鋼管とくさび式足場の専用部材のどちらを用いてもかまいません。 しかし、くさび式足場の専用部材は、布板芯掛けの一側足場のような単管足場用鋼管では対応できなかった現場にも設置可能です。 また、1スパンごとに取付けできる、ハンマーひとつで脱着できるなどの利点のため、作業の進捗に合わせて簡単に盛替えできます。 フレキシビリティ(自由度)を兼ね備えた専用部材ですが、その効果が最大に発揮されるように、一定の基準に基づいた設置が必要です。(文・松田)

【参考】
労働安全衛生規則 第570条
 事業者は、鋼管足場については、次に定めるところに適合したものでなければ使用してはならない。
(一~三 略)
四  筋かいで補強すること。(以下略)

足場先行工法のガイドライン
(8) 筋かい
足場には、各面におおむね45度の傾きの筋かいを全層及び全スパンにわたって設けること。

住宅工事用くさび緊結式足場の組立て及び使用に関する技術基準(仮設工業会)
(14) 筋かい
 足場の後踏み側の構面には筋かい等として、次に示す設備のうちいずれかを全層全スパンにわたって設置すること。
① 大筋かいを足場用鋼管により設置し、その傾きは水平に対し概ね45°とし、足場用鋼管は緊結金具を使用して各緊結部支柱に取付ける。
② くさび式足場用斜材を原則として連続して設置する。
③ 一側足場を除き、X種のくさび緊結式足場用先行手すりを設置する。

ビル工事用くさび緊結式足場の組立て及び使用に関する技術基準(仮設工業会)
(12) 筋かい
 足場の後踏み側の構面には筋かい等として、次に示す設備のうちいずれかを全層全スパンにわたって設置すること。
① 大筋かいを足場用鋼管に使用して8層8スパン以下毎に交差2方向に設置する。その傾きは水平に対し概ね45°とし、足場用鋼管は緊結金具を使用して各緊結部支柱に取付ける。
② くさび式足場用斜材を6層6スパン以下毎に交差2方向に設置する。
③ X種のくさび緊結式足場用先行手すりを設置する。


筋交い(ビケ足場よもやま話)

くさび式足場用筋かいの特徴を教えてください

筋かいTST
 ビケ足場に用いられる筋かいは、1990年ごろまで外径48.6㎜、厚み2.5㎜の単管足場用の鋼管を使用していました。 しかし、ハンマーひとつで組み立てカンタン、というビケ足場のコンセプトを満足させるために、クランプで締め付ける筋かいに代わって、ハンマーでたたき込むくさび式足場用筋かいが開発され、市場に投入されます。
 この筋かいは使い勝手は良かったものの、抜け止め機能を有しないため、仮設工業会の認定品にはなっていません。 一説では、1995年の阪神大震災のとき、足場の倒壊は免れたものの、くさび式足場用筋かいのくさび部分の大部分が外れかけていたということです。
 2002年、現在のくさび式足場用の斜材が開発されます。 この斜材は、筋かいと吊り材(トラス)を兼用した構造で、トラス構造にした場合、先端で一定の荷重を支えることができます。 このため、900スパン以上の長さに足場を持ち出す場合の補強材としても使われます。
 この斜材は、仮設工業会にくさび式足場用筋かいとして認定されています。
 くさび式足場用筋かいは、ハンマーだけで組立てカンタンという利便性の良さだけが特徴ではありません。
 足場用鋼管は、概ね4.5mの長尺物を使用しますが、くさび式足場用筋かいは、全長2.7m~1.3mの筋交いを1スパンごとに取り付けるため、層高やスパン長が限られたスペースにも設置することができます。 盛替えも簡単で、荷物搬入の障害になったときはその部分だけ臨時的に外すことができます(図参照)。
一側足場の筋かい
また、特定の足場部材と兼用することで、足場用鋼管では設置できない布板芯掛けの一側足場にも筋かいを取り付けることができます(写真右)。
 ビケ足場には固有の記号番号があります。1800のスパンに用いるくさび式足場用筋かいはTST18Cです。TSTは「吊り」(T)「筋かい」(S)「手すり」(T)のローマ字表記の頭文字に由来します。 18はスパンの長さ(1800㎜)を、Cは層の高さに対応した支柱(C支柱)を示しています。

 筋かいは、水平に対し概ね45°の角度で設けることになっています。 スパン長と層高の対応関係は、筋かいがもっとも45°に近くなるように設計されています。 ただし、1200スパンの筋交いはTST12Dですが、これをTST12DEの場合と比較すると、前者は38.4°、後者は49.9°になり、TST12DEが筋かいとして相応しいように思われます。 これは、実際の筋かいの角度がくさびの緊結部を結んだ角度よりやや急峻になるように設計されていることや、45°との差が顕著な値でないため経済性を優先して筋かいの全長が短いTST12D を商品化したものと想像しています。 (文と絵・松田)

ビケ足場用筋かいの寸法規格一覧 * 1200スパンの筋かいをTST12DEとすると、角度49.9°、長さ1.863mとなり、TST12Dに比較しても45°に近い
筋かい スパン長(m) 層高(m)
( ) 内は対応支柱
水平との角度(°) 筋かいの長さ(m)
TST18C 1.8 1.9 (C) 46.5 2.617
TST15DE 1.5 1.425 (DE) 43.5 2.069
TST12D* 1.2 0.95 (D) 38.4 1.531
TST09D 0.9 0.95 (D) 46.5 1.309

昇降設備

階段の標準的な設置方法を教えてください

階段の立面図
 労働安全衛生規則では、高さ(または深さ)が1.5mをこえるところで作業を行うときは、安全に昇降する設備を設けなければなりません(526条)。
 とはいえ、ビケ足場の黎明期には、専用の階段が標準的に付帯されておらず、昇降設備といえば垂直のハシゴしかありませんでした(おそらく、くさび式足場全般に共通)。 ハシゴでは物を持ったままのぼることができません。このため、「安全な」昇降設備とはいいがたく、専用の階段が待ち望まれていました。
 そこで、1987年に組立式の階段「ダンダン」がビケ足場のラインナップに加わります。 また、1990年に一体式の鋼製階段が商品化され、次第に普及していきました。一体式の鋼製階段は、数年前にアルミ製階段としても発売されています(カタログ参照)。 ちなみに、「ダンダン」は、当時の東日本総販売元の会社が開発した商品という経緯もあり、西日本の地域ではほとんど普及していません。
階段のカタログ
 階段は、踏み外しや転倒を防止するために、勾配、踏面、けあげ高さなどに一定の制約があり、また踏面には滑り止めの効果をもたせることが必要です。
 厚生労働省の「足場先行工法のガイドライン」では、階段の踏面は等間隔で、その幅が20㎝以上、けあげ高さ30㎝以下と規定しています。
 階段は、踊場と一体となって仮設通路を構成しています。 労働安全衛生規則では、建設工事に用いる登り桟橋に関する規定で、高さ8m以上の場合に7m以内ごとに踊場を設けることとなっています(552条)。 また、建築基準法施行令は一般の建物で、高さが4mを超えるものは4m以内ごとに踊場を設けることにしています(24条)。
 踊場は、万一、階段を踏み外したときに転落の距離を短くする役割があると同時に、仮設足場のように作業床の幅に限りがある場合に、建築材料を仮置きするスペースとしても期待されています。 このため、ビケ足場は、標準的な施工方法として、2層ごとに踊り場を設け、軒の高さにも踊り場を設けることにしています。 低層の住宅工事用足場では階段を直線的に設けることが困難なため、図のように、通常3スパン以下のスペースに階段を設けます。 2階建ての住宅工事用足場を3スパンで設置した場合は、3か所の踊り場が必要になります。
 なお、仮設工業会の「くさび緊結式足場の組立て及び使用に関する技術基準」は、2層以下毎に踊り場を設けることとしています。
 階段部分と踊場に、墜転落防止のために高さ85㎝以上の手すりと中さん (高さ35㎝以上50㎝以下) 等を設ける必要があるのは、通常の作業床の場合と同じです(労働安全衛生規則552条)。
 ところで、住宅の建築現場では、敷地や取引条件などにより、階段を設置していない現場が数多く、見られます。この場合は、垂直のハシゴを足場に取り付けることになります。 ハシゴは、その上端を屋根面から60㎝以上、突き出すことが必要です(労働安全衛生規則556条) (文と絵・松田)

【参考】
労働安全衛生規則
第526条(昇降するための設備の設置等)
 事業者は、高さ又は深さが一・五メートルをこえる箇所で作業を行なうときは当該作業に従事する労働者が安全に昇降するための設備等を設けなければならない。 ただし、安全に昇降するための設備等を設けることが作業の性質上著しく困難なときは、この限りでない。
2 前項の作業に従事する労働者は、同項本文の規定により安全に昇降するための設備等が設けられたときは、当該設備等を使用しなければならない。
第552条(架設通路)
 事業者は、架設通路については、次に定めるところに適合したものでなければ使用してはならない。
一  丈夫な構造とすること。
二  こう配は、三十度以下とすること。ただし、階段を設けたもの又は高さが二メートル未満で丈夫な手掛を設けたものはこの限りでない。
三  こう配が十五度をこえるものには、踏さんその他の滑止めを設けること。
四  墜落の危険のある箇所には、次に掲げる設備(丈夫な構造の設備であつて、たわみが生ずるおそれがなく、かつ、著しい損傷、変形又は腐食がないものに限る。)を設けること。 ただし、作業上やむを得ない場合は、必要な部分を限つて臨時にこれを取りはずすことができる。
イ 高さ八十五センチメートル以上の手すり
ロ 高さ三十五センチメートル以上五十センチメートル以下のさん又はこれと同等以上の機能を有する設備(以下「中さん等」という。)
五  たて坑内の架設通路でその長さが十五メートル以上であるものは、十メートル以内ごとに踊場を設けること。
六  建設工事に使用する高さ八メートル以上の登りさん橋には、七メートル以内ごとに踊場を設けること。
第556条(はしご道)
 事業者は、はしご道については、次に定めるところに適合したものでなければ使用してはならない。
一  丈夫な構造とすること。
二  踏さんを等間隔に設けること。
三  踏さんと壁との間に適当な間隔を保たせること。
四  はしごの転位防止のための措置を講ずること。
五  はしごの上端を床から六十センチメートル以上突出させること。
(六以下 略)

足場先行工法のガイドライン
(11)昇降設備
 足場には階段を設けること。
 階段の踏面は等間隔で設け、その幅は20センチメートル以上、けあげの高さは30センチメートル以下とすること。

くさび緊結式足場の組立て及び使用に関する技術基準(仮設工業会)
(15) 昇降階段
 昇降階段の設置は次によること。
① 2層以下毎に踊り場を設ける。 ② 昇降階段及びその開口部には手すり及び中桟を設ける。
※ 上記の記載は、「ビル工事用」と「住宅工事用」に共通


下屋足場

下屋足場の施工で注意するところを教えてください

下屋足場図1
 2階建ての平屋部分を下屋(げや)といい、下屋根の上に組み上げる足場を下屋足場といいます。
 下屋足場は勾配のある屋根面に組み上げるために、十分な補強がないと支柱が横ずれして足場が傾き、最悪の場合、倒壊の原因にもなります。 また、足場の設置中に、屋根材を葺いたり塗装したりする工程が入ることも多く、これも足場を不安定にする要因になります。
 ここでは、ビケ足場の施工標準を参考に、下屋足場の組み方を紹介します。
●下屋足場の補強方法
 下屋足場の施工で重要なのは、足場の脚部の横ずれを防止することと、施工中に一部のジャッキベースが持ち上げられた場合にも十分に耐えうる構造であることです。
 ハンマーでくさびを叩き込むビケ足場の場合、くさび式の根がらみだけでは支柱相互を十分に連結させるには不十分です。 勾配のある屋根面などで一本の支柱の基部に横ずれ等の力が働き不安定になったとき、縁の切れた構造になりやすいため、全ての支柱を外部の足場と連結する必要があります。 このとき、1本の布材だけでは接合部の強度が十分とはいえないので、図1のように2本の布材で下屋足場を支えます。
 こうすると、下屋足場は外部足場の延長線上に組み上げられたような堅固な構造になります。 また、1本の支柱を3方向から支えるため、仮にジャッキベースが一時的に持ち上げられても沈下や横ずれを防いでくれます。 ビケ足場の施工標準では、下屋足場が二側足場(部分二側)で組まれたときは、外部足場との連結は2スパンごとで足りるとしています。ただし、上述のように、屋根面の作業性を考えると、下屋足場は一側足場とし、外部足場と全部のスパンで連結させるのが望ましいでしょう。
 ところで、外部足場との連結がなく下屋足場を単独で組まざるを得ない場合はどうでしょうか。
 この場合は、足場脚部の横ずれを防ぐために全ての支柱を一体的に結合する必要があります。
下屋足場図2
具体的には、足場用の鋼管を複数の支柱にまたがって直交型クランプで緊結します。また、構面が長い場合は、中心部が外側に婉曲するのを防ぐための措置が必要です(図2参照)。
 下屋足場と外部足場が遠く、必要かつ十分な連結がとれない場合は、この根がらみの補強と合わせて補強を考える必要があります。
 ところで、足場の強度は、脚部の安定だけでなく、壁つなぎ、火打ち、控え材などが補完する関係にあります。 たとえば、外部足場との連結を壁つなぎで代用させることも可能です。現場状況を臨機応変に考慮してもっとも、効果的な補強方法を選択することが大切です。
●下屋足場の脚部
 下屋足場のジャッキベースには、勾配のある屋根と密着するように自在型を用います。 敷盤には、弾力性のある樹脂製の専用敷盤を使用します。専用敷盤は長辺が55㎝あり、屋根面との接地面積が大きいため、荷重を分散する効果があります。
 また、足場の設置期間中に屋根面の作業ができるようにジャッキベースの上げ代を確保しなければなりません。 一般的には、新築工事で瓦屋根は30㎝以上、カラーベストは20㎝以上の上げ代が必要です。
下屋足場図3
下屋足場図4
下屋足場図5
●下屋まわりの足場と2階外部足場との中間部
 ところで、下屋まわりの足場と2階外部足場の作業床には段差ができます。 このため、通行性や作業性に配慮して、下屋と2階の中間部は、下屋の軒の形状に合わせて、図3のような組み方になります。
 図中Aの支柱位置には内柱を設け、下屋まわりの作業床から2階部分の作業床に移動するための段差解消用のミニ踏板を設置します。 この内柱は、足場の強度を維持するためにも必要です。また、2階部分の作業床の端部には必ず、開閉式のストッパーを設ける必要があります。
 Aの支柱は下屋の軒の端部から概ね40㎝くらいのところに割り付けるのが望ましいでしょう。 この支柱が軒の端部から遠すぎると手が届かない範囲ができ、逆に近すぎると通行しにくくなります。 (文と絵・松田)


労働安全衛生規則の改正(2015.7.1)

床材と建地のすき間を12㎝未満とする労働安全衛生規則の改正について教えてください

 ことし(2015年)7月1日に労働安全衛生規則(以下、安衛則という)の足場関係の規定が一部改正されます。 改正規則は3月5日に公布され、パブリックコメントに対する厚生労働省の見解を含め、その内容が公表されています。
 2009(平成21)年にも足場からの墜落災害防止措置の強化として中さん等の設置が安衛則に盛り込まれていますが、今回の改正は、そのときに3年をめどに効果を検証し、必要な措置を講ずるとされていたことの延長線にあります。
 背景には、近年、足場からの墜落災害が増加傾向に転じていることや、墜落災害の9割で安衛則が求める措置への違反がみられることから、より効果的な墜落防止措置を講じるためといわれています。
 安衛則は、戦後1947年に制定された労働基準法とともに誕生し、1972年に労働安全衛生法が施行されると、それを実施する省令として整備されました。 以降、さまざまな改正が行われていますが、足場の規格や仕様に関しては、告示や労働基準局長通達として示されることがありましたが、安衛則自体の改正は2009年が初めてです。
 なかでも、今回の改正は、ビケ足場を含む現に流通している足場の規格寸法と抵触する部分があり、重大な関心が寄せられています。
 ここでは、改正安衛則の要点のひとつである足場の作業床に関する墜落防止措置として規定された床材と建地のすき間について、厚生労働省の見解を参考に解説します。
 また、次回以降、改正安衛則の概要を順次、解説していきます。

床材と建地の隙間
床材と建地のすき間 床材と建地のすき間を12㎝未満とする規定の追加
 従来、高さ2m以上の作業場所に設けられる足場の作業床の要件に関するものとしては、幅40㎝以上、床材間のすき間3㎝以下という規定しかありませんでしたが、新たに床材と建地のすき間は12㎝未満とするという規定が追加されました。(第563条1項2号ハ)
 足場の建地(支柱)を建物と垂直方向(はり間方向という)につなぐブラケットなどを腕木材といい、その腕木材に鋼製踏板や足場板を架け渡して作業床としますが、ここでいうすき間とは、床材と建地の、建物と垂直方向の間隔のことをいいます(図1・厚生労働省の啓蒙用パンフレットを参照)。
すき間とはどこを測るのか/なぜ12㎝未満か
 では、床材と建地のすき間とは、どの部分を測るのでしょうか。 厚生労働省が実施したパブリックコメントでも最多の質問が寄せられた素朴な反応ですが、厚生労働省はこれに「建地の内法(うちのり)から床材の側面までの長さ」と単刀直入に回答しています。 また、12㎝未満とする根拠は、床材の幅を24㎝以上としていることから(労働省告示103号や足場先行工法のガイドライン)、床材の両端にすき間が12㎝以上あれば片方に寄せて、さらにもう1枚の作業床を敷き詰めることができるからということです。
床材の規格踏板をブラケット(腕木)に固定する緊結部付床材
床材の規格
 ビケ足場で使用する踏板は、「緊結部付床付き布枠」(あるいは緊結部付床材)に分類されます。
 一般に、くさび緊結式足場といっても、主要な構造部材である建地(支柱)と布材(手すり)、腕木(ブラケット)がくさびで緊結するものであっても、床材(踏板)までくさびで緊結するタイプの足場は当初、ビケ足場に限られていました。 近年、ビケ足場の類似品が多く流通し、一部のくさび式足場メーカーが「床付き布枠」と「緊結部付床付き布枠」を併せ持つようになり、緊結部付床材はビケ足場の専売特許ではなくなりましたが、なお緊結部付床材はビケ足場の主要な特徴のひとつに数えられます。
 フックで床材を架け渡し腕木材に固定されないタイプの「床付き布枠」に対して、緊結部付床材にはいくつかの優れた点があります。
 ひとつは、床材が、腕木や布材などの水平材と面的に一体化することで構造材の役割を果たし、足場の揺れやゆがみなどに対する強度を高めることです。固定されないタイプの床材を使用した足場と比較して、ビケ足場は垂直水平方向が真っ直ぐになり、通りが出やすいといわれています。
 ふたつ目は、建地と建物、床材の端と建物のそれぞれの間隔が一定になるため、設計段階で組立完成後の寸法を割り出すことができます。 また、施工の仕方によって床材が前後に横ずれしてしまうと、作業床の端がそろわず踏み外すおそれも生じます。
 では、どのように固定されているかを見てみます。
 図2を参照してください。
 ビケ足場は、建地の中心間の寸法60㎝のブラケットに40㎝幅の踏板を設置するとき、建物側に近くなるように設計されています。 開発当初の製品は中心に収まる設計でしたが、建物と踏板の離間距離をできる限り近くすることで建物側に墜落するおそれを少なくするという安全面の要請に応えるために現行の製品仕様になっています。
踊り場
 また、住宅用足場は腕木材として60㎝のブラケットを使用することが一般的であるため、足場の外側に階段を設けます。 このとき、階段の踊り場も足場の外側に設けることになりますが、踊り場に設置する床材を反対方向に設置することによって、床材間に29.4㎝のすき間が生じます。 このすき間に24㎝幅の床材を敷くことでステージができあがります(図3)。
 このように、ビケ足場の緊結部付床材は、足場の強度や安全性に配慮して完成度を高めてきたものですが、今回の安衛則改正で求められる12㎝未満の要件をわずかに(2、3㎜)充足していません。
固定するタイプの緊結部付床材に対する経過措置(例外措置)
 12㎝未満の要件には、経過措置が設けられています。
 「はり間方向における建地の内法幅が64㎝未満の足場の作業床であって、床材と腕木の緊結部が特定の位置に固定される構造のものについては、この省令の施行の際現に存する鋼管足場用の部材が用いられている場合に限り」「適用しない」(附則第3条)。
 つまり、ビケ足場を60㎝のブラケットを用いて組み立てる場合、6月30日までに製造されたものであれば適用を免れるということになります。ただし、90㎝以上の長さの腕木材を用いた場合は、この例外措置がないことに注意が必要です。
 ちなみに、ビケ足場の製造メーカーは、改正安衛則の施行までに床材の設計変更を実施するものと思われます。
 また、ビケ足場とは関係しませんが、固定されない構造の床材(緊結部のついていない「床付き布枠」)を使用する場合は、製造時期に関わらず、改正安衛則が適用されることになります。
床材の構造上、改正安衛則に違反する場合の対処方法
 床材の構造が改正安衛則に抵触する場合はどう対処したらよいでしょうか。これは、両端のすき間の和が24㎝以上か、未満かで結論が違います。
 24㎝以上の場合は、床材を一方に寄せて24㎝幅の床材を敷き詰める必要があります。
 一方、24㎝未満の場合は、「防網を張る等」の代替措置でもかまいません(第563条2項)。これは、床材の最小幅を24㎝と想定しているため、当然の結論です。なお、防網を張る以外に幅木を傾けて設置することも代替措置として認められます。 また、幅木が床材と一体となった構造のものは床材とみなされます。
 現には存在しませんが、固定式の床材で両端のすき間の和が24㎝以上になる場合はどうでしょうか。
 この場合は、上記のいずれの対応でも不可となるため、床材の組み合わせを変えるしか方法がありません。
固定されない構造の床材で中央にあるときは12㎝未満、片側に寄ったときは12㎝以上になるとき
 住宅用足場の場合、60㎝の腕木に40㎝幅または50㎝幅の床材を用いることが一般的です。 このとき、固定されない構造の40㎝幅の床材であれば、腕木のちょうど中央に位置したときは12㎝未満の要件を充足しますが、施工の内容や組立完成後の足場の使い方によっては片側に寄ってしまい、12㎝以上になることが考えられます。
 ビケ足場の場合も、緊結部のない90㎝以上の腕木材で同様のことが考えられます。
 要件を満足するかどうかが施工内容や使い方によって左右されるのは不都合です。
 厚生労働省は、この場合、床材の組み合わせを工夫する(たとえば、40㎝幅床材を24㎝幅床材2枚に変更する)、小幅の床材を敷く、床材がずれないように固定する、などの対応を求めています。
 なお、両端のすき間の和が24㎝未満のときに、防網を張る等の代替措置が認められるのは上記と同様です。
 いずれにしても、改正の趣旨を正しく理解し、的確な対応が求められます。(文・松田)
次回以降に、改正安衛則の概要を解説の予定です。


労働安全衛生規則の改正(2015.7.1) 第2回

足場の組立て等の作業に対する墜落防止対策の強化に関する規則の改正内容を教えてください

 労働安全衛生法(以下、安衛法という)は、「職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進すること」を目的に制定された法律ですが、その中心は、事業内における安全衛生管理体制の確立と、個別的な危険有害対象に対する安全衛生措置の実施に関するものです。 なかでも、危険有害対象に対する個別的措置基準は重要です。 その内容は広範囲で多岐にわたり、技術的な要素を多数含み、また社会情勢の変化に合わせて適宜、見直ししていく必要があることから、その多くを労働安全衛生規則(以下、安衛則という)などの省令に委任する構造になっています。
 改正安衛則(2015.7.1)には、足場の組立て等の作業に関する墜落防止措置の強化が盛り込まれました。 その背景には、足場からの墜落・転落災害のうち、足場の組立て等の作業中の割合が30%を占め、死亡災害に至っては46%と約半数に達していることがあげられます。 また、足場最上層からの墜落事故では、安全帯を使用していない事故の割合が墜転落災害の90%を超え、安全帯の取付け設備さえないものが80%近くに達するということです。(2009~2011年度の統計)。
 そこで、今回は、改正安衛則の中の足場の組立て等の作業にかかる部分を概観し、第3回(最終回)で残された部分の全てにふれることにします。
 また、末尾に、改正安衛則の概要を記載します。
 ところで、企業は、人・物・金の3要素で構成されているといわれます。 改正安衛則では、人の面として「足場の組立て等の業務の特別教育への追加」が、物の面として「足場の組立て等の作業にかかる墜落防止措置の充実」が規定されました(金の面の法規制は存在しない)。
 この順に従い、以下、見ていくことにします。
足場の組立て等の業務の特別教育への追加
 労働安全衛生法61条は特定の危険な業務について、都道府県労働基準局長の免許を受けた者や指定講習機関が行う技能講習を修了した者でなければ、就業を禁止する就業制限の制度を設けています。 たとえば、クレーンの運転、クレーンの玉掛け等の業務は、それぞれ免許、技能講習等の資格要件が定められています。
 一方、一定の危険有害な業務であっても、就業制限の対象業務に準ずる場合は、積極的に知識や技能を習得させる観点から、事業者がその業務に従事させるときに特別教育を実施することにとどめています(労働安全衛生法59条3項)。
 特別教育の対象とされる業務は、社会情勢の変化に応じて適宜見直されてきましたが、今回の改正で「足場の組立て、解体または変更の作業にかかる業務」が新たに追加されることになります(安衛則36条39号)。
特別教育の内容や実施方法
 特別教育の教育項目や教育時間は、業務の種類に応じて厚生労働省の告示で細目を定めることになっています(安衛則39条)。 足場の組立て等の業務については、次の学科教育の内容が規定されました(安全衛生特別教育規程の一部を改正する告示/平27厚生労働省告示114)。
 1 足場及び作業の方法に関する知識(3時間)
 2 工事用設備、機械、器具、作業環境等に関する知識(30分)
 3 労働災害の防止に関する知識(1時間30分)
 4 関係法令(1時間) 合計6時間
 ( ) 内は、教育時間ですが、改正安衛則の施行日に足場の組立て等の業務に従事する者は、各教育科目の半分の時間でよいことになっています。
 講師の資格要件は法令で定められていません。が、当然のことながら、教育科目について、十分な知識、経験を有する者です(昭48基発145)。
 教育は、本来事業者が実施すべきものです。 とはいえ、労働災害防止団体等が行う厚生労働省の告示に定める要件を満たす講習を受講したことが明らかなときは改めて教育を実施する必要がないものと取り扱われます(昭47基発601-1号)。 事業者に教育の体制が備わっていない等の場合には、こうした代行機関に教育を委託することになります。 なお、これらの機関は、事業者に代わって特別教育を実施するだけでなく、事業所内部の講師の育成についてもプログラムを用意しているようです。
 特別教育を実施したときは、受講者の氏名や教育科目を作成し、3年間保存しておく必要があります(安衛則38条)。
特別教育の受講義務者の範囲
 ところで、足場の組立て等にかかる業務については、作業主任者技能講習の制度があります。技能講習は特別教育に対して上位の資格になります。 技能講習を修了した者は、十分な知識と技能を有していると認められるため、改めて特別教育を受講する必要がありません(安衛則37条)。
 また、改正安衛則の特別教育には経過措置があります。 施行日の2015年7月1日現在、足場の組立て等の業務に従事している者は、2017年6月30日までの間は特別教育の受講が猶予されます。 つまり、2年間の間に、特別教育を受講するか、作業主任者の技能講習を修了する必要があります。
足場の組立て等の作業にかかる墜落防止措置の充実
 足場の組立て等の作業について、事業者は墜落防止措置等を講じなければならないとされています(安衛則564条)。 措置を講ずべき作業の範囲は、これまで「つり足場(ゴンドラのつり足場を除く)、張出し足場または高さが5m以上の構造の足場の組立て(等)」(安衛法施行令6条15号)としていましたが、改正安衛則では、高さが2m以上の構造の足場にまで拡大されます。 なお、ここで足場の構造上の高さとは、わく組足場は最上部の建わくの上端までをいい、そのほかの支柱式の足場は最上の水平材(布材等)までの高さを指しています。
 また、講ずべき措置として、現行の安衛則は、①組立て等の時期等を作業に従事する労働者に周知させる 、②組立て等の作業を行う区域内の関係労働者以外の労働者の立入りを禁止する、③悪天候のため、作業の実施について危険が予想されるときは作業を禁止する、④足場材の緊結等の作業にあっては、幅20㎝以上の足場板を設け、労働者に安全帯を使用させる等労働者の墜落による危険を防止するための措置を講ずる、⑤材料等を上げ、又はおろすときは、つり網等を労働者に使用させることの5つを規定しています。
 改正安衛則は、この中の④について、「幅20㎝以上の足場板」を「幅40cm以上の作業床」に変更し、たんに、「労働者に安全帯を使用させる」だけではなく、「安全帯を安全に取り付けるための設備を設け、かつ、労働者に安全帯を使用させる措置を講ずること」を明文化しました。 ただし、それぞれに例外規定があり、作業床については、設けることが困難なときは適用が除外され、安全帯を取り付ける設備は同等以上の効果を有する措置でも代用可能です。
 幅40㎝以上の作業床を設けることが困難な場合とは、①狭小な場所に作業床を設ける場合、②昇降設備を設ける場合、③つり足場の組立作業で幅20㎝以上の足場板を交互に移動させながら作業を行う場合、の3つの例示があります(パブリックコメントへの回答)。
 また、「安全帯を安全に取り付けるための設備」とは、「安全帯を適切に着用した労働者が落下しても、安全帯を取り付けた設備が脱落することなく、衝突面等に達することを防ぎ、かつ、使用する安全帯の性能に応じて適当な位置に安全帯を取り付けることができる設備」と説明されています(パブリックコメントへの回答)。
安全帯を安全に取り付けるための設備とは

安全帯1
 安全帯は一般的に、腰の位置より高いところにかけ墜落時の衝撃荷重を少なくすること、作業位置に近接した場所にかけ墜落時に振り子状態にならないようにすること、開放部がある構造体にかけないこと、墜落時にフックに曲げ荷重がかかるようなかけ方をしないことが必要といわれています。
 わく組足場は層ごとに足場を組み上げます。また、建わくを設置した後に交さ筋交いを取り付けます。  このため、足場の組立てや解体の作業では安全帯をかける適当な構造体がない状態での作業を余儀なくされます。 こうした作業では、先行手すりや親綱あるいは親綱支柱を安全帯の取付け設備として確保する必要があります。
 一方、ビケ足場のような支柱式の足場では比較的容易に安全帯の取付け設備を足場の組立て作業に先行して設置することができます。
安全帯2
 ビケ足場の組立てでは、手すりが取付けされていない層に移動するときでも、すでに支柱が建ちあがっている状態になるように作業手順を設定することができます。 また、手すりの取り付けは、すでに完成したスパンを起点に作業します(図2参照)。
安全帯3
 近年、くさび緊結式の足場では、ビケ足場をはじめ、多くの製造メーカーが手すり先行式の部材を開発しています(図1)。 手すり先行足場の手すりが安全帯の取付け設備として有効なのは言うまでもありませんが、正しい作業手順によって組立てた手すり先行式でないビケ足場も、足場最上層での適切な安全帯の取付け設備を設けることができます。
 右図では、支柱の設置手順が図3となるときは、安全帯取付け設備として親綱等を設けなければなりません。
手すり先行工法による場合の安全帯取付け設備の要否
 安全帯の取付け設備および安全帯の使用と「同等以上の効果を有する措置を講じたとき」は、先にふれたように、改正安衛則の墜落防止措置は必要ありません。
 手すり先行工法で組み立てた場合に、この例外措置に該当するかどうかについては、「手すり先行工法による手すり」は、「一般的に、足場の外側のみに採用されることが多く、足場の外側」には墜転落防止効果が期待できても「躯体側からの墜落の危険」は残るため、先行手すりが「同等以上の効果を有する措置」とはいえず、安全帯取付け設備として安全帯を使用する必要があるとしています(パブリックコメントへの回答)。
 いずれにしろ、足場事業者としての自覚と責任をもって、安全な作業環境の形成に一層、努めていくことが必要です。(文と絵・松田)

労働安全衛生規則改正(2015.7.1)の概要 ※図中、(2)の②、(4)(5)は次回に解説します。
項目 主な内容 掲載回
(1) 足場の組立て等の業務の特別教育への追加 足場の組立て等の作業にかかる業務(地上または堅固な床上での補助業務をのぞく)を特別教育の対象とする 第2回(今回)
(2) 足場の作業床にかかる墜落防止措置の充実 ① 床材と建地のすき間は12㎝未満 第1回
② 手すり等の墜落防止措置を設けない場合や取り外す場合の要件に「当該箇所への関係労働者以外の者の立ち入りを禁止」を追加
作業の必要上臨時に取り外したときは、作業終了後ただちに復元
第3回
(3) 足場の組立て等の作業にかかる墜落防止措置の充実 ① 事業者が措置を講ずべき5mから2mの構造の足場まで拡大
② 足場材の緊結等の作業を行うときは幅40㎝以上の作業床を設ける(現行20㎝以上)
③ 安全帯取付設備の設置(と安全帯を使用させる措置)
第2回(今回)
(4) 鋼管足場にかかる規定の見直し 建地の下端に作用する設計荷重(足場の重量に最大積載荷重を加えた荷重)が最大使用荷重(破壊に至る荷重の1/2以下)を超えないときは、鋼管を2本組みとすることを要しない 第3回
(5) 注文者(一般的には特定元方事業者)の点検義務 足場(または作業構台)の組立て、一部解体、変更のあと、作業開始前に、足場の状態を点検し、危険のおそれがあるときはただちに修理すること 第3回

労働安全衛生規則の改正(2015.7.1) 第3回

注文者の点検義務の強化などの改正について教えてください

 労働安全衛生規則改正の最終回として、作業床からの墜落防止設備を取り外すときの措置、単管足場の高さに関する規制緩和、注文者の点検義務の強化について解説していきます。
作業床からの墜落防止設備の取り外しなどが許される場合
 足場の作業床からの墜落防止措置の充実として、床材と建地のすき間を12㎝未満とする要件の追加については、このシリーズの第1回で解説しました。
 足場の作業床からの墜落防止措置については、もう一つの改正があります。
 2009年の足場関係の改正で、くさび緊結式足場や単管足場は従来の手すりに加えて「中さん等」の設置が義務付けられ、わく組足場は交差筋かいに加えて「下さん」「幅木」または「手すりわく」の設置が盛り込まれましたが、そのときに但し書きとして設けられた例外の規定がより制限されます。
 現行の労働安全衛生規則(以下、安衛則という)は、「作業の性質上これらの設備を設けることが著しく困難な場合又は作業の必要上臨時にこれらの設備を取りはずす場合」は、「防網を張り、労働者に安全帯を使用させる等墜落による労働者の危険を防止するための措置」を代替の措置として要求しています。
 改正安衛則では、この後段の措置部分について「安全帯を安全に取り付けるための設備等を設け、かつ、労働者に安全帯を使用させる措置又はこれと同等以上の効果を有する措置」に変更し、かつ「関係労働者以外の労働者を立ち入らせないこと」にしました(安衛則563条1項6号3)。また、一時的に「墜落防止措置を取り外したときは、その必要がなくなった後、直ちに」「現状に復さなければな」りません(安衛則563条1項6号5)
 これは、作業床の墜落防止措置を取り外す場合に、安全帯取付け設備の義務化等により安全帯使用の実効性を高め、関係労働者の立ち入りを禁止することで、管理の面や設備の面で事業者の責務を明確にした規定です。
 なお、仮設通路、作業構台についても同様の改正が行われます。
単管足場の高さに関する規制の緩和
 現行の安衛則は、鋼管足場のうちの単管足場の組立て高さについて「建地の最高部から測って31mを超える部分の建地は、鋼管を二本組とすること」という規定を設けていますが、改正安衛則は、これに但し書きを加え、「建地の下端に作用する設計荷重(足場の重量に相当する荷重に、作業床の最大積載荷重を加えた荷重をいう)が当該建地の最大使用荷重(当該建地の破壊に至る荷重の2分の1以下の荷重をいう)を超えないときは、この限りでない」とし、強度が十分なものを除外しました(安衛則571条)。
 単管足場には、くさび緊結式足場も含まれます(パブリックコメントへの回答)。
 なお、仮設工業会の「くさび緊結式足場の組立て及び使用に関する技術基準」は、ビル工事用足場として組立てたくさび式足場の高さの上限を31mにしていましたが、昨年12月に最高高さを45m以下まで拡充しています。
注文者の点検義務

注文者と事業者
 今回の改正で、注文者による足場の点検義務が強化されます。
 2009年の改正でも足場の点検義務の一部が強化されています。
 2009年改正では、事業者が行う足場の点検の強化として、①「その日の作業を開始する前」に足場の墜落防止設備を点検し、異常を認めたときは直ちに補修すること、②従来からあった、悪天候や足場の組立て・一部解体・変更の後の点検義務(この点検義務は足場全般の網羅的な点検義務)に加えて、点検の結果と補修措置等の内容を記録し、保存することが盛り込まれました。 また、注文者が行う措置の強化として、従来からあった悪天候後の点検・補修義務に、それを記録し、保存することが盛り込まれました。
 今回の改正では、2009年改正時の②の義務が事業者と同様、注文者にも課せられることになります。つまり、「足場の組立て、一部解体若しくは変更の後」、「足場における作業を開始する前」に足場の状況を点検し、危険か所があれば速やかに補修する義務が課せられます。また、点検の結果と補修の内容は足場の設置期間中は保存しなければなりません。
 これを事業者の点検義務と比較すると、注文者にないのは、その日の作業開始前の「足場用墜落防止設備」(手すり・中さん等)の点検義務だけで、それ以外では注文者も事業者と同等の義務が課せられることになります。(下表を参照)
 ところで、注文者や事業者とは、何を意味するのでしょうか。
 一般に、注文者は、仕事を他人に請け負わせる者をいい、事業者は労働者を使用して事業を行う主体(法人または個人経営者)のことをいいます。 たとえば、住宅の建築が数次の請負工事で行われる場合は、注文者とは、最末端の下請負人 (自らの下に請負業者を持たない施工業者) を除く施工業者の全部と施主のような発注者が注文者です。 また、事業者とは、発注者(施主)以外の施工業者で、当該現場で労働者を使用している法人または個人経営者をいいます。(右図を参照)
 こうした言葉遣いは、責任の主体についての理解を難解にさせる一因になっていますが、ここでは注文者と事業者との対比で、厚生労働省の見解が示されています。
 点検義務の注文者は、「建設業」「の仕事を自ら行い、かつ、先次の請負契約の当事者である注文者」です。 「一般的には、元方事業者が足場の組立てを請負人に発注し、他の請負人の労働者に使用させることが多く、この場合、当該特定元方事業者は点検義務が課せられる注文者」となります(パブリックコメントへの回答)。 また、事業者とは、足場を使用する施工業者で労働者を使用する主体のことです。
 平たく言うと、足場の業者に足場の組立てを発注するのが注文者で、その足場を使用する施工業者の法人または個人経営者が事業者です。注文者は、通常、特定元方事業者です。
 商取引では、売買契約で物の引き渡しを受けたとき、買主はただちに物の瑕疵や数量不足を検査する必要があります。また、組立工事付の足場のレンタルは対価が伴う有償契約です。 足場の組み方は、一義的には、足場の注文者が決定します。
 こうした点を考慮すると、注文者の点検義務の引き上げは、点検と管理に実効性を持たせるためには当然の結論のように思えます。(文と絵・松田)

注文者と事業者の足場の点検義務 「○」は義務あり、「×」は義務なし、「○ 記録と保存」は記録し保存する義務もあり
点検内容 点検時期 2009年以前の安衛則 2009年改正安衛則 2015年改正安衛則
事業者の点検と補修義務 作業開始前
(ただし墜落防止設備のみ)
×
悪天候後
記録と保存

記録と保存
足場の組立・一部解体・変更後
記録と保存

記録と保存
注文者の点検と補修義務 悪天候後
記録と保存

記録と保存
足場の組立・一部解体・変更後 × ×
記録と保存

火打ち

火打ちを効果的に設置する方法を教えてください

火打ち
 木造住宅などで水平に直交する部材の交差点に斜材を入れてその直角が変わらないようにする補強材を火打ちといいます。 梁や桁の交点に入れるものを「火打ち梁」、土台に対して入れるものを「火打ち土台」などと呼びます。
 同じように、足場の最上端にある水平材(手すりなど)の4隅に架け渡す補強材を火打ちといいます。
 足場から垂直に壁に当てて、突っ張り効果を生じさせる部材を圧縮材(ジャッキ)といいますが、火打ちはこの圧縮材と相反する引張力を生み出すことで足場が前後に揺れることを防ぐ効果もあります。
 火打ちといえば、時代劇の一幕で旦那の出立に女房が火打石を打って、厄除けの切り火を起こす場面を思い起こしますが、この火打石が鋭角をしていたので三角形を火打ちということになったそうです(飯塚五郎蔵著『建築語源考(技術はコトバなり)』鹿島出版会刊)。
 長方形の構造体は、4隅の交点に強度がないと、水平力を受けたときに平行四辺形にひしゃげてしまいます。とくに足場は、接合部の強度が不足していることが多く、水平的なねじれを防ぐための火打ちや垂直方向の対角線に入れる筋かいのような、有効な補強材がないと揺れや倒壊の原因になります。
 ところで、労働安全衛生規則の鋼管足場に関する条項(570~573条)は、鋼管足場が具有すべき規格や構造を定めたものですが、補強材として、筋かい、壁つなぎ、控えに関する記述はあっても、火打ちに関する規定はありません。
 一方、厚生労働省の『足場先行工法のガイドライン』(平成8年策定、平成18年改正)には次の記述があります。
 「建方作業後は、各面に控えを設けた足場以外の足場にあっては、足場の全周を完全に組み上げ、各面を相互に緊結するとともに、速やかに各面に壁つなぎを設けること。 建築物の構造等により壁つなぎを設けることが困難な場合には、火打ち及び圧縮材等を設け、かつ、足場の一面の長さが長い場合には頭つなぎを設けて足場を補強すること」
 つまり、一義的には、壁つなぎを設けることが必要で、それが「困難な場合」に代替措置として火打ちと圧縮材等を設けることを求める内容になっています。
 これは、労働安全衛生規則が、大規模な構造の鋼管足場を想定していることに由来していると思われます。 住宅建築現場では、壁つなぎ材を補強材として使用することは、建物の構造や補修の問題から敬遠されることが多く、火打ちと圧縮材で代用させることが一般的になっています。
 では、火打ちを最も効果的に施工する方法を考えてみます。
 火打ちの効果が最も高まるのは、直交する水平材に対して火打ちが2等辺三角形になった場合です。 火打ち材には一般に4.5m単管を使用するため、コーナー部から概ね3m(3.18×3.18×2≒4.5×4.5)のところに火打ち材を緊結するクランプを設けます。
 ところで、切妻屋根のような場合は、火打ちを水平に設置することができません。この場合、傾斜角度が大きすぎると火打ちの効果が減殺されてしまいます。 このため、ビケ足場の設置基準では、垂直方向95㎝までを上下段差の許容範囲としています。
 火打ちは、水平的なひずみを防ぐ効果がありますが、長方形の1面が長すぎると火打ちの効果が中心部に及びません。強風にあおられた場合、構面の中央部から足場が倒壊することも考えられます。
 この場合、補強方法としては、壁つなぎや控えも考えられますが、これらが困難な場合には「頭つなぎ」で対処します。頭つなぎは、一面とその対辺を単管その他の部材(例えばロープなど)で確実につなぐことを意味します。
 では、「1面の長さが長い」とは、どういうことを意味するのでしょうか。ビケ足場の設置基準では、1面が14m以上の場合に頭つなぎを設けるとしています。 なお、仮設工業会の「くさび緊結式足場の組立て及び使用に関する技術基準」でも2014年12月の改定版で「14m」を長さの転換点としています。
 火打ちは、自在型クランプを用いて単管足場用鋼管と手すりを確実に緊結する方法が一般的です。この場合、単管(φ48.6)と手すり(φ42.7)の外径が違うため、兼用クランプを使用します。
 クランプは一定の耐荷重を有するものしか流通させてはならないことになっています(労働安全衛生法42条、労働安全衛生法施行令13条)。 また、クランプは、十分な力で締め付ける必要があります。 建築業者によっては、クランプの取付場所を単管の端部から何センチ以上とか、単管足場のジョイントピンの内側にクランプを取付ける、など独自の基準を設定しているケースも散見されますが、むしろ、機能が十分に保たれているクランプを正しく使用することが大切です。
 なお、ビケ足場の設置基準では、クランプは単管の端部から5㎝~10㎝の範囲に緊結することになっています。(文と絵・松田)

【参考】
足場先行工法のガイドライン
(7) 壁つなぎ又は控え
イ 建方作業前の足場には各面に控えを設けること。
 敷地が狭あいで控えを設けることが困難な場合には全周を緊結した構造とすること。
ロ 建方作業後は、各面に控えを設けた足場以外の足場にあっては、足場の全周を完全に組み上げ、各面を相互に緊結するとともに、速やかに各面に壁つなぎを設けること。
 建築物の構造等により壁つなぎを設けることが困難な場合には、火打ち及び圧縮材を設け、かつ、足場の一面が長さが長い場合には頭つなぎを設けて足場を補強すること。


足場の昔風の言い方、足代(あししろ)

足場を足代と言うのは本当ですか。いつごろの言葉ですか

あなない
 「招待した人に足代を払う」のように交通費のことを足代(あしだい)といいますが、読みを「あししろ」に変えると足場のことを意味します。
 江戸時代の浮世絵師、葛飾北斎の代表的作品である「富嶽百景」のひとつ、「足代の不二」は、「あししろのふじ」と読みます。現代語では「足場の富士」です。
 あの広辞苑にも足代(あししろ)の記載があります。「①高い所に登るために材木を組み立てて造った仮設物。あしば。あしがかり。②基礎。準備。下ごしらえ」と解説されています。
 とはいっても、今日、「あししろ」という言葉を耳にすることはまずありません。
 建築用語の古典的名著といわれる「日本建築辞彙」(中村達太郎著)では、足代(あししろ)を「煉瓦積または建前(たてまえ)などをなすため、丸太などにて造りたる仮設物をいう。 足代の柱を<建地>といい、建物を連続する横丸太を<布丸太>と称す。 また建地および布丸太に直角なる横木を<腕木>と名づけ、その上に渡したる板を<歩板>(あゆみいた)または<投渡板>(なげわたしいた)と称す。足代に建前足代及び軒足代の別あり」と説明しています。
 同書は、1906(明治39)年に初版が上梓された古建築用語の淵源といわれる書籍です。 脚注に、「足代は近世にも<足場>の意に用いられた」と記していますが、少なくとも近代(明治期)までは足代という言葉が巷間に息づいていたと思われます。
 古典的文献にもアシシロの言葉は多数、見受けられます。
 「半作の家ならば足代と云ふ物に、上に大きなる木どもを横ざまに結びつけて置きたりけるが」(今昔物語19巻)。
 「材木のうちにしても、ふしおほく、ゆがみてよわきをばあししろともなし、後には薪ともなすべきや」(五輪書・地の巻)。
 また、法隆寺の工匠が著した最古の建築書『愚子見記』にも次の記述があります。「堂方材木積之品々‥‥一、足代之木・竹・鉄類・諸道具、右同断」。
 では、足場と足代はどう違うのでしょうか。
 寡聞にして臆測の域を超えませんが、足場は、狭義の足場としての「足代」のほか、「足で踏まえるところ」「足もとの具合」など広義に用いられていたものが(『角川古語大辞典』)、次第に足代に取って代わったのではないでしょうか。
 ところで、足場の古語には、麻柱(あなない)があります。
 「①< (足)ア(荷)ニナヒの転か。人の足をかつぐ意>助ける、②足がかり、足場」(『岩波古語辞典』)。
 「アナナフは‥もっぱら臣下が天皇の補佐を果す意を表している。高所へ上る踏み台の意のアナナヒは、この語の名詞形であろう。アを足の意とし足担ふの転じた語と見る説がある」(『角川古語大辞典』)。
 「日本建築辞彙」にも次の記述があります。
 「古語なり。『足の補ない』の転訛にして足代なりといえる説ある。或いは然らん。また『足幷び』(あしならび)の義にして足代なりとの説もあれど、余はむしろ前記に左袒す(味方するの意)。 天平宝字年代の古文(大日本古文書)に薬師寺の工事を記したる中、『作仏光麻柱、功八十四人』とあるは『仏の光背設置の為め足代を建つ。その取建人足八十四人』との意なるべし」。 つまり、人の足を補うものということから「あなない」という言葉が生まれ、それが転じて「あししろ」となったというのです。
 「あなない」や「あししろ」は今では死語になった言葉です。 ところで、『日本建築辞彙』で「あししろ」を構成するものとして記載された建地、布、腕木は、労働安全衛生規則その他の技術書で現在でも多用されています。 今なお、足場の機能的な部品を表現する重要な語彙です。(文・松田)


安全帯の使用方法

安全帯や親綱を支柱のコマ(凸型緊結部)に引っ掛けることはできますか

安全帯とコマ
 当節、安全帯や親綱のフックを支柱のコマ(凸型緊結部)に引っ掛けることに疑義を呈する人がいます。
 一部の建築業者が親綱のコマへの取付けを禁止しているからというのです。その根拠を尋ねると、コマの強度が不足しているという、まことしやかな回答が返ってきます。
 しかし、これは噴飯ものの議論です。
 そもそも手すりは、作業者が墜転落を防ぐために設置するものです。安全帯の取付け設備としても有効とされています(安衛則563条)。 くさび式足場では、その手すりを支柱のコマに緊結します。手すりは堅牢でコマは脆弱という理屈は成り立ちません。
 労働安全衛生総合研究所という国の機関(独立行政法人)が行った人体ダミーを使った実証的実験でも、コマに安全帯のフックを掛けた場合、双方に軽微な変形は生じたものの地面まで落下することなく、安全帯の取付け設備として有効であったと結論付けています(「くさび緊結式足場の組立・解体時における安全帯取付方法の実験的検討」(土木学会論文集F6(安全問題),Vol.68,No.2)掲載)。
 また、仮設工業会のくさび緊結式足場の認定基準では、支柱のコマは最大約900㎏の鉛直荷重をかけても脱落しない強度を有するものとされています。
 このように、くさび式足場のコマを安全帯や親綱の取付け設備として使用することに疑義を挟む余地はありません。
 ところで、安全帯のフックは、引張荷重の強度が規格により定められていますが、誤った使い方をした場合までその強度を保証するものではありません。 そのひとつは、フックに曲げ荷重が加わるような使い方をした場合です。
 一般的に、人体は垂直方向に落下するため、安全帯をコマに引っ掛けても横方向の荷重がかかることはほとんど想定できません。 しかし、屋根の上などに親綱を張る場合はどうでしょう。この場合、人が転落すると親綱に横方向の力が働くことがあります。 親綱にたるみがあり、かつフックが引張方向に回転しないと、フックに横方向の荷重がかかります。この場合は、フックが十分な強度を発揮できない恐れがあります。
 実際には、フックを支柱側面のコマに取付けた場合に、フックとコマのアソビがなくなり、横方向に荷重がかかってしまいます。また、ビケ足場以外のくさび緊結式足場でコマの形状が細いタイプのものも横荷重がかかりやすいようです。
 これを防ぐには、フックが横方向に回転するように支柱の正面(建物)側にとりつけるか、親綱を支柱に括りつけるなどにより、万一の場合もフックに横方向の荷重がかからないように取付ける必要があります。
 親綱の場合は、このような取付方法の注意点はあるものの、手すりと同様、安全帯取付け設備として有効です。
 なお、安全帯メーカーなどが公表している安全帯の正しい使用方法を下記に紹介します。(文と絵・松田)

安全帯使用時の注意点
1.ベルトの装着位置 ベルトの装着位置 胴部ベルトは腰骨の位置で締める。高いと墜落時に内臓を圧迫し、低いと抜け落ちる。
2.D環の位置 D環の位置 胴ベルト型の場合、D環(ストラップ巻取り部)が後方に来るように調節する。D環が身体の前方にあると墜落の際、右イラストのように腹部を頂に身体が折れ曲がり(鯖折り状態)、危険。
3.フックの高さ フックの高さ フックはD環より高い位置に掛ける。低いと、落下距離が大きくなり衝撃荷重が増幅する。
腰位置の手すりに掛けても良いが、写真のように足元から1.9m高さの手すりがより望ましい。
4.フックへの曲げ荷重をさける 曲げ荷重 墜落時にフック本体が曲げ荷重がかかり、折れ曲がらない様な掛け方をする。
写真は、フックを支柱に掛けているが、これでは墜落時にフックに曲げ荷重がかかってしまう。
5.フックとの距離 フックは、作業位置に近い箇所に掛ける。遠すぎるとイラストのように、落下したときに振り子状態になり構造物に激突する。
なお、この場合は、先に腰の位置に手すりが設置された状態で支柱の抜き差しを行うように作業手順を組立てることが大切である。
振り子状態
6.ロープの切断 ロープ(ランヤード)は鋭い角にふれないようにする。墜落時の荷重で切断のおそれがある。
7.開放部への取付け禁止 自明のことだが、一方が開放している構造物には掛けない。
8.親綱の同時使用禁止 複数人が同一の親綱上で同時に作業すると、一人が墜落したときに他の職方も引き寄せられて危険。
9.ショックアブソーバー機能 体重と工具を合わせた重量の合計が100kgを超える場合やランヤードが長いときは、ショックアブソーバ付の安全帯を使用する。衝撃荷重の限界である8.0kNを超える恐れがあるためである。

足場計画図とバルコニー周りの足場

バルコニー周りをどのように組みますか

 俗に段取り八分といいます。住宅工事で、使い勝手の良い安全な足場をつくるためには、適切な足場計画図を描き、それに基づいて材料を用意するなどの準備を怠らないことが大切です。
 足場計画図はどうやって作るのでしょうか。
 一般的には、次のような手順で行います。

  1. 敷地の状況や軒の出寸法、工事の内容などを勘案しながら建物からの仮のハナレ(※1)を決める。
  2. 東西方向、南北方向のそれぞれで、建物からの仮のハナレと建物の全長を合計し、足場の仮の全長を決める。
  3. ビケ足場の規格寸法では、足場の全長は300(※2)の倍数でなければならないので、仮の全長に近い300の倍数となる寸法を評価し、実際の全長を決定する。 このとき、300倍数とすることが不都合であれば、150のスパンを全長に加算し、150の倍数となる全長を選択することもできる。
  4. 東西、南北方向の全長が決まったら、建物の入隅出隅に合わせて、足場に凹凸をつける。
  5. 足場の平面的な形が決まったら、建物の出窓や開口などの形状に合わせて、各構面ごとに足場のスパンを割り付ける。 基本的には1800のスパンを使用するが、1500以下の約物のスパンを建物の形状に合わせて適切に割り付けていく。
 以上で足場の平面図は完成です。平面図が出来たら次は、支柱の種類や踏板の高さを立面図に仕上げていきます。
 ところで、こうした一連の手順によって完成する足場図面は、一定の技量があり、敷地の状況などの情報が十分で、かつ最適な足場を組み上げようという意識があれば、作成者によって大きな差異が生じるものではありません。
 ところが、実際の足場図面では、バルコニーの組み方に個人差を感じることが多々、あります。 吊りバルコニーのように外壁の垂直方向に凹凸がある場合、足場のハナレをどうするか、踏板をどのように設置するかについて施工標準が用意されていないことが原因だと思います。 そこで、ここでは、バルコニー周りの足場の組み方を検討してみます。

図2
切妻部の1050出バルコニーを一側で組む場合
図1
切妻部の900出バルコニーを一側で組む場合
図4
切妻部の1050出バルコニーを二側で組む場合
図3
切妻部の900出バルコニーを二側で組む場合

バルコニー周りの足場の組み方で注意すること
 バルコニー周りの足場は、次のことを意識して組むことが大切です。(※3)

  1. 原則として二側(ふたかわ)足場(または部分二側(ぶぶんふたかわ))で組む。
    バルコニーが障害となって内柱が途中までしか上がっていない足場を時々、見かけます(図1、図2)。ビケ足場は、標準的に二側足場または部分二側足場で組みます。 1層目の踏板の高さで内柱が止まっていると、構面が長くなればなるほど十分な強度を保つことができません。
  2. バルコニーの中に作業床が必要な場合やバルコニー上部に転落防止用の手すりが必要な場合、バルコニー周りの二側構造の内側からの持ち出しで対応する(図3、図4)。
    バルコニーの中には安易に足場を建てないことが望ましい。バルコニーの中に足場を建てると工事の妨げになることがあります。
    また、二側構造の内側からハネ出すのは、外側からハネ出す場合と比べてバルコニー周りの足場の通行性をジャマしないうえ、強度的にも優れています。
    図1~図4を参照してください。バルコニーの上部が妻壁になっているため、バルコニー周りの足場から足場を持ち出して踏板を設置しています。
    図1と図2では、バルコニー周りの足場が一側ブラケット足場になっています。これでは、バルコニーへのハネ出し部が通行の障害になります。 また、強度的にもバルコニーの中に足場を建てざるを得なくなります。
    一方、図2と図4では、二側足場の内側からハネ出しています。優劣の差は歴然です。

バルコニーのタイプ(出寸法)別にみたバルコニー周りの足場の組み方
図7
1050出のバルコニーの組み方
図6
900出のバルコニーの組み方
図5
450出のバルコニーの組み方

 参考までに、バルコニー周りの足場の標準的な組み方を紹介します。
 吊りバルコニーは、住宅の基本寸法(モジュール)によって出寸法が違ってきます。900モジュールの建物で考えてみます。 900モジュールの建物では、450、900、1050の3パターンの出寸法が考えられます。

  1. 450出のバルコニーの足場の組み方(図5)
    ハナレ600くらいで内柱を建てます。バルコニーの下部に240幅の踏板を設置し、1層目と2層目の踏板を通常の高さに設けます。この場合、内柱が主柱となります。
  2. 900出のバルコニーの足場の組み方(図6)
    ハナレ1050くらいで内柱を建てます。バルコニーの下部に400幅の踏板を設置し、1層目と2層目の踏板を通常の高さに設けます。この場合も内柱が主柱となります。
    なお、この場合、バルコニーの両サイドを600のブラケットで二側または一側に組むと、踏板から壁面までが遠くなります。 これに対処するには、建物側に内手すりを設置するか、400幅と240幅の踏板を並べて設置します。
  3. 1050出のバルコニーの足場の組み方(図5)
    ハナレ1400くらいで内柱を建てます。バルコニーの下部は2段に踏板を設置します。
    バルコニーの腰壁と踏板の空き寸法が300以上になるので、それに対処するときは内手すりを設置します。
 バルコニー周りの踏板は、敷地状況によっては400幅ではなく240幅の踏板を設置します。二側とすることが困難な場合は一側足場もやむを得ません。
 作業の内容によっては、バルコニーの腰壁周りの支柱が600のハナレや1050のハナレでは近すぎるという場合もあるでしょう。 このときは、ハナレを700や1150ぐらいに調整します。いずれにしろ、臨機応変(柔軟性)を駆使し、かつ基本に忠実であることが肝要です。(文と絵・松田)

 ※1 ハナレとは建物の壁面から足場の外柱の芯までの長さをいう
 ※2 寸法は全て、㎜単位
 ※3 図中の赤色は踏板の設置位置を示す

ビケ足場とCAD

CAD図面作成サービスとはどういうものですか

●足場CAD開発の現状と課題
 ビケ足場の施工計画図(足場図面)をCADで作成するという計画は、ビケ足場の開発当初から存在していたと推測しています。 実際、ビケ足場の製造メーカーには30年近く前からCAD開発の担当部門がありました。また、約15年前にはビケ足場専用のCADソフトが市販されるに至っています。
 しかし、これらの計画は残念ながら有用性を見出すにはいたっていません。
 このCAD開発には、コンピュータの自動計算機能という側面が付帯していたようです。 ボタン一つで、足場図面を作成し、願わくば使用部材の積算や足場の構造計算まで一気にやってしまおうという夢のような計画です。
 こんにち、建築分野で広く使用されている汎用のCADソフトには、AUTO CADやフリーソフトのJw_cadなどがありますが、これらは、基本的には製図支援ツールで、人間が行う設計や製図を支援する機能しかありません。 そもそも、部材の積算や強度計算はともかく、住宅建築のように多様な現場環境で、個性的で複雑な形状の建築物に対してコンピュータが足場図面を作成してくれるというのは少し、荷が勝ちすぎている気がします。
 足場図面の作成は、熟練した施工スタッフであれば、30分ほどで部材の積算まで完了してしまうことも多く、コンピュータによる省力化にどれほどの意義があるかにも疑問を感じざるを得ません。
 とはいえ、自己進化型の人工知能が囲碁の世界で名人を打ち負かす時代です。自動計算CADの開発が不可能であると断じることはできません。
 足場CADの開発がうまくいかなかったのは、むしろ、開発コンセプトの希薄さに由来しているのではないかと思います。
 一般に、システム化やコンピュータによる人間労働の代替は、業務改善の手段として進められるものです。 たとえば、流通業界のPOSシステム(販売時点情報管理)は、販売実績情報をタイムリーに把握し、在庫管理や商品開発などの経営判断に資するデータを提供するために導入されました。
 システム化は、経営の改善という目的を達成するひとつの手段であって、別の方法で達成可能であれば、その方法に固執する必要はありません。たんに、人間の作為をコンピュータに置き換えるだけでは多くを望めません
 足場CADの開発には、こうした開発コンセプトが欠如していたがために中途半端に終わったように思います。
 ところで、設計は品質をつくり込む行為です。最適な足場計画図が作成できないと、満足する足場品質を期待できません。現状では、足場計画図の作成が足場の施工スタッフの力量に依存しているということが少なくありません。 そうであれば、施工品質を標準化するために、設計段階での最適化の方策を探ることは重要です。 足場CADの開発はこのシナリオの中で再検討する必要があると思います。

 【図1】
現場調査によって作成した図面
●Jw_cadを業務の改善に活用する
 足場の実務では、ネット上から無償でダウンロードできるJw_cadが利用されていることが少なくありません。 当社でも、このJw_cadを業務ツールとして活用しています。
 足場の施工現場では、事前に現地調査を行います。とくに、リフォーム現場は、建物の図面が用意されていないことが多々あります。また、狭あいな敷地に障害物が所狭しと並んだような複雑な現場状況に直面することがあります。
 当社では、リフォーム現場の現地調査報告書(建物と敷地状況を表した図面に注意事項や指示事項を記載したもの)の作成にJw_cadを活用し、業務の標準化を推進しています。
 CAD利用の利点は、次のとおりです。
  1. 正確な図面をわかりやすく作成できる。
  2. 紙ベースのデータ保存を要しないので、省スペースになる。
  3. 作成途中での手計算の手間が省ける。
  4. 熟達することによって作業時間の短縮が可能になる。
  5. 建物の基本寸法(モジュール)に合わせて目盛間隔を設定できる。
  6. そのまま足場計画図のCAD図面に流用できる。
 【図2】
足場計画図
 建物の基本寸法(モジュール)に合わせて目盛間隔を設定できるとはどういうことでしょうか。
 建物には基本寸法があります。代表的なのは、古来の尺貫法から派生した尺モジュールで910㎜が基本単位です。このほか、900や960のモジュール単位や1メートルを基本単位としたメーターモジュールがあります。
 これらの基本単位に合わせてCADの目盛間隔を設定することで、建物の作図が容易になるほか、図面を合理的に把握することができます。
 図1を参照してください。わかりやすいようにモジュールの芯を黒丸点であらわしています。出窓や中間庇、勝手口などの位置は、このモジュールの芯を基準に配置されています。
 調査報告書として完成した図面は、足場計画図の作成にそのまま、流用できます。
 足場計画図の作成では、足場のジャッキベース(支柱)が位置する4隅の1か所を指定します。ビケ足場の水平方向は300の倍数になるので、今度は、それを基点に300の目盛間隔を画面に設定します。 水平方向に6目盛で1800スパンです。
 図2は、足場計画図に、ビケ足場の部品データを張り付けたものです。部品データは、製造メーカーが提供しているビケ部材のCADデータを私が使いやすいように手直ししたものです。
 足場品質は、設計品質に依る所が大きいと書きました。設計品質は、事前調査でもたらされた情報の正確性に依拠します。CADを利用して、現地調査から打合せ、足場計画図の作成、部材の積算と施工までの一連の流れをサポートすることができます。

●CAD図面作成サービスとは
 当社には、CAD図面を作成する担当部署があります。
 そこでは、汎用ソフトであるAUTO CADをベースに足場の設計図面を作成しています。図面の作成だけでなく、労働安全衛生法88条の大規模工事に伴う申請や道路占用許可申請などのお手伝いも行っています。
 お気軽にご相談ください。(文と図・松田)


足場の控え(やらず)

控え材を正しく設置する方法を教えてください

 【図1】
控え(やらず)
 【図2】
アウトリガー
 鋼管足場の規格を定めた労働安全衛生規則570条は、「一側足場、本足場又は張出し足場(‥‥)は、(‥‥)壁つなぎ又は控えを設けること」と定めています。 ここでいう「控え」とは、足場が倒壊しないように支柱(建地)の外側に補強材として設けるつっかい棒で、俗に「やらず」と言います。
 「遣(や)らずぶったくり」(=何も与えずに取り上げるだけ)、「遣(や)らずの雨」(=帰ろうとする人を引き留めるように降り出した雨)という慣用句がありますが、控えとしての「やらず」には、その場の勢いやなりゆきにまかせて他方に行かせないということから、支柱を倒さないという意味があるようです。
 控えは、火打ちと同様、壁つなぎの取付が困難または敬遠される場合に設置することになっています。火打ちと同じように、圧縮材と併用することで、引張と圧縮の相乗効果が生まれ、足場の揺れを防ぐ効果があります。
 控えは、足場の垂直面の低い位置に設けると、その効果が上部に及びません。逆に、高い位置に設けた場合は力のベクトルにより、その効果が減殺されます。 控えは、壁つなぎと同じように、支柱(建地)と踏板(腕木と布板)の交点付近に設置することで最も効果を発揮します。このため、2階建て住宅の場合、図1のように2層目の踏板と支柱の交点付近に控えの上端をクランプで緊結します。 控えは、一般に長さ4.5mの鋼管用足場を用いるため、高さ約4メートルの2層目の踏板の位置に設けた場合、控えと地面(GL)の角度は 4÷4.5=sin(62度) により、概ね60度の傾きになります。
 控え、地面(GL)、建地で直角三角形をつくりますが、この三角形が崩れないように、できるだけ地面に近い位置に水平材を設けます。 ただし、人の通行を確保する必要がある場合などは、水平材を高い位置に設けることもやむを得ません。
 控えの地面側の下端部には、ジャッキベースを差し込み、控えが地面に沈下しないようにするとともに、ジャッキベースのハンドルを締めて地面と緊張状態をつくります。 控えは、足場の外側への傾きを防止する効果がありますが、水平材に杭を打ち込むと、足場の建物側への倒壊防止にも効果があります。
 ところで、控えは火打ちと同様の効果があると書きましたが、火打は建物の構面が長い場合に、その効果がが中央部に及びません。一方、控えには、そうした制限がないため、集合住宅など1構面が長い場合に威力を発揮します。 この場合、控えを設ける間隔は、労働安全衛生規則の規定により、5.5mごとに設置します。
 反対に、足場を高く組み上げた場合は、控えの効果が上部に及ばないという欠点があります。この場合は、火打ちと併用する、壁つなぎ等で代用するなどの措置が必要です。
 ところで、控えと同様の効果が期待されるものにアウトリガーがあります。アウトリガーは一般に、構造体の安定性を増すために側部に突き出した装備のことをいいますが、図2のように、くさび式足場をアウトリガーとして組み上げることができます。
 控えやアウトリガーは一定の敷地余裕がないと設置することができません。このため、低層の住宅建築用足場では火打ちに比べ、設置される頻度は高くありません。 しかし、壁つなぎの設置が困難で、4周が緊結されていない足場や部分的な面組の足場は、その側端に控えを設けないと足場が倒壊する原因になります。
 (文と図・松田)

【参考】
労働安全衛生規則 第570条
 事業者は、鋼管足場については、次に定めるところに適合したものでなければ使用してはならない。
(一~四 略)
五 一側足場、本足場又は張出し足場であるものにあつては、次に定めるところにより、壁つなぎ又は控えを設けること。
 イ 間隔は、次の表の上欄に掲げる鋼管足場の種類に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる値以下とすること。

鋼管足場の種類 間隔(単位メートル)
垂直方向 水平方向
単管足場 5 5.5
わく組足場(高さが五メートル未満のものを除く。) 9 8
 ロ 鋼管、丸太等の材料を用いて、堅固なものとすること。
 ハ 引張材と圧縮材とで構成されているものであるときは、引張材と圧縮材との間隔は、一メートル以内とすること。

【参考】
足場先行工法のガイドライン
(7) 壁つなぎ又は控え
イ 建方作業前の足場には各面に控えを設けること。
 敷地が狭あいで控えを設けることが困難な場合には全周を緊結した構造とすること。
ロ 建方作業後は、各面に控えを設けた足場以外の足場にあっては、足場の全周を完全に組み上げ、各面を相互に緊結するとともに、速やかに各面に壁つなぎを設けること。
 建築物の構造等により壁つなぎを設けることが困難な場合には、火打ち及び圧縮材を設け、かつ、足場の一面が長さが長い場合には頭つなぎを設けて足場を補強すること。

住宅工事用くさび緊結式足場の組立て及び使用に関する技術基準(仮設工業会)
(15) 壁つなぎ等
 壁つなぎ又は控え等の設置は次によること。
① 建方前の足場
a. 原則として足場全周を緊結した構造とする。
b. 全周を緊結できない場合は、控え・斜材等で補強することにより足場の倒れ防止を施す。
② 建方後の足場
a. 速やかに各構面に壁つなぎを設置する。
b. 建築物の構造等により壁つなぎを設置することが困難な場合は、火打ち及び壁当て(圧縮材)を設け、かつ、足場の一構面の長さが14m以上の場合には頭つなぎ等を設けて足場を補強する。
c. 壁つなぎ又は壁当て(圧縮材)は、垂直方向5.0m(ブラケット一側足場にあっては3.6m)以下、水平方向5.5m以下の間隔で設置し、かつ、足場の最上層及び側端が解放されている足場の場合は、当該側端にも設ける。


作業床と建物の間隔

作業床と外壁の間隔は30㎝以内といわれますが、30㎝以上は遠すぎるのでしょうか

● 壁との間隔を30㎝以内に設定した足場
壁の間隔を300以内に設定した足場

● 建物側に内手すりを設置した作業床
内手すりを設置した足場

(図) 作業床と建地の位置関係
   (外壁と作業床の間隔を30㎝に設定した場合)
作業床と外壁の位置関係
 足場を組立てる目的は、簡単に言うと、高所で作業するための作業床を設けることです。
 労働安全衛生規則(以下、安衛則という)は、「事業者は、高さが2メートル以上の箇所(…)で作業を行う場合において墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、足場を組み立てる等の方法により作業床を設けなければならない」(518条)としています。
 作業床は、作業に容易で、安全なものでなければなりません。安衛則には、作業床の幅、床材間の隙間などの規定があります。 また、「墜落により労働者に危険を及ぼすおそれがある箇所」には手すり、中さんなどの「足場用墜落防止設備」を設けることになっています。
 ここで「墜落により労働者に危険を及ぼすおそれがある箇所」とは、どのような状態をいうのでしょうか。
 一般に、作業床の外側(建物の反対側)や、作業床が途切れた開口部には手すり等を設けます。 問題になるのは、作業床と建物が遠い場合に「墜落により労働者に危険を及ぼす箇所」に該当するかどうかです。
 従来、作業床と外壁との間隔が30㎝以内の場合は建物側に手すりなどの墜落防止設備を要しないとされてきました。また、平成8年に「足場先行工法のガイドライン」が厚生労働省労働基準局長の通達として公表され、「建築物と足場の作業床との間隔は30㎝以下とする」という指標が公表されました。
 30㎝という数値には異論がないわけではありません。たとえば、仮設工業会の『くさび緊結式足場の組立て及び使用に関する技術基準』には「墜落防止の観点からいえば、その隙間はできるだけ狭くなるようにすべきであり、30㎝以下であっても隙間から墜落した場合は墜落防止措置を怠ったと判断される可能性もある。海外では20㎝以下を指標とするデータもある」と記載しています。
 一方、標準的な体型の人が壁を触るのに50㎝以内であれば身体の重心が足の裏を離れない、つまり前屈姿勢にならないことから、50㎝を建物との距離の上限とすべきだという見解もあります。
 ところで、足場と建物は近ければ近いほど良いのでしょうか。
 一般に、くさび緊結式足場を一側(ひとかわ)ブラケット足場ということがあります。 しかし、一側ブラケット足場とは、一側(片側)にしかない建地(支柱)からブラケットで張出し、そのブラケットで作業床を支持する足場のことで、足場の組み方のひとつにほかなりません。 くさび緊結式足場を一側ブラケット足場で組み上げた場合は、足場が自立せず不安定になるため、ビケ足場は建地が両側にある二側(ふたかわ)足場または部分二側足場を原則としています。
 この場合、建物側に建地(内柱)を設けます。ビケ足場は60㎝長のブラケットに40㎝の作業床を設置したとき、作業床が建物側に近くなるように設計されています。このとき、建地の先端は、図のように、作業床から約10㎝のところに位置します。
 建築の現場では、足場が建物に近すぎると作業に支障が生じることがあります。たとえば、くぎ打ち機やインパクトドライバーのような電動工具は、足場と外壁の間に一定の間隔がないと使いにくい状態になります。 一方、刷毛塗りの塗装作業や、工場で完成したパネルを現場で組み立てる軽量鉄骨造のような工法の場合は、足場が近すぎてもほとんど影響がないかもしれません。
 建物の外壁にはひさしや窓などの様々なアクセントが設けられます。足場計画図は、こうした出物をかわしながら設計しますが、あまりに足場が近すぎると、足場と接触したり、取付け困難になることもあります。
 足場の組立てでは、足場を使ってする作業の内容を考慮して、理想的とする間隔に近くなるように設計します。この場合、ビケ足場の規格寸法上の制約(注)もあります。
 一般に、作業床と外壁が約20㎝(内柱と外壁が10㎝)の場合が最も狭い値の限界です。作業の内容によっては、作業床と外壁の間隔を25㎝または30㎝以上、確保する必要がある場合もあります。いずれにしろ、間隔が近ければ近いほど良いという結論は短絡的です。
 足場の設計では、外壁が遠い場合に内側に手すりを設けることができます。また、安衛則563条3の規定により、内側に手すりを設けることが「作業の性質上」「著しく困難」なときは、外側の手すりを「安全帯取付け設備」とみなすことができます。
 このほかにも、足場の組み方として、内柱の建物側に作業床を設ける対応も考えられます。足場を使ってする作業の内容、足場の組み方などの総合的な観点から、建物との間隔を設定することが大切です。 (文と図・松田)

【参考】
労働安全衛生規則 第563条(作業床)
 事業者は、足場(一側足場を除く。第三号において同じ。)における高さ2メートル以上の作業場所には、次に定めるところにより、作業床を設けなければならない。
(一、二、四~六 略)
三  墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのある箇所には、次に掲げる足場の種類に応じて、それぞれ次に掲げる設備(‥‥一部略。以下「足場用墜落防止設備」という。)を設けること。
イ わく組足場(妻面に係る部分を除く。ロにおいて同じ。) 次のいずれかの設備
 (1) 交さ筋かい及び高さ15センチメートル以上40センチメートル以下の桟若しくは高さ15センチメートル以上の幅木又はこれらと同等以上の機能を有する設備
 (2) 手すりわく
ロ わく組足場以外の足場 手すり等及び中桟等
3 第一項第三号の規定は、作業の性質上足場用墜落防止設備を設けることが著しく困難な場合又は作業の必要上臨時に足場用墜落防止設備を取り外す場合において、次の措置を講じたときは、適用しない。
一  安全帯を安全に取り付けるための設備等を設け、かつ、労働者に安全帯を使用させる措置又はこれと同等以上の効果を有する措置を講ずること。
二  前号の措置を講ずる箇所には、関係労働者以外の労働者を立ち入らせないこと。
5 事業者は、第三項の規定により作業の必要上臨時に足場用墜落防止設備を取り外したときは、その必要がなくなつた後、直ちに当該設備を原状に復さなければならない。
6 労働者は、第三項の場合において、安全帯の使用を命じられたときは、これを使用しなければならない。

足場先行工法のガイドライン
(2) 外壁と作業床の間隔及び墜落防止措置
イ 建方作業及び外壁施工前
 足場からの墜落を防止するため、足場は建築物の外壁位置と足場の作業床の端とができるだけ接近した位置となるように設け、足場には手すりを設けること。前手すりを設けることが困難な場合には労働者に安全帯を使用させること。
ロ 外壁施工後
 建築物と足場の作業床との間隔は、30センチメートル以下とすること。30センチメートル以下とすることが困難な場合には、足場に手すりを設けること。手すりを設けることが困難な場合には、ネットを設け又は労働者に安全帯を使用させる等墜落防止のための措置を講ずること

住宅工事用くさび緊結式足場の組立て及び使用に関する技術基準(仮設工業会)
(4) 建築物との間隔
 住宅工事用くさび緊結式足場の作業床と外壁との間隔は、墜落のおそれがないように、できるだけ小さくすること。

  (注) ビケ足場の布材(手すりと作業床)は長さ600~1800㎜の部材で構成されるため、水平方向の全長は原則として300の倍数。
     オプションとして150の布材もある。

足場のメッシュシート

足場には必ず、メッシュシートを設置しなければならないのですか

 ● メッシュシートの施工例
:シート施工例
:シート施工例
 労働安全衛生規則は、平成21年の足場関係の改正で、作業床からの物体の落下防止措置として、高さ10㎝以上の幅木、メッシュシート、防網などの設置を義務化しました(563条)。 ここでは、メッシュシートの設置は、唯一無二のものではなく、幅木など同等の措置(選択肢)のひとつと考えることができます。 また、これらの措置が「著しく困難な場合」や「作業の性質上、臨時に取り外す場合」で「立入区域を設定したときは」措置そのものも免除されます。
 このように、足場工事でのメッシュシートの設置は、法令上、必須のものとして規定されているわけではありません。
 なお、平成21年改正までは、防網の設置や立入区域を設定するなどの一般的な措置を義務付けていただけで(労働安全衛生規則537条)、具体的な法令上の規定がありません。
 ところで、これらの措置は、当該現場で働く労働者の危険を防止する観点から定められたものです。
 一般に、メッシュシートは工事現場周辺に危害を及ぼすことを予防するために設置します。 また、落下物は、作業床だけでなく、屋根などの建物からも飛来することがあります。
 国土交通省は、旧建設省時代の平成5年、主として第三者に対する危害防止の観点から「建設工事公衆災害防止対策要綱」という通達を出しています。
 そこでは、「外部足場から、ふ角75 度を超える範囲または水平距離5メートル以内の範囲に隣家、一般の交通その他の用に供せられている場所がある場合には、落下物による危害を防止するため、足場の必要な部分を鉄網若しくは帆布で覆いまたはこれと同等以上の効力を有する防護措置を講じなければならない」としています。
 外部足場からふ角75度を超える範囲とはどういうことでしょう。
 道路や隣家からの水平距離をAとした場合、外部足場の高さがtan(75度)×A≒3.73Aを超える場合は、5m以上離れていても外部足場を鉄網やシートで囲む必要があることになります。
 建築基準法施行令にも同様の規定があります。
 「建築のための工事をする部分が工事現場の境界線から水平距離が5m以内で、かつ、地盤面から高さが7m以上にあるとき、その他」「落下物によって工事現場の周辺に危害を生ずるおそれがあるときは」「工事現場の周囲その他危害防止上必要な部分を鉄網又は帆布でおおう等落下物による危害を防止するための措置を講じなければならない」(第136条5)。
 この場合は、境界から5mの範囲に、7m以上の高さの建築物があると(足場ではない)、外部足場を鉄網やシートでおおうか、工事現場周囲を仮囲いで囲むことになります。
 また、厚生労働省の通達である「足場先行工法のガイドライン」(平成8年に発布、平成18年改正)には、次のような記述があります。
 「足場先行工法においては、建方作業後壁つなぎ等による足場の補強が完了するまで、原則として、シート等を設置してはならない。」 「建方作業後は、屋根及び足場の作業床等からの材料、工具等の飛来落下による災害を防止するため、シート等を設置することが望ましい。」
 このように、メッシュシートの設置は、法令上、必須絶対のものではありませんが、建築物や足場からの飛来落下を防止するために望ましいとされ、隣家や道路に近接した場合には、第三者への人的物的危害を防止する観点から当然に、その設置が必要とされます。
 なお、メッシュシートは、その材質や取付方法などに仮設工業会の認定基準があるほか、具有すべき防炎性能が消防法で定められています。
 メッシュシートの設置で留意すべきは、風荷重により足場が倒壊する主な原因となることです。このため、メッシュシートの設置は、足場の補強と同時並行で行わなければならず、補強が不十分な状況である建方作業前の先行足場では、原則としてシートを設置してはならないことになっています(足場先行工法のガイドラインほか)。 (文・松田)

【参考】
労働安全衛生規則 第537条(物体の落下による危険の防止)
 事業者は、作業のため物体が落下することにより、労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、防網の設備を設け、立入区域を設定する等当該危険を防止するための措置を講じなければならない。

労働安全衛生規則 第563条(作業床)
 事業者は、足場(一側足場を除く。第三号において同じ。)における高さ二メートル以上の作業場所には、次に定めるところにより、作業床を設けなければならない。
(一~五 略)
六 作業のため物体が落下することにより、労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、高さ十センチメートル以上の幅木、メッシュシート若しくは防網又はこれらと同等以上の機能を有する設備(以下「幅木等」という。)を設けること。 ただし、第三号の規定に基づき設けた設備が幅木等と同等以上の機能を有する場合又は作業の性質上幅木等を設けることが著しく困難な場合若しくは作業の必要上臨時に幅木等を取り外す場合において、立入区域を設定したときは、この限りでない。

建築基準法施行令 第136条の5(落下物に対する防護)
2 建築工事等を行なう場合において、建築のための工事をする部分が工事現場の境界線から水平距離が五メートル以内で、かつ、地盤面から高さが七メートル以上にあるとき、その他はつり、除却、外壁の修繕等に伴う落下物によつて工事現場の周辺に危害を生ずるおそれがあるときは、国土交通大臣の定める基準に従つて、工事現場の周囲その他危害防止上必要な部分を鉄網又は帆布でおおう等落下物による危害を防止するための措置を講じなければならない。

建設工事公衆災害防止対策要綱 建築工事編(平成5年1月 12 日 建設省経建発第1号)
第 27(外部足場)
 施工者は、外部足場の倒壊及び崩壊を防止するため、外部足場の計画に当たっては、想定される荷重及び外力の状況、使用期間等を考慮して、種類及び構造を決定するとともに、良好な状態に維持管理しなければならない。特に、外部足場と建築物の構造体との壁つなぎは、工事現場の状況に応じて水平方向及び垂直方向に必要な数を堅固に行うとともに、足場の脚部は、滑動防止の措置を講じなければならない。
2 施工者は、外部足場の組立て及び解体に当たっては、事前に作業計画を立て、関係者に時期、範囲、順序等を周知させ、安全に作業を実施しなければならない。
3 施工者は、外部足場から、ふ角75 度を超える範囲又は水平距離5メートル以内の範囲に隣家、一般の交通その他の用に供せられている場所がある場合には、落下物による危害を防止するため、足場の必要な部分を鉄網若しくは帆布で覆い又はこれと同等以上の効力を有する防護措置を講じなければならない。この場合において、鉄網、帆布等は、足場骨組に緊結し、落下物による衝撃に十分耐えられる強度を有するものとし、鉄網、帆布等を支持する足場の骨組も、当該衝撃に対し、安全なものとしておかなければならない。

足場先行工法のガイドライン
(13) シート等
イ 足場先行工法においては、建方作業後壁つなぎ等による足場の補強が完了するまで、原則として、シート等を設置してはならないこと。
ロ 建方作業後は、屋根及び足場の作業床等からの材料、工具等の飛来落下による災害を防止するため、シート等を設置することが望ましいこと。
ハ シートを設置する場合には、シートの自重及び風荷重を考慮して足場を十分に補強すること。
二 シート等は、足場の建地、布等の間隔に応じた寸法のものを使用すること。
ホ シートは、すべてのハトメで容易に外れないように足場に緊結すること。
へ シートは劣化したもの、破損しているもの等は使用してはならないこと。


足場の高さの定義

法令上、足場の高さはどこからどこまでをいうのですか

「足場の高さ」が問題になる場合
 足場の組立てや使用に関する法令や基準には随所に「足場の高さ」についての記述があります。
 たとえば、足場の組立て等の作業に伴う危険防止のための事業主の措置義務を定めた労働安全衛生規則564条は、「2m以上の構造の足場」を対象としています。 足場の組立て等作業主任者の選任は「高さ5m以上の構造の足場」の作業に必要です(安全衛生法施行令6条)。 また、一般社団法人仮設工業会の「くさび緊結式足場の組立て及び使用に関する技術基準」は「高さ45m以下」のくさび緊結式足場に適用されます。 とはいえ、足場の高さが厳密な意味で問題になることはそれほど多くはないでしょう。
 一方、労働安全衛生法88条では、「高さが10m以上の構造」の足場で組立から解体までの期間が60日以上の場合は労働基準監督署への事前申請が必要です。 この場合は、高さの判断基準が煩雑な申請手続きの必要性と直接、関係することになります。
法令が定める「足場の高さ」とは
 足場の高さは、人間の身長のように外見上の高さではありません。
 法令が定める「足場の高さ」とは構造上の高さで、基底部(地盤面)から構造上重要な部分までの高さです。
 厚生労働省は、足場の高さを次のように説明しています(労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行について/平27基発0331第9号)。
 ① 作業床が足場の最上層に設置されている場合には、基底部から最上層の作業床までの高さ
 ② 作業床が足場の最上層に設置されていない場合には、基底部から
  ア わく組足場では、最上層の建わくの上端までの高さ
  イ 単管足場等支柱式の足場では、最上層の水平材(布材等の主要部材)までの高さ

ビケ足場の高さ
(青色の部分が作業床)
 一般に、わく組足場は作業床が「布」に該当します。 布と建わく(交差筋かい)で構造材を形成するため、最上層の作業床、または作業床の上に建わくを設けたときはその上端までが足場の高さになります。
 同様に、支柱式足場も作業床が「布」に該当しますが、作業床からの墜落防止のために設ける手すりも一定の強度を有する場合は「布」とみなされます。
 仮設工業会の「くさび緊結式足場の組立て及び使用基準」では「緊結部付布材を手すり兼用として設置する場合は、 この手すりは足場の構造部材であるため、墜落の危険がない場合であってもこれを取り外してはならない」と述べています。この「布」は水平材と同義ではなく、足場の構造材としての役割をになう狭義の「布」を意味しています。 つまり、最上層にある構造材までを足場の高さとすると、支柱式足場の最上層にある「布材等の主要部材」である手すりが足場の最上端ということになります(左図の上)
 ここで問題なのは、「布材等の主要部材」の範囲です。
 たとえば、根がらみとして設置された手すりは、構造材ではないため「布」ではありません。労働安全衛生規則の規定する「地上第一の布」にも該当しません(本欄の「地上第一の布」で詳説)。 同様に、屋根からの墜落防止目的で設置する手すりも、構造材としての「布」とは解釈できません。
 「足場先行工法に関するガイドライン」(厚生労働省)では「布の間隔は、2m以下とすること」という規定があります。 この「布」は足場の各層を形成する構造材で、作業床と手すりが補完しあったものです。
 ところで、ビケ足場の設置基準では、住宅工事用足場の軒先のレベル(踏板から1900㎜の高さ)にも屋根からの墜落防止用手すりを設けます。 また。屋根からの墜落防止用手すりが必要でない場合などでもメッシュシートを貼付するために最上層の作業床から1層分(1900㎜)の高さに手すりを設けることがあります。 この場合は、②のアが建わくの上端としていることとの整合性から、この手すりを最上層の「布」(構造材)と解釈することもできます(左図の下)
 くさび緊結式足場の手すりが「布」とみなされるには、構造材として用いられるだけでなく、先述したように一定の強度が必要です。 一定の強度とは、仮設工業会が緊結部付布材として認定した外径42.7㎜以上の強度を有する手すりのような場合です。
 なお、法令の解釈は必ずしも一義ではありません。労働安全衛生法88条申請などで迷った場合は所轄の労働基準監督署に相談されることをお薦めします。
構造上の高さから類推される全層全スパンとは
 足場の構造上の高さは、最上層の構造材までの高さであると解説しました。要するに、地上の層から1層、2層と積み重ねた最上の層の上端が足場の高さということです。この場合、住宅工事用足場で屋根上に突き出た部分は、最上層に含まれません。
 ところで、筋かいは、足場の外側鉛直の構面に「全層全スパンにわたって設けること」(足場先行工法に関するガイドラインほか)となっています。 ここでいう全層は、最上層の上端の構造材までか、あるいはその上の屋根からの墜落防止用手すりの最上段の手すりまでの、どちらを言うのでしょうか。 いかにも枝葉末節の問題ですが、実際にはこうした議論が存在します。 くさび式足場用の専用筋かいを用いた場合、1800のスパンが連続したときは垂直方向の高さが最上層の上端で途切れてしまうからです(上図の下)
 常識的に考えると、屋根からの墜落防止用に飛び出た部分に筋かいがなくても足場の強度にはほとんど影響しません。 こうした議論には、全層とは、足場の構造上の高さまでと反駁することができます。(文・松田)