安全帯の使用方法

安全帯や親綱を支柱のコマ(凸型緊結部)に引っ掛けることはできますか

安全帯とコマ
 当節、安全帯や親綱のフックを支柱のコマ(凸型緊結部)に引っ掛けることに疑義を呈する人がいます。
 一部の建築業者が親綱のコマへの取付けを禁止しているからというのです。その根拠を尋ねると、コマの強度が不足しているという、まことしやかな回答が返ってきます。
 しかし、これは噴飯ものの議論です。
 そもそも手すりは、作業者が墜転落を防ぐために設置するものです。安全帯の取付け設備としても有効とされています(安衛則563条)。 くさび式足場では、その手すりを支柱のコマに緊結します。手すりは堅牢でコマは脆弱という理屈は成り立ちません。
 労働安全衛生総合研究所という国の機関(独立行政法人)が行った人体ダミーを使った実証的実験でも、コマに安全帯のフックを掛けた場合、双方に軽微な変形は生じたものの地面まで落下することなく、安全帯の取付け設備として有効であったと結論付けています(「くさび緊結式足場の組立・解体時における安全帯取付方法の実験的検討」(土木学会論文集F6(安全問題),Vol.68,No.2)掲載)。
 また、仮設工業会のくさび緊結式足場の認定基準では、支柱のコマは最大約900㎏の鉛直荷重をかけても脱落しない強度を有するものとされています。
 このように、くさび式足場のコマを安全帯や親綱の取付け設備として使用することに疑義を挟む余地はありません。
 ところで、安全帯のフックは、引張荷重の強度が規格により定められていますが、誤った使い方をした場合までその強度を保証するものではありません。 そのひとつは、フックに曲げ荷重が加わるような使い方をした場合です。
 一般的に、人体は垂直方向に落下するため、安全帯をコマに引っ掛けても横方向の荷重がかかることはほとんど想定できません。 しかし、屋根の上などに親綱を張る場合はどうでしょう。この場合、人が転落すると親綱に横方向の力が働くことがあります。 親綱にたるみがあり、かつフックが引張方向に回転しないと、フックに横方向の荷重がかかります。この場合は、フックが十分な強度を発揮できない恐れがあります。
 実際には、フックを支柱側面のコマに取付けた場合に、フックとコマのアソビがなくなり、横方向に荷重がかかってしまいます。また、ビケ足場以外のくさび緊結式足場でコマの形状が細いタイプのものも横荷重がかかりやすいようです。
 これを防ぐには、フックが横方向に回転するように支柱の正面(建物)側にとりつけるか、親綱を支柱に括りつけるなどにより、万一の場合もフックに横方向の荷重がかからないように取付ける必要があります。
 親綱の場合は、このような取付方法の注意点はあるものの、手すりと同様、安全帯取付け設備として有効です。
 なお、安全帯メーカーなどが公表している安全帯の正しい使用方法を下記に紹介します。(文と絵・松田)

安全帯使用時の注意点
1.ベルトの装着位置 ベルトの装着位置 胴部ベルトは腰骨の位置で締める。高いと墜落時に内臓を圧迫し、低いと抜け落ちる。
2.D環の位置 D環の位置 胴ベルト型の場合、D環(ストラップ巻取り部)が後方に来るように調節する。D環が身体の前方にあると墜落の際、右イラストのように腹部を頂に身体が折れ曲がり(鯖折り状態)、危険。
3.フックの高さ フックの高さ フックはD環より高い位置に掛ける。低いと、落下距離が大きくなり衝撃荷重が増幅する。
腰位置の手すりに掛けても良いが、写真のように足元から1.9m高さの手すりがより望ましい。
4.フックへの曲げ荷重をさける 曲げ荷重 墜落時にフック本体が曲げ荷重がかかり、折れ曲がらない様な掛け方をする。
写真は、フックを支柱に掛けているが、これでは墜落時にフックに曲げ荷重がかかってしまう。
5.フックとの距離 フックは、作業位置に近い箇所に掛ける。遠すぎるとイラストのように、落下したときに振り子状態になり構造物に激突する。
なお、この場合は、先に腰の位置に手すりが設置された状態で支柱の抜き差しを行うように作業手順を組立てることが大切である。
振り子状態
6.ロープの切断 ロープ(ランヤード)は鋭い角にふれないようにする。墜落時の荷重で切断のおそれがある。
7.開放部への取付け禁止 自明のことだが、一方が開放している構造物には掛けない。
8.親綱の同時使用禁止 複数人が同一の親綱上で同時に作業すると、一人が墜落したときに他の職方も引き寄せられて危険。
9.ショックアブソーバー機能 体重と工具を合わせた重量の合計が100kgを超える場合やランヤードが長いときは、ショックアブソーバ付の安全帯を使用する。衝撃荷重の限界である8.0kNを超える恐れがあるためである。

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